カテゴリー別アーカイブ: 復興10年

大震災10年目に考えた成果と課題、目次

3.11から10年の節目を迎え、新聞などの取材をたくさん受けました。記者さんから鋭い質問をされると、私も頭の整理ができました。また、一般の方に理解してもらうために、なるべく簡単にお話しするようにすると、ますます考えが整理されました。
10年近く、責任ある立場で復興に携わりました。その経験から、成果と課題を伝えることは責務でもあります。

他方で、私以外にそのような職員がいないことも、気になります。公務員は数年で異動をすることが慣習になっていますが、何か工夫はできないのでしょうか。特に、原発事故側に全体を話す人がいないことは、大きな問題です。
一人で話す人がいない(通常はそうです)場合は、組織として成果と課題を取りまとめるのでしょう。関係者がどんどんいなくなり、記憶も薄れます。10年はその限界だと思います。

10年の評価や教訓について書いた記事を、並べておきます。「ホームページの分類、復興10年」につけておいたのを、再掲して更新しました。

復興事業の教訓」(2021年1月26日から4回)。人口の減少、過大な事業批判
日経新聞、大震災復興事業の検証」(2月9日から3回)。予算、産業再建など
復興事業の教訓、集落の集約」(2月12日)。漁港など分散した集落の集約案
復興政策、終わってからの教訓」(2月14日)。今後の人口減少下での復興
提言、原発事故復興基本法案」(3月3日から2回)。残っている原発事故からの復興について
町の復興、高台移転とかさ上げの違い」(3月24日)。住宅団地の建設と中心街の復興との違い

地域づくり、3つの意味

大震災からの復興で、町の復興には、インフラ復旧だけでなく、産業と生業の再建、コミュニティ再建が必要だと、私はくり返し主張しています。「町づくり」と言っても、道路など都市施設と住宅を造るだけでは町にならず、そこに住民の暮らしが成り立つようにするのが町づくりです。「町のにぎわいの3要素

その点で、興味深い事例を教えてもらいました。厚生労働省の社会福祉施策です。
社会福祉法を改正し(2017年、2020年)、支援を必要とする人たち(高齢者、子ども、障害者、生活困窮者など)に対し、地域で包括的な支援体制を作ろうとしています。
そこに、「地域共生社会」「地域づくり事業」が出てきます。地域づくり事業とは、世代や属性を超えて住民同士が交流できる多様な場や居場所を整備することです(社会福祉法第 106 条の4第2項 第3号)。厚労省資料「社会福祉法の改正趣旨・改正概要」43ページほか。
ここでは、地域づくりが、公共インフラでなく、人のつながりになっています。菊池馨実著『社会保障再考〈地域で支える〉』(2019年、岩波新書)

地域おこしとして、多くの地域で町の活性化に取り組んでいますが、それらは産業振興が主です。まち・ひと・しごと創生法が、「それぞれの地域で住みよい環境を確保」することを目標とし、「まち」を「国民一人一人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営める地域社会の形」としました。
さらに進んで、社会福祉法では、住民のつながりが掲げられました。ここに、地域づくりについて、インフラ、産業、コミュニティの3つの面がそろいます。

町の復興、高台移転とかさ上げの違い

過大な町づくり批判」を考えていて、気がつきました。高台移転と、かさ上げ(区画整理)では、同じ町の復興でも、内容は違うのです。

高台移転では空き地が比較的少なく、かさ上げ(区画整理)で空き地が生まれした。その理由の一つでもあります。
高台移転は多くの場合、住宅だけです。それに対し、区画整理は町の中心地で行われ、住宅以外の商業用地なども含まれています。高台移転では、予定者数が減った場合、それは住宅の戸数減であり、その分だけ宅地や住宅の工事を止めれば良いのです。ところが、町の中心部を復興する場合は、そうはいきません。

民間出向者による産業復興支援

復興庁が、「岩手/宮城/福島 民間出向者による東日本大震災被災地産業復興支援事例集2012-2020」を制作しました。

復興庁では、民間企業から職員(139 名)を派遣してもらい、「政策調査官」として、知見を活かした産業復興支援を行っています。私が、産業再開支援で人とノウハウの支援として紹介する「結の場」も、彼ら彼女らの発案と実行でできたものです。そのほか民間連携
本事例集では、奮闘の様子や苦労話などを、関係事業者との対談形式で紹介しています。

政策調査官の成り立ちは、事例集の5ページに漫画で載っています。私も、お礼の意味を込めて、寄稿しました。46ページです。
職員を派遣してくださった会社は47ページに、支援した事業者は48ページに載っています。ありがとうございました。