連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第201回「政府の役割の再定義ー「官僚主導」の実態」が、発行されました。政治主導の下での行政の役割を考えています。まず、かつての「官僚主導」の問題を説明しています。
官僚主導が、内閣の意向を無視して「勝手な」政策を考えて実現させたなら、それは大きな問題です。しかし、現憲法ではそのようなことはできようはずがありません。官僚主導として批判された問題の本質は、別のところにあります。官僚が考える政策案は、与党が決定権を持っていたのです。
予算や法律案は、閣議決定の前に与党の了解を取る仕組みが定着しました。これによって、与党は、内閣案、官僚の作った案に拒否権を持ったのです。与党の審査は、各部会で行われ、内閣より与党の部会が力を持ったのです。
「官僚主導」は、政策決定において官僚機構が大きな権力を保有しているという意味ではありません。本来の判断者である首相や大臣よりも、与党の各部会が主導権を持っており、その間の結節点として活動していた官僚機構が主導しているように見えた状況だった、と言えます。
部会と各省の利害が一致する場合はよいのですが、与党議員間で意見が一致しない場合に、その間で板挟みになり、官僚が立ち往生することもあります。
官僚が考えた政策で、与党部会や有力者の反対で実現しなかったり、実現が遅れたりしたものもあります。農業政策、文教政策、社会保障政策などです。財政再建もそうでしょう。こうしてみると、どう考えても、官僚主導などという代物ではありません。
官僚主導が可能な範囲は、政治的決断を伴わないで済む事案です。その範囲内でなら、官僚は良い仕事をするでしょう。逆に、政治的決断が必要になると、官僚主導は機能しません。例えば、外交方針の転換、国民に負担を問うことです。