引き続き、「仮設から医療を問う」、長純一先生の発言から。
・・たとえば感染症の時代は、抗生物質の登場で大勢の命が救われ、医療が劇的に効果を発揮しました。ところが医学はどんどん進歩し、医療技術の違いが命の長短に大きな差を生むことは少なくなった。むしろ生活習慣や貧困など、社会的要因のほうが寿命に大きな影響を持つ時代です。特に被災地では、社会的要因の影響が極めて大きい。医師にも社会性が求められています・・
・・病院で機械や管に囲まれて目いっぱい長生きをめざすだけではなく、自宅で自然に近い形で家族にみとられる選択肢もあっていい。生き死には本人の価値観で違ってくるはずです。老いや死は本来、哲学や宗教、倫理、経済も含む大きな枠の中で考えるべきことなんです。なのに日本では「医療の問題」と抱え込んできた。超高齢社会に正しく向き合えていないのだと思います・・
・・従来の医療は医学的な判断が中心の「治す医療」でした。もっと「支える医療」「寄り添う医療」を重視していく必要があると思います。患者さんの意見、希望にじっくり耳を傾ける。自己決定は民主主義の基本でもあります・・
・・低成長下における、超高齢社会の安定産業は間違いなく介護、福祉です。人が人のお世話をするから、海外に流出していくこともない。有力な地場産業です。ところが復興バブルの今は、建設ブームが起きている感じがします。やがてこのバブルが消え、被災地の経済が落ちていくときに、医療、保健、福祉が地域の基幹産業になっているよう、今から備えておく必要があります・・
今回の大震災で、初めて仮設住宅に介護のサポート拠点を作りました。今後のパイロット事業になると思います。