日銀の大規模緩和、批判

1月11日の朝日新聞「異次元緩和 残したゆがみ5」は、吉川洋先生の「大規模緩和「全てが間違い」」でした。

約11年に及んだ日本銀行による「異次元」の金融緩和をどう評価するのか。日銀による過去の金融緩和策の検証「多角的レビュー」を講評した有識者の一人で、マクロ経済学者の吉川洋・東京大学名誉教授は「根こそぎ間違っている」と断じ、三つの問題点を指摘した。さらに物価高が続いても利上げを急がない今の日本銀行の姿勢にも、国民との「ずれ」が生じていると主張する。

――日銀の大規模緩和をどう評価しますか。
「私は初めから反対だったし、10年以上が経って失敗だったことが明らかになったと考えている。日銀による検証(多角的レビュー)でも、物価2%目標は達成されなかったと認めている。しかし一定の効果があったとして、副作用を考慮してもネット(差し引き)ではプラスだとしている。その結論には、全く同意できない」

――どこが間違っていたのでしょうか。
「何から何まで、根こそぎ間違っているっていうのが私の立場だ。問題は大きく三つある。第一に、(物価が下がり続ける)デフレが一番の問題であるという2013年の出発点の認識だ」
「デフレには2種類ある。1930年代のように物価が2分の1になるような急激なデフレと、非常にマイルドなマイナス0・5%といったデフレだ。両者を区別する必要があり、日本の場合は後者にあたる。19世紀の英国を見ても、最近の研究を見ても、マイルドなデフレが実体経済に悪い影響を顕著に与えるということはない」
「次に、デフレは貨幣的な現象だから、市中に流すマネーの量を増やせば、簡単に直せるという主張も間違っていた。最後に、マネーの量を増やして人々の『期待』に働きかけるという考え方だ。国民は日銀がどんな金融政策をしているか知らない人が多い。その人たちの『期待』に働きかけるなどあり得ない」