カテゴリー別アーカイブ: 復興10年

「都市問題」東日本大震災10年特集

月刊『都市問題』3月号が、東日本大震災の10年を特集してくださっています。
いくつも論文が載っているほかに、「統計データで見る東日本大震災の10年」が充実しています。人口、産業、教育、医療・福祉、住まい、自治体財政の6分野で、詳細な数値と分析が載っています。50ページの力作です。ご利用ください。

日経新聞社説「持続性高める復興へ平時から備えを」

3月8日の日経新聞社説は「持続性高める復興へ平時から備えを」「インフラ先行を改めよ」「民間の力を生かそう」でした。
・・・東日本大震災で世界が目撃したのは、巨大津波や原発事故がもたらした筆舌に尽くしがたい惨状と、その未曽有の困難に黙々と向き合う被災地の人々の忍耐強い立ち振る舞いだった。
世界が感銘を受けた被災地に、私たちは元に戻す復旧でなく創造的復興を誓った。高台移転などによる、被災前より安全で、少子高齢化の影響を和らげ、産業を育む持続性の高い街づくりである。
この10年の被災地の努力は実を結んでいる・・・

・・・なぜ事業は過大になったのか。
一つは霞が関に根を張る「一刻も早く元に」という原状復帰のDNAだ。防潮堤の整備は自治体が復興計画を作る前に動き出し止まらなかった。人口減少時代の原状復旧は時に過剰投資につながる。
次に復興主体の市町村は復興計画で人口減を想定できなかった。住民の意向は時間が経つにつれて変化するが、事業費は地元負担がなく、見積もりが甘くなった・・・

その他、的確な指摘がされています。原文をお読みください。

朝日新聞社説「震災復興10年の教訓」

3月8日の朝日新聞社説は、「震災復興10年の教訓 「制度」見直しに踏み込む時」でした。3つの提言をしています。
第1は、縮む社会に適応する街づくり制度の必要性だ。
第2は被災者への資金支援の少なさである。
第3は防災庁の創設である。
簡潔でわかりやすいです。詳しくは、原文を読んでいただくとして。

大震災の復興では、これまでにない政策をいくつも取り入れました。社説にも「そんななか、復興現場で「行政哲学の転換」と評価された施策があった。被災地の産業再生のために、初めて企業や事業主も支援した「グループ補助金」などだ。新しい現金給付策につながる可能性もありそうだ」と書いてもらいました。

復興政策、終わってからの教訓」にも書きましたが、私たちが走りながら考え実現した新しい政策と哲学を総括し、次への備えとして欲しいです。
1 費用対効果を考えると、現物給付より金銭支援の方が効果的な(安上がりで満足感が高い)場合もあります。
2 人口減少下での復興は、意識にも制度にも、十分に生かされていないようです。

NHKアンケート、復興状況への評価

NHKウエッブサイトに、復興への評価のアンケート結果が載っています。「東日本大震災 復興状況への評価分かれる」(3月6日掲載)岩手・宮城・福島の4000人余りを対象に、回答は1805人です。

震災当時暮らしていた地域の復興状況をどう感じているか尋ねた質問では、
「復興は完了した」が12%、「思ったよりも進んでいる」が34%、合わせて46%。
「思ったよりも遅れている」が43%、「まったく進んでいない」が7%、合わせて51%でした。
去年に比べると肯定的な回答の割合は、およそ6ポイント高くなりました。
肯定的な割合は、宮城県59%、岩手県45%、福島県は29%です。津波被災地での工事が終わったのに対し、原発被災地はまだ始まったばかりですから、当然でしょう。

「当初、思い描いていた復興と比べて、今の復興の姿をどう考えるか」を尋ねた質問では、「思い描いていたより良い」が23%、「思い描いた通りだ」が21%、「思い描いていたより悪い」が53%です。
「思い描いていたより悪い」と答えた人にその理由を複数回答で尋ねたところ、「住民同士のつながり」が59%、「にぎわい」が47%、「商業施設の充実」が40%、「暮らしやすさ」と「交通環境」が39%、「風景」が37%、「雇用」が24%などです。
住民同士のつながりは、行政の力だけでは実現できず、にぎわいの回復も、災害復興だけでは達成できません。

被災地首長、復興はできた

3月2日の朝日新聞が、被災地42自治体の首長アンケートを載せていました。「絆再生・心のケア、課題

2013年からの変化も、載っています。2013年では、「進んでいる」(どちらかといえば進んでいるを含む)が22、「進んでいない」(どちらかといえば進んでいないを含む)が19でした。年を追って好転し、2020年では、「進んでいる」が39、「進んでいない」が1でした。2017年までに、急速に進んだようです。
2021年は質問項目が変わり、「10年で復興できましたか」について、「できた」が36、「できていない」が3です。できていないのは福島県です。残っているのは、コミュニティ再生や心のケア、農林水産業再生です。

別途、復興状況を100点満点で聞いた質問もあります。岩手県と宮城県では100~90点がほとんどで、福島県は80点台~40点台です。原発被災地では、避難指示解除がまだのところ、最近解除されたところが多いのです。