カテゴリー別アーカイブ: 2017年秋学期・地方自治論Ⅱ

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第7回目

10日金曜日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第7回目でした。先週は祝日で休みだったので、リズムが狂いますね。
講義は、調子が出て来ました。レジュメと資料は印刷して配布しますが、ポイントは黒板に書きながら説明します。これが、学生によくわかってもらえる方法のようです。
資料を配って説明するだけでは、眠くなるでしょう。板書だけでは、「私の字が読めないところ」もあるでしょう。それにしても、小学校や中学校、高校の先生方は、黒板に、丁寧にきちんとした文字や図表を書いておられましたね。

前回から、日本経済の中での政府の役割を話しています。
今回は、中央政府と地方政府の、予算の大きさ、その内訳、両者の関係を解説しました。国の予算編成の仕方や、地方財政計画を見積もる方法なども。
これは、学生諸君には初めて知ることだったでしょう。「国の税収がこれだけも地方に交付されていることを知りました」「国の直接の歳出って、少ないのですね」といった感想が多かったです。
では、なぜこのような仕組みが必要か。それについては、次回詳しく説明します。
「こんなに借金して、大丈夫ですか」という質問も多かったです。これも、12月には説明しましょう。

学生諸君
授業で教えた新聞の読み方は「わかる日経」を参考にしてください。例えば、読むのにかけている平均時間は30分、20%の人は15分です。p14左下。

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第6回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第6回目。まず、地方財政論が、政治学(行政学それも地方行政論)と経済学(財政学)の、両方の接点にあることを説明しました。今学んでいることが、地図で言うとどのあたりにあるのか。それを理解すると、物事がよく見えます。
これは、本を読むときも同じです。時々は目次を見て、今全体の中のどこにいるのか、議論の流れを理解すると、本文の理解が進みます。
そして、先週もたくさんの質問や反応があったので、その説明をしました。学生の質問票を読むと、どこが理解されてどこが理解されていないかよくわかります。

授業の本論は、地方財政と国家財政の規模や役割分担を説明した後に、国民経済の中で政府部門がどのような地位を占めているのか、モノ・サービスの提供とお金のやりとりの中でどのような位置にあるのかを説明しました。そして、財政の3機能も。
これらは、「よくわかった」と学生からよい反応がありました。企業と家計との関係では、モノ・サービスの提供と代金は一対一の関係(取引)にあります。政府も、ものを買ったり公務員を雇用する場合はこの関係にあります。
しかし、政府の重要な機能、税金を集め公共サービスを提供する場合は、それが一対一の関係にはありません。それどころか、貧しい人からは税金を集めず、より多くの福祉サービスを提供します。
黒板に、図を書いて説明することが、学生にはよくわかってもらえるようです。

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第5回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第5回目。先週の授業でたくさんの質問が出たので、今日はその補足説明から。
個人所得課税について、地方税である住民税所得割は、県税と市町村税を合わせて10%の定率課税、国税である所得税は5%~45%の累進課税です。これは、先年の税源移譲で、わかりやすくなりました(かつては住民税も累進課税でした)。しかし、国税の累進課税を説明しておかないと、学生は分かりません。
その前に、所得税の課税について、確定申告書の例を見せて、(収入ー経費=所得)ー控除=課税対象所得。これに税率をかけることを説明しました。私も自分で申告するようになって勉強したので、学生の多くは初めて見ることでしょう。未来の高額納税者になってもらう彼らなので、説明しておくことがよいでしょう。
法人課税は、地方税の法人事業税が外形標準課税になり、国税の法人税が所得課税なので、これも説明する際にはしやすくなりました。しかし、企業の6割が赤字決算だということも説明しておかないと。
消費税の多段階課税の仕組み、消費税は逆進性かについても、図を書いて説明しました。学生に聞くと、分かったという人と、わかりにくかったという人に別れました。

本論は、地方税の課題について。税収が少ないこと(かつては3割自治と呼ばれましたが、最近は4割自治に近くなっています)、地域間格差が大きいことを説明。そして、法定外税や超過課税について。しかし、課税を強化すると住民や企業は他の自治体に逃げる可能性があること。ここは、地方税の重要論点です。
あわせて、健康保険料、介護保険料、上水道料金の自治体間格差も説明しました。こちらの方も、大きいのです。
実際どうなっているのかを説明すると、理論や制度だけを説明するより、理解してもらいやすいですよね。学生の食いつきがよく読めて、楽しいそして内容のある1駒でした。

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第4回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第4回目。地方税に入りました。税は、財政の基本です。

ところで気になって、学生諸君に、経済学、財政学、会計学を履修したことがあるかを問うと、ほとんどの学生が履修していません。う~ん、すると複式簿記を説明しても、通じませんね。
企業の幹部を目指すなら、社長を目指すなら、複式簿記は読めないと。法学部のカリキュラムには、ないのですかね。会計学までは手が回らないですが、私の授業では、財政の基礎はお教えしましょう。

一定税率と累進課税の説明は、住民税と所得税を税率を図示して説明すると、分かってもらいやすいです。
法人課税は、法人事業税の外形標準課税を説明しましたが、その前に法人税の所得課税の説明が必要でした。赤字法人の説明が必要です。
地方消費税は、消費税と一緒に説明したのですが、これは説明不足でした。多段階での課税と重複課税の防止、帰属地をどうするか、逆進性など、授業後に「分かりませんでした」との意見がたくさんあったので、来週、説明しましょうか。関心ある人は、自分でも勉強してください。

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第3回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第3回目でした。
前回、予算の概要を説明しました。相模原市役所から提供いただいた冊子は、学生から「わかりやすかった」との評価でした。
予算書で見えることと見えないこととあわせて、フローとストックを説明しました。「今まで分からなかったのが、分かりました」と書いた学生がいました。経済学や財政学を履修していないと、知らないでしょうね。

今日は、予算の機能をお話ししました。機能の一つは、税金を中心とした歳入と歳出予算によるサービスの執行、資金の調達と支出という観点です。これは経済(学)です。もう一つは、住民の要望、議会による審査(予算案と決算)という、民主主義的統制です。これは、政治(学)です。
「地方財政」の「財政」は、経済(財)と政治(政)の結節点です。主体と作用を図示したので、学生からは「わかりやすかった」との感想をもらいました。経済学、財政学における「地方財政の地位と役割」は、地方財政学の主要論点の一つなので、日を改めてじっくり説明しましょう。