男女格差解消、社会の体質改善が必要

3月21日の日経新聞経済教室は、相澤美智子・一橋大学教授の「男女格差解消、社会の体質改善が必要」でした。

・・・以上の方針は、いずれも歓迎されるべきものだ。しかし女性活躍を冠した法律の改正という「対症療法」で、女性活躍社会を真に実現できるかといえば疑問である。女性の活躍不全という形で現れる現代日本社会の病根は深く、その克服には根本治療が必要である。
私見では、現代日本社会の病名は「日本版アンシャンレジーム(旧体制)の未清算」である。日本人がそこから解放され、日本国憲法が想定する人権意識を真に獲得できるよう、国家・社会があらゆる努力をすることが根本治療となる。
日本版アンシャンレジームと筆者が呼ぶのは、次のような状況である・・・

・・・戦後の日本国憲法は、人々が水平的(ヨコ)に結合する社会を創出すべく家制度を廃止し、両性の平等を定めた。しかし日本版アンシャンレジームないし身分制的タテ社会の伝統は、なお克服されていない。
法律に規定される夫婦同氏強制は、日本版アンシャンレジームの名残をもっとも分かりやすく示す例である。また労働契約は、労働力と賃金の交換という取引契約の外観を呈しているが、人々の意識においては身分契約(企業という団体に所属する身分を獲得する契約)のように観念されている。ここにも日本版アンシャンレジームを認めることができる。
企業における身分制的タテ社会は年功序列的人事や、人の能力を格付けする職能給制度などに認められ、正規・非正規労働者の著しい格差としても現れている。そこに、男女格差が複合的に重なる。

このように人を年齢、性別、雇用形態などによって身分制的に組織し評価するという日本企業特有の雇用のあり方を、最近では「メンバーシップ型雇用」と称することが多くなった。
メンバーシップ型雇用が確立したのは高度成長期の1960年代といわれている。この見方に従えば、この型の雇用は、成立からまだ60年程度しかたっていない。
しかし、メンバーシップ型雇用の本質が企業における身分制的タテ社会であるとの認識に基づけば、そうした社会編成の歴史は1300年に及ぶ。女性が活躍できない社会の基層に岩盤のごとく存在する、身分制的タテ社会の伝統克服が根本的課題である・・・