コボルト

第1話は怒れるコドモたち
第3話は、精霊の至宝
第4話は目ざましゲコ
第5話は、コボルト暦
第6話は、大魔ジンの恐怖
第7話は、トマト畑のワナ
第1話 怒れるコドモたち
「おほほほ、ぴいぴい、どですかぽ~ん」
 ヘンなオンナのコが歌を歌いながら野原の道を歩いてきます。春ですからねー。
「なんだかおバカちゃんっぽいやつが来たぜ」
 村のいじめっ子たちは村はずれのキタナい祠の周りで遊んでいたのですが、遠くからヘンなオンナのコを見咎めました。見知らぬオンナのコです。しかもヘンな歌を歌っているコですし、キタナいし、村の秩序や環境を乱される可能性があります。
 オトナたちが大切にしている村の秩序と環境ですから、それを乱すモノを黙って見過ごしたのでは「ナサケない」「前向きでない」「共同体の価値観を無視した」と叱られるかも知れません。オマケにこれだけの人数がいておバカひとりに手が出せなかったと言われれば、「臆病者」「弱い」「競争の敗者」と批判されて、村のオンナのコたちに嫌われてしまってモテナイくんになってしまいます。これでは「負け組」です。両親にも申し訳がありません。
「イジメて追い出しちゃおうぜ」と誰かが言いました。ここで「いや・・・しかし」などと言ってはナカマのキモチを傷つ けてしまいます。何よりも大切なナカマです。裏切ることはできません。
 ということでコドモたちはヘンなオンナのコの前に立ちふさがり、「やいやい、どこに行こうとしているんだい」「へへへ、いじめてやるぜ」と通せんぼをしたのでした。
「おほほー、あたちの行動をジャマちゅるやちゅはオモチロい~」 とオンナのコは言いました。
「ナメてやがるぜ、やっちまいな」「ようし、やっちまうぜ」
いじめっ子たちはオンナのコを取り囲み、周りをぐるぐる回りながら、 「やあいやあい、ヘンなコヘンなコ、キタナいコ~」と囃したてました。しかしどうでしょう。
「おほほー、ちょれで次はどうちゅるの~?」これだけのイジメを受けながら、そのコはネを上げないのです。
「はあ、はあ」「こ、こいつ、これほどイジメてもネを上げないなんて」いじめっ子たちは疲れてきたみたいです。
「では次はあたちの番~」オンナのコは道端の巨木の下まで行くと、 「うんちょ」と一声かけて、もこもこ、と木を引っこ抜いてしまい、それをぶんぶん振り回しながら追いかけてきます。
「うわあ、カイリキだ~」「ゆるチて~」「カンベンちてくだちゃ~い」いじめっ子たちは逃げ惑いました。
いじめっ子たちがいなくなってしまうとオンナのコは巨木を元に戻し、 「あのタグイはすぐオトナに言いちゅけるのよね。オトナが出てくる前に退散ちまちょ」と一目散に逃げて行ってしまいました。
一体ナニしにきたんでしょうね。 
(採集地:オードトロワ地方)