カテゴリー別アーカイブ: 2017年春学期・公共政策論

慶應義塾大学、公共政策論第11回目

今日は、慶応大学法学部、公共政策論第11回の授業でした。三井住友海上火災保険株式会社の本山部長に来ていただき、企業の社会貢献について、お話しいただきました。
この授業では、社会(公共生活)を支えているのは、行政だけでなく、企業やNPOも大きな役割を果たしていることを説明しています。NPOについては、第7回の授業で、日本財団の青柳さんに来ていただき、話してもらいました。

企業については、どなたに来ていただくか、悩んでいました。企業の社会貢献は、本業、本業関連、本業とは関連が薄い貢献が、あります。
この会社を選んだのは、損害保険そのものが、社会を支えているからです。国民にとって、国家が基礎的な保険機能と最終の保険機能を果たします。前者は、例えば健康保険や失業保険です。後者は、例えば大震災での被災者支援です。
しかし、国家の前に、経済活動としての民間保険が、国民や経済活動のリスクを引き受けています。火災保険、自動車事故の保険、海外旅行の際の保険などなど。この機能がなければ、個人の生活も企業活動も、とてもリスクの大きなものになります。すると、本人が引き受けるか(破産する恐れがあります)、活動に乗り出さないか(新しい事業ができません)となります。

また、その事業の延長として、CSRに取り組んでいます。今日は、そのお話をしてもらいました。
この会社が取り組んでいる「事故防止、防災・減災」「気候変動への対応」「高齢社会への対応」「地域社会の発展」という4つの項目。これらは、私が授業で「社会のリスク」として取り上げた項目です。学生諸君には、すんなりと理解してもらえたと思います。

これまでの私の講義に関して、学生からは「企業は、本業とCSRをどのように関連づけているのですか」「儲からないCSRに支出することについて、株主は納得するのですか」といった質問も、寄せられていました。
本山部長の説明は明快で、私も勉強になりました。ありがとうございました。

慶應義塾大学、公共政策論第10回目

今日は、慶応大学法学部、公共政策論第10回の授業でした。これまで、新しい社会の不安(身体や生命・財産だけでなく、社会システムの危機や、他者とのつながをつくれないことへの広がり)が増えたこと、そして社会を支える主体として行政だけでなく、企業やNPOも重要な要素であることを説明しました。
今日は、「負」の不安に対し、「正」の暮らしやすい社会の要素を説明しました。私が主張している「地域の財産」や「社会的共通資本」です。
あわせて、新しい社会の不安には、これまでの行政の手法が通用しないことを説明しました。
今日も、学生からたくさんの質問や意見をもらいました。週末に整理して、来週お答えしましょう。

慶應義塾大学、公共政策論第9回目

今日は、慶応大学法学部、公共政策論第9回の授業でした。いよいよ、これまで話してきた各論を踏まえて、私が考える公共政策のあり方をお話ししました。

まず、公共政策が取り組むべき社会の課題は、「社会のリスク」という観点から見ると、科学技術の発展と個人のつながりの希薄化から、新しい課題が増えています。
また、近代国家が想定した「自立した市民」というイメージは、大企業や不正を働くものの前では力不足です。労働行政と消費者行政は、ここから始まりました。病気をしたり失業したり自立できない個人もいます。そのために、各種の公的保険ができました。19世紀と20世紀の行政の歴史は、このように「弱い市民」を発見し、それを助けることの歴史です。

他方で、それらの問題に対して、サービスを提供したり答えるのは、行政だけではなく、企業もNPOなどボランティアセクターもあります。公私二元論ではなく、官共私三元論です。
行政が直営していたサービスを、民間に委託したり民間に開放したりすると、政府は小さくなります。しかし、国民からすると同じサービスなら、問題ありません。国鉄の民営化を考えてください。すると、社会の課題解決という観点からは、「大きな政府・小さな政府」論は、的が外れています。
では、政府は小さくなれば良いのか。そうではありません。民間が提供するサービスが適切なものか、ルールを作り、監視をしなければなりません。また、民間に任せていては不足する部分を提供したり、民間が提供するように誘導したりする必要があります。すると規模の大小ではなく、引き受ける責任が「広い政府」になります。
そして、全体を見ると「福祉提供国家」は「安心保障国家」になるのです。

慶應義塾大学、公共政策論第8回目

今日は、慶応大学法学部、公共政策論第8回の授業でした。先々週の授業と先週の授業(青柳光昌さんによるNPOの活動についての話)での学生からの質問に答えることと、昨日の朝日新聞社見学についての補足説明で、けっこうな時間を費やしました。

学生からの質問は、まことに的を射たものが多く、それへ回答することで、私の説明がより深く掘り下げることができます。そして、学生との双方向授業が成り立ちます。
これについては、学生からの評判も良く、中には「私の質問を取り上げ回答してくださって、ありがとうございます」といった回答もあります。そうですね、座ってノートを取っているだけでは、つまらないでしょうね。もっとも、50人を超えるカードを読み、質問を分類して、翌週それに答えるのは、手間がかかるのですよ。
また、企業訪問を例に、社会人としての服装や立ち居振る舞いも言及しました。拙著『明るい公務員講座』を社会人になる前、採用面接の前にお教えしているのです。学生には役に立つと思いますよ。

授業の本論は、先週は社会を支える要素としてNPOを説明しました。今日は、企業の役割を説明しました。企業の本業による貢献、ボランティア的な貢献から、最近ではCSRさらにはCSVに広がりっていること、そして社会問題を解決する企業もあることを説明しました。いくつかの企業の社会貢献、サステナビリティを解説してです。
来週は、これまでの説明を集大成して、「社会は何から成り立っているか」「その場合の政府の役割は何か」をお話ししましょう。

朝日新聞見学

今日は午後から、慶應大学の学生15人を引率して、朝日新聞本社見学。90分の見学+記者による60分の説明+意見交換会。見学では、編集局で編集の作業中の記者に、実際の作業を見せてもらい、質疑も。
事前に、10数問の質問も提出してあったので、それにも答えてもらいました。そして、記者の醍醐味なども。これはなかなか聞くことのできないものでした。
ありがとうございました、坪井論説委員、大月編集委員。とても豪華な勉強会でした。
明日の朝日新聞の東京版に、紙面に空きがあれば、見学に行ったことが1行載るそうです。

残念ながら今日参加できなかった学生諸君へ
朝日新聞はインターンシップを募集しています。マスコミに興味のある学生には、とても価値のある企画です。お勧めします。