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地方行財政-分権改革

道州制

2月28日に総理の諮問機関である地方制度調査会が、道州制の答申を総理に提出しました。詳細は、原文や新聞報道を読んでください。今回の道州制は、地方制度のあり方を超え、日本の政治行政のあり方の改革です。
1日の朝日新聞社説は、「国の事務を『できる限り道州に移譲する』という姿勢は評価したい。道州制は自治体の再編だけでなく、政府全体の再構築でもある」「地方制度調査会にすれば、90年代からの分権改革の集大成として道州制の基本設計を示したということだろう。道州制になれば、各省庁は解体にも等しいような圧縮を迫られる」「一方の各省庁は、権限と人員が削られるのを警戒して論議に背を向けたままだ」。
日経新聞社説は「道州制の狙いは統治構造の変革にある。国は外交・防衛など国でしかできないことに専念し、内政の大半は地方に委ねようというものだ。目指すのは分権と効率化である」「もし国の出先機関が原則廃止され、都道府県とともに道州に吸収されれば、両者の業務の重複は解消し、大規模なリストラも可能になろう。国・地方を通じた小さな政府の実現には有力な改革になる」。
読売新聞解説欄では、青山彰久記者が次のように書いておられました。「もし、国がこれまで通りに政策立案の権限を握ったまま、出先機関の仕事の執行権限を移すだけの道州制ならば、道州は、国が決めた仕事を行うだけの『巨大な国の総合出先機関』にしかならない」「都道府県を競わせて『国土の均衡ある発展』を図るのではなく、『国際競争力のある地域の個性ある発展』を目指す時代だろう。だが、大規模な権限移譲を実現できるような強力な政権の力と、都道府県行政の広域化の実績が合流しなければ、絵に描いた餅にしかならない」

2006.02.10

10日の朝日新聞「私の視点」は、井戸敏三兵庫県知事の「地方分権、道州制より府県に任せよ」でした。「その際、大切なことは一つの事業を国と地方が重層的に分担する成長時代のシステムを改め、一つの事業は一つの主体が権限と財源と責任を持って担う「分配自立型」に転換していくことだ」「ところが、現在の道州制論議は中央省庁を巻き込んだものになっていない。昨年の三位一体改革の決着から明らかなように、既得の権限に対する中央の執着は強い。現状のままで道州制を導入しても、国から地方への事業や財源の移譲が進む保証はなく、集権構造を温存したまま、府県合併が進むことになりかねない」。

2006.02.04

3日の日経新聞夕刊「ニュースの理由」は、中西晴史編集委員の「道州制導入、月末に答申。省庁の権限縮小、曲折も」でした。
「単に都道府県より広域の自治体をつくるのが狙いではない。道州に国の権限、財源を移すことが最大の眼目だ。国道、一級河川の管理や整備など国は複数の権にまたがるのを理由に権限を死守してきたが、道州になると、そんな理屈は通用なくなる」
「『国の地方出先機関に勤務する22万人の国家公務員をどうするか』だけではなく、霞ヶ関の本省の仕事も補助金配分業も含めて大幅に縮小される。国土交通省など多くの仕事が道州に移管されると、省自体の存在意義が問われる」
「国の縦割り画一行政から脱し、道州がブロック単位で東京を経由することなく地域経済活性化など様々な独自政策を競う。国は外交、防衛、マクロ経済政策などの仕事に純化する。国の官僚主導の統治構造を180度転換する引き金になるだけに、縮小を迫られる各省庁の抵抗は必至だ」

2006.02.03

3日の日経新聞経済教室「道州制への視点」は、岩崎美紀子教授の「分権型国家を目指せ。焦点は権限移譲、全国一律規制を見直し」でした。「以前の道州制論は、効率化と広域行政がその積極的支持理由となっており、分権は官治分権が暗黙の了解となっていた。これに対して現在の道州制論議は市町村合併の進展が一つの契機となって浮上し、府県の区域が狭小であることへの問題意識は継続しているが、その中心テーマとなっているのは自治分権である」
「日本は先進諸国のなかで最大の単一制国家である・・。国土は南北2千キロメートルに及ぶ列島や離島により構成され、地域により自然や気候が異なっている。しかしどこに行っても同じような街並み、同じような教育システムで、個性に満ちた魅力的空間とはなっていない。その一方で東京一極集中は加速を続け、東京都それ以外というゼロサムゲームのなかで地方は疲弊している。これらの原因が単一制にあるならば、解決するには連邦制への移行が必要となるが、日本の問題は単一制度にあるわけではなく、中央省庁の省令などによる全国一律の画一的規制の強さにある。これが閉塞感をもたらし創造力をそいでいる」
連邦憲法を制定せずとも、分権国家を実現することは可能である。道州制はそのような国家刷新改革の切り札ともなるべきものであり・・」

2006.01.05

遅くなりましたが、12月31日の読売新聞国際面に「イタリア市議会、移民の代表『議員補』続々」「不満を代弁、行政とのパイプ役」が載っていました。イタリアでは、市議会が、外国人に地方選挙への参政権を与えるために条例改正しようとしました。しかし、政府は、法律を変えない限り無効だとと宣告しました。そこで、次善の策として、5年以上の合法的滞在者が、独自選挙で議会に代表を送る制度をつくりました。いくつかの市に、広がっています。議会での表決には加わらないものの、移民の声を代弁する補完的制度だそうです。
補足ですが、欧州連合(EU)では、加盟国民は他国でも地方参政権があります。ここで言う外国人は、EU以外の出身者です。興味深い制度です。もっとも、議会が何を決めるかによって、その機能は違ってきます。