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経済

人的投資抑制がデフレを助長

2月29日の日経新聞「物価を考える、好循環の胎動」は、柳良平・元エーザイCFO「人的投資抑制、デフレを助長」でした。

――日本企業は人件費をどう捉えてきたか。
「これまで企業価値の物差しは有形資産で、道具として財務会計を使ってきた。人件費は費用で利益にマイナスに働くものという考え方が当たり前だった」
「かつて企業価値の大半を占めていた有形資産なら財務会計で説明できたが、近年は人材価値や知的財産など無形資産が過半以上を占めるようになった。従来の方法では企業価値の半分も測定できなくなった」

――人的資本の効果を測る「柳モデル」を作った。
「製薬会社エーザイの最高財務責任者(CFO)時代に『人件費を使いすぎ』と投資家から批判があった。人件費は企業の将来価値を高めるものだと、証明したかった。人件費を投資した5年後に企業価値を計る指標のPBR(株価純資産倍率)が約13%増える正の相関があった」
「人件費は費用ではなく将来の企業価値を生む投資であると、ESG(環境・社会・企業統治)を重視する長期投資家を中心に考え方が変わってきた」

――人的投資の認識の高まりはどう影響するか。
「企業はバブル崩壊後に賃金を費用とみて抑制することでしのいできた。その結果として、デフレや企業価値の長期低迷につながった。企業経営者は今後は確信をもって人材投資を積極的にできるようになる」

――今後の課題は何か。
「人的資本の開示が前期の有価証券報告書から義務付けられた。他社と同じ『横並び主義』、当局の要求に最低限応える『形式主義』に陥るリスクはある。なぜ企業価値に資するのか、説明責任が今まで以上に問われていく」

1991年から30年間の経済成長外国比較

経済成長外国比較2024」の続きです。1991年のバブル経済崩壊後、日本の「失われた30年」を表す図です。今回新しく作ってもらいました。

1991年を100として、アメリカ、ドイツ、日本の一人あたり名目GDPの伸びを示したものです。30年間でアメリカは3倍に、ドイツは2倍になりました。日本は、横ばいです。イギリス、フランス、イタリアなどもアメリカやドイツと同じような成長をしています。日本だけが、停滞したのです。これは自国通貨表示なので、円安は関係ありません。
5年や10年ではありません。30年間の間、経済界や政治家、官僚たちは何をしていたのですかね。反省。政府はこの間に、何度も景気対策を打ちました。しかし必要だったのは景気刺激ではなく、産業構造転換と賃上げだったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年の記事では日米の経済発展、日本がアメリカに追いつき、その後引き離された数字を「経済力の日米比推移」で示しました。今回はこの表に置き換えました。
今回の3つの図表とも、小黒桂君の助けを借りました。いつもありがとうございます。

経済成長外国比較2024

経済成長の軌跡2024」から続く。「経済成長外国比較2」(2021年)を更新しました。

(一人当たりGDPの軌跡と諸外国比較)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本、アメリカ、韓国、中国の3か国の一人当たりGDPの軌跡です。1955年にアメリカの10分の1だったのが、1980年代後半に追いつき、そして追い抜きました。アメリカもその間に10倍になったのですが、日本は100倍になりました。
しかしバブル崩壊(1991年)後、日本の経済成長は止まり、横ばいです。先進各国は成長を続け、日本と大きな差が開きました。この図は、縦軸が対数目盛になっているので、アメリカとの差がわかりにくいのですが、右につけてある数字を見てください。また韓国はほぼ日本と並び、中国が追いかけてきています。「経済成長外国比較2」(2021年)と比べてください。

この表は、かつて経済企画庁が作っていたもので、私流に改変して使っています。当初は、日本の経済成長がいかに驚異的であったかを説明するために使っていたのですが、最近はその後日本は停滞している、アジアから追いかけられているという説明になりました。急速な経済成長は日本独特のものではなく、他国に先駆けて日本が取り組んだ、他国はそれに遅れたということがわかります。「1991年から30年間の経済成長外国比較」に続く。
参考「日本のGDPが世界4位に

経済成長の軌跡2024

経済成長の軌跡2」(2021年)を更新しました。

 

 

 

 

(日本の経済成長と税収)
戦後日本の社会・政治・行政を規定した要素の一つが、経済成長であり、その上がりである税収です。
次の4期に分けてあります。「高度経済成長期」「安定成長期」「バブル崩壊後(失われた20年)」、そして「復活を遂げつつある現在」です。
1955(昭和30)年は、戦後復興が終わり、高度経済成長が始まった年。1973(昭和48)年は、第1次石油危機がおき、高度成長が終わった年。1991(平成3)年は、バブルがはじけた年です。第2期は「安定成長期」と名付けましたが、この間には石油危機による成長低下とバブル期が含まれています。第1期は18年、第2期も18年、第3期は21年です。
第4期の始点を2012(平成24)年にしたのは、アベノミクスを復活の起点と考えたからです。しかし、その後の経済成長ははかばかしくなく、第3期が続いている(失われた30年)とも見ることができます。すると、4期ではなく、成長の前期(1955~1991年、36年間)と、停滞の後期(1991~現在、ひとまず33年)と見ることもできます。

第4期に税収が伸びているのは、消費税増税と思われます。その他の解説は、「経済成長の軌跡2」(2021年)をお読みください。「経済成長外国比較2024」へ続く。

会社で初の賃上げ

2月28日の日経新聞に「モスフードサービス、初のベア実施 定昇含め8%賃上げ」という記事が載っていました。
・・・モスフードサービスは27日、4月に正社員や嘱託社員約650人を対象に賃上げを実施すると発表した。ベースアップ(ベア)の実施は記録が残る限り今回が初めてとしている・・・

よい話だと思いつつ、ベースアップが記録に残る限り今回が初めてということに驚きました。日本では30年間にわたって給料が上がらなかったのですから、このような会社は多いのでしょう。給与担当者も、前例がないので困るでしょうね。