カテゴリー別アーカイブ: 連載「公共を創る」

連載「公共を創る」第55回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第55回「日本は大転換期―満足しても現れる問題」が、発行されました。
成熟社会日本の問題。前回までで、豊かさや自由といった憧れが実現すると、成長の低下、目標の分散、孤独、責任などを生んだことを指摘しました。
今回は、満足したことによる問題や、経済的豊かさを追求したことによる問題などを取り上げます。

世論調査では、多くの人が生活に満足し、9割が中流だと答えています。それは結構なことですが、「上」を目指すことなく、「中」で満足しているとも言えます。
また、満足したことで、現実を見ることがおろそかになったようです。社会全体としては豊かになったのですが、貧困に悩む人はいなくなっていません。それどころか、豊かさの陰で経済格差は広がっていました。
満足は、現実にある問題を覆い隠し、またさらなる挑戦を忘れさせるという副作用がありました。
そして、他人と同じことさえしておれば、うまく行くという、依存心をも広げました。
社会の課題に取り組まない、公共の問題に取り組まないという、社会参加意識と政治参加意識の低下も招きました。

連載「公共を創る」第54回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第54回「日本は大転換期―憧れを手に入れ現れた閉塞感」が、発行されました。
成熟社会日本の問題、前回は、手に入れた自由が重荷になることをお話ししました。今回は、自由になると「私は何者か」という悩みが出てくることを説明します。

伝統社会では、生まれた家で、あなたの人生が決まりました。学問、職業、結婚は、親を見ると想像できました。しかし、家や中間集団に縛られなくなると、どのような職業を選ぶか、どのような人生を送るかを考えなければなりません。自分は何者かを、考える時間ができ、考えなければならなくなりました。これも、しんどいことです。

さて、豊かで自由を手に入れた日本。昭和時代より、平成時代や令和時代の方がはるかによくなったのに、元気がありません。それは、憧れを手に入れたことによります。憧れを目指して努力する、そしてそれが徐々に実現することで、喜びが得られ、元気が出たのです。では、次の目標は何か。そこが難しいのです。

連載「公共を創る」第53回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第53回「日本は大転換期―自由の獲得で重みを増した自己責任」が、発行されました。成熟社会の問題、今号は、自由と孤独についてです。

経済発展によって、自由が実質的になりました。憲法で書かれただけでは、自由は獲得できません。豊かになることで、農地に縛られないこと、家業に縛られないことで、自由になれたのです。毎日の生活も、自分の人生も、自ら選ぶことができるようになりました。しかしそれは、自分で選ばなければならないということです。さらに、その結果も、自分で引き受けます。これは、つらいことです。
そして、みんながみんな自立できるわけではなく、また学校を出ただけでは、自立できません。そして、世間から期待されているだけの行動をしないと、失敗したときに「自己責任だ」と、突き放されます。自由は、責任も連れてきました。

自由はまた、孤独も連れてきました。イエや村、中間団体、宗教などの束縛から解放されると、人はつながりが薄くなり、孤立することになりました。それは、プライバシー意識を高め、さらに孤立を進めることになります。

連載「公共を創る」執筆状況

定例の、執筆状況報告です。
連載「公共を創る 新たな行政の役割」は、第3章1(2)「成熟社会の生き方は」の「その2」を右筆たちに手を入れてもらい、編集長に提出したのが7月31日。それを紙面の形にしてもらいました。すると、10月16日までできたのです。これで、一安心。

そこで、他の本に手を出し、執筆が進んでいません。この暑さですから、頭が回りません。冷房も入れるのですが、身体も頭も夏休み状態です。仕事で現地に行くと、熱中症もどきになりました。で、読書も進まず。まあ、夏はそんなものですわね。

しかし、時間はすぐに経ちます。あっという間に、8月も下旬になっていました。気を取り直して、執筆に取りかかりました。
「その3」は、平成時代に大きく変化した、あるいは変化を余儀なくされている個人の私生活です。それを、家族の形、もてあます時間、個人の信念と社会の道徳、などに分けて議論しようと考えています。
これらについては、だれもが、いろんなところで見聞きします。そして、調査や書物が出ています。それを、「公共を創る」観点から、どのように整理するか。断片的事実は知っているのですが、文章の形にするとなると、事実確認など労力が必要です。いつものように悩みながら、少しずつ書いています。

連載「公共を創る」第52回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第52回「日本は大転換期―人口減少で社会の仕組みも変化」が、発行されました。前号から、成熟社会日本の問題を取り上げています。今号は、人口減少と、喜びの変化です。

人口が増えてきた日本が、人口減少に転換しました。人口ピラミッドが、下すぼまりになりました。人口減少はそれだけでは悪いことではないのですが、それを前提にしてきた社会のしくみを変えなければならなくなります。
会社では消費者が減ることであり、部下職員が減ることです。年金財政の絵は、皆さん見たことがあるでしょう。老人を支える若者の数です。かつては大勢で支える胴上げだったのが、3人で支える騎馬戦になり、将来は一人で支える肩車になります。

喜びの変化は、次のようなことです。豊かになったことで、国民は物の豊かさから、心の豊かさを求めるようになりました。しかし、心の豊かさは単純ではありません。
人によって求める内容が違います。そして心の豊かさは、お店に売っていない、行政が提供できるものではないのです。