カテゴリー別アーカイブ: 2017年秋学期・地方自治論Ⅱ

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第11回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第11回の講義。公営企業と第3セクターの議論を発展させて、サービス提供について、行政・企業・非営利団体の3つの違いを説明しました。具体の事業を表にしてです。この表はかつて作ったのですが、今回、有識者に見てもらい加筆しました。学生には、「わかりやすい」と好評でした。

引き続いて、国の予算と赤字について。財務省に提供してもらったパンフレットを解説しました。社会保障費は伸びるのに、税収は伸びず、いわゆる「ワニの口」になっていること。先進国の中でも、赤字額、累積額が飛び抜けて大きいことなどを説明しました。これも、パンフレットのおかげで、理解してもらえたようです。

なお、レジュメ9を修正しました。修正後を使ってください。3ページ下から2行目。
「社会システム:自発、無償・有償労働、協力非営利」です。NPOも無償労働だけではありません。

大学の期末試験問題作成

慶應大学法学部での授業は、順調に進んでいるのですが。期末試験の準備と、来年度のシラバス作成の時期です。
まず、期末試験問題を作りました。
私の授業は、学生さんを苦しめることが目的ではありません。地方行政の仕組みと、どのような課題があるかを、知ってもらうこと。また、自治体現場と全国的視点、時代による課題の変化とそれへの対応を理解してもらうことです。あわせて、勉強する際の基本や、ものを見る際の基本を、身につけてもらうことです。

それで、試験は記述式です。暗記に労力を使う(それだけでヘトヘトになる)ことを防ぐために、ノートや配付した資料の持ち込みを許しています。また問によっては、「××について、説明せよ。その際は、以下に掲げた単語を用いること。足らない語彙は適宜補うこと」という出題もします。
もっとも、文章を書くことになれていない学生には、少々負担になるでしょう。採点する私にも、負担になるのですが。しかし、「大学で、岡本の授業を受けました」と言ってもらうだけの「品質保証」は必要です。

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第10回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの講義。早いもので、10回目です。そこで、これまでの講義を振り返って、どのような視点で見ると分かりやすいか、どこが要点かを説明しました。
これまでに配ったレジュメを読み返し、教科書を読み直すと、全体像がよくわかります。最初読んだときには難しかった部分も、今読むと「なるほど」と思えるでしょう。部分を深めるだけでは、理解は進みません。常に、全体と部分を意識し、行き来しながら勉強してください。これは、本を読む際も同じです。少し読み進んだら、目次を見て、今どこを進んでいるのかを再確認しましょう。

特に地方財政は、個別自治体の財政と、1700団体全体の財政があります。ミクロとマクロです。そして、それを地方財政計画や交付税がつないでいます。さらに、日本経済の大きな部分を占める役割と、行政サービス提供・地域の均衡ある発展といった政治としての役割があります。財政は、経済と政治の接点です。このように、視点がいくつかあるのです。

今日は、地方債と公営企業、第3セクターを説明しました。鉄道、バス、下水道、病院など、身近なサービスを説明するので、学生も取っつきやすいでしょう。自治体が、様々な事業をしていることに驚く学生が多かったです。

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第9回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第9回目でした。
地方交付税の果たしている機能について、説明しました。あわせて、戦後日本の発展について、政府の政策と効果についても。
1950年代以降、工業化の進展と経済成長にしたがって、太平洋ベルト地帯への人口集中が進み、過疎と過密が進みました。また、商工業と農業との所得格差も。
政府は、産業政策(米の買い支え、工場再配置)と、公共政策(公共事業、国庫補助金、地方交付税による均霑化)を行いました。これによって、地方でも働く場を確保することとともに、全国各地で一定水準のインフラと公共サービスを提供しました。しかし、過疎と過密を解消することはできませんでした。

もっとも、交付税による財源保障と財政調整がなければ、豊かな地域と貧しい地域で、もっと大きな差がついていたでしょう。
中国やアジアの国の政府関係者が、日本の交付税制度の勉強に来られ、説明したことを思い出します。彼らにとっても、切実な課題だったのです。「これらの政策で、どの程度成功したのか」とか「日本は、このほかに人口移動を制限していないのか」という質問もありました。

その後、国際化でこのような産業政策は無理になり、財政の逼迫で公共事業も削減が始まりました。
バブル崩壊とアジアの追い上げで、日本は、産業・経済・社会で新しい局面に入りました。その転機が、1990年~2000年代でした。社会の変化や国際化が、経済と財政に影響を及ぼすこと、そして行政の役割が変わることも、話しました。
教科書に書かれていない話、視野の広い話なので、学生からは「おもしろかった」との評価をもらいました。

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第8回目

10日金曜日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第8回目でした。
先週の地方財政計画の解説に続き、今日は地方交付税の解説をしました。この分野は、かつて私の専門分野でした。説明に力が入ります。
詳しく話すと複雑になるので、なるべく簡単に話したつもりですが。

学生のアンケートをみると、地方交付税の算定方法は、理解してもらえたようです。地財計画の歳入歳出を1700団体に輪切りにしたのが、基準財政需要額と基準財政収入額であること。多くの自治体が交付税の交付を受けていることや、不交付団体がどのような税源で税収が多いかなども。
基準財政収入額の算定の際に、税収の全額ではなく75%を算入することについて。「難しかった」という人は、例えば神野・小西『日本の地方財政』p104以下を読んでください。

学生諸君
来週24日は、学園祭でお休みです。次回(12月1日)授業は、この積み残しをお話しした後、地方債の話に入ります。準教科書は、地方債の部分を読んできてください。