政治主導、特に小泉政権の政策決定過程を分析する記事が、目につきます。一番整理されていたのが、16日の東京新聞「変わる政策決定」での、西尾勝教授のインタビュー「党主導で政府と連結、小泉後も官僚支配には戻らぬ」です。
小泉政権の政策決定面からの評価については、
「小泉内閣以前は、官僚主導体制で、ほとんどの法案は各省庁で立案され、(利害対立する別の)省庁が事実上の拒否権を持つという仕組みだった。しかし、小泉首相は、内閣の大方針と位置づけたテーマを進めるため、省庁や与党の抵抗を突破する”バイパス”を開いた」。
「経済財政諮問会議・・で『骨太の方針』を決め、閣議決定までもっていき、内閣の方針にしてしまうルートをつくった。諮問会議には全閣僚は参加していないから、『省庁間折衝で合意しなければならない』というルールが外れたことになる」。
与党側との関係、族議員の抵抗については、
「小泉首相は、彼らを抵抗勢力と名付けた。そして、与党の事前審査を受けずに法案を国会に提出する手段を時折とった。これで与党の壁も突破した」
「21世紀臨調は・・、政治主導体制確立のため、政調会長を閣僚にも起用して政府・与党一元化を図るよう提言した。小泉首相は、それを受け入れなかったが、別の形で政府・与党の連結をやった。政調会長には自分の意向で動く中川秀直氏を据え、『偉大なるイエスマン』武部勤幹事長を続投させた。そして党の立場にいる人が、全体を取り仕切り、政府・与党を連結し始めた。政調会長が閣内にいるのに近い形を実現している」。
幹事長、政調会長が官僚機構への敵意を示しているという問に対しては、「三位一体改革、政府系金融機関の統廃合、公務員の給与引き下げや純減など、小泉首相の残りの任期で筋道をつけようという課題は、いずれも官僚機構を相手にしなければならない。最大の抵抗勢力は官僚ということだと思う」。
このような政治主導は、55年体制時に言われた政治主導とは異質ではないかという問に対しては、
「政治主導という言葉は、あいまいに受け止められることが多いが、本来は首相を中心にした内閣主導で、政治を動かすということだ。地元からの陳情あっせんを仲介する『政治家主導』とは違う。また戦後日本で続いてきたような、内閣入りしていない党幹部が勢力を振るう政府・与党二元体制での『与党主導』とも違う」。
小泉首相退陣後に、昔の姿に戻る可能性がないかとの問には、
「昔ながらの官僚主導体制に戻ることは考えられない。首相のリーダーシップに対する、国民の期待感が変わっている。リーダーシップがとれない首相では、選挙に勝てないということになってくるはずだ」。
いつもながら、鋭い指摘です。新聞も毎日の政局を追うこと以上に、このような中長期の分析をしてほしいですね。もちろん学者にも、外国の政治分析の前に、過去の日本政治分析の前に、日本の現在を分析してほしいです。