カミナリを拾う
先生が説明しているうちにカミナリ雲は遠くに行ってしまい、雨も晴れてきました。
「ちょっと見に行きまちゅかね」
地仙ちゃんは先生をせかしてカミナリの落ちた大木を見に行きます。大木は二つに裂けて、ぶすぶすと煙を噴いていました。
「カミナリのチカラはすごいねー」と先生が言っている横で、地仙ちゃんはナニかを探しています。
「うふふ。やはりいまちた」
「な、なにがいるんだい?」
「これ、これ」
地仙ちゃんは大木のすぐ近くに倒れている角の生えた小さなコドモを拾い上げました。気絶しているようです。
「このコは?」
「カミナリちゃんでちゅ。ハトコの雲仙ちゃんのコブンなの。地上ではこんなナチャケないカッコウちてまちゅが、電気がたまると竜の形にも変化ちゅる。秋にはまた雲の上に戻って行くの。とりあえず弱っているので、センセイ、おぶってあげて~」とか言っています。
「ち、地仙ちゃん、このコまで連れて行く旅費はもうないよ・・・」
「だ~め。センセイは地仙ちゃんにイノチを救われたの。お礼をちなくてはいけないの」
しかたありません。たしかに、カミナリちゃんとはいえ見た目はコドモですから、捨てておくわけにもいきませんので、先生はカミナリちゃんを背負いました。まだ電気を帯びているのでしょう、少しピリピリします。
「さっきの続きだけど、①「申」というのは、古い形を見てもらえば納得行くと思うが、空から落ちてくる稲妻のギザギザの姿の象形なんだ。この「申」に、捧げモノを載せる台を表す「示」をつけると②「神」になることから、大昔のひとびとがいかにカミナリちゃんを畏れていたかわかるよね。
「申」を「申し上げる」という意味で使うのは、神様にいろいろお願いするからだ、というひともいるし、イナビカリのカタチから「上下に伸びる」という意味を持つようになり、部下から上司に「上申」「申請」することを「申」というようになったというひともいるね。ちなみに「申」は「十二支」のサルだけど、「十二支」はもともとはドウブツとは関係なく、大昔のひとの使ってた序数字なんだよ。身近なモノとか信仰対象を使って十二までの数字を表わしているんだ。他の字も解説してみようか・・・」
説明が続いている間に地仙ちゃんは、もっとオモシロそうなモノに気がついてしまいまして、先生の話をさえぎりました。
「センセイ~、あそこにもひとが倒れているの。オモチロい~」
と指差します。近寄ってみると、オトコのひとが倒れていました。
「このひとは・・・さっきの食堂からずっと後をつけていたひとだと思うよ」
まだ息はあります。どうやらこのひとは、先生たちの後を追って大木に近づいてきたところへカミナリが落ちて、直接は命中しなかったのでしょうがショックで気絶しているようです。