「復興事業の教訓」(4回)「日経新聞、大震災復興事業の検証」(3回)「復興事業の教訓、集落の集約」などに、成果と教訓について書いてきましたが、講演会での質問や記者からの質問を踏まえて、総括的なことを考えました。走りながら考えていたときは見えなかったことで、終わってから振り返ると見えてきたことです。ここでは、二つ書いておきます。
一つは、「走りながら考えた」ことについてです。
今回、避難所や仮設住宅での生活環境改善から始まり、国土の復旧から暮らしの再建に支援を広げました。しかしこれは、初めから考えていたことではありません。現場を見て「逃げることができず」、一つずつ支援策を作っていきました。それを整理し、政策の柱として、産業再開支援とコミュニティ再建支援と位置づけたのです。「復興がつくった新しい行政」
このうち避難所での生活環境改善などは、既にその後の災害で標準になりました。しかし、大きく壊れた町の復旧については、次回の大災害の際に今回の経験がどのように活かされるかです。今回作り上げた思想と仕組みを前提として、それをどのように適応するか、改善するかです。
もう一つは、「人口減少下での復旧」についてです。
これについては当初から、復興構想会議でも議論され、マスコミも指摘していました。私も理解していたのですが、それが現場の各事業に反映されたかといういと、十分ではなかったと思います。
「復興事業の教訓、過大な防潮堤批判」で触れたように、災害復旧事業は安全確保のために、壊れた施設を直ちに元に戻すという思想でできています。地域の人口減少を計算に入れる制度にはなっていません。今回が初めての、人口減少下での大災害でした。
上位概念に「人口減少下での復旧」という考えがあるのですが、現場での「各復旧事業」とをつなぐ、中間の仕組み(歯車のようなもの)がなかったのです。これをつくらないと、今後も「元に戻す復旧事業」が続くことになります。
その延長で、もう一つ述べておきます。「町を集約する」ということについてです。「復興事業の教訓、集落の集約」の続きにもなります。
多くの方々が、「南海トラフ地震など次の大災害では、町の縮小が必要になる。そのための事前復興計画を作っておくべきだ」とおっしゃいます。まことにその通りです。
しかし、実際はどうでしょうか。市町村長や県知事、議員たちが、そのような計画を事前に作ることができるでしょうか。かなり難しいでしょう。誰もが、大災害とその後の町の縮小を考えたくありません。
すると、私たちにできることは、東日本大震災からの復興において、よかった例とそうでなかった例を整理しておき、大災害が起きた際に、自治体と住民にその例の中から適切なものを選んでもらうことだと思います。