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行政

稲継裕昭先生「地方自治体の担い手不足の現状と打開策」

稲継裕昭・早稲田大学政治経済学術院教授が、2月26日に日本記者クラブで「地方自治体の担い手不足の現状と打開策」を話されました。ユーチューブで見ることができます。関係者は必見です。

公務員志望者の減少、若手退職者の増加、心の病の職員の増加・・・。自治体現場の変化を、数値と経験とで説明してくださいます。

この20年間の変化が急速なようです。若者が自治体を選ばなくなっています。若者の意識の変化と労働市場の拡大が、変化をもたらしています。国家公務員法と地方公務員法の縛り、給与体系、年功序列の昇進慣行が、時代に合わなくなっています。

私は、労働慣行が日本の「この国のかたち」をつくっている、労働慣行に「この国のかたち」が集約されていると説明しています。日本社会の変化が、ここに押し寄せています。

公共工事、着工後の増額

2月21日の日経新聞が「公共工事の費用対効果、5割で悪化 着工後も増額頻発」を解説していました。
・・・国の公共工事の費用対効果が、着工後に悪化する事例が相次いでいる。道路やダムなど約1200事業(2010〜23年度)の5割で費用対効果指数が低下し、46事業(4%)で費用が効果を上回っていたことが分かった。費用を過少に設定したり、需要を過大に評価したりしていたケースがある。見積もりの精度を高めなければ、政策判断を誤る恐れがある・・・

「公共工事調べろ」端緒は官僚の一言 調査報道の舞台裏」(2月23日)には、この調査報道の過程が明かされています。
・・・公共工事ではまず発注者の国が工事費を見積もり「予定価格」を決める。その額を上限として競争入札を実施し、参加業者の「入札価格」などを考慮して、受注業者を決めるのがルールだ。
工事は受注業者の「落札価格」の範囲内で進む。だが近年、着工後に多額の増額が発生する公共工事が頻発していると官僚は明かした。

まず取り組んだのが全体像の把握だ。道路やダム、トンネル、河川――。国が発注する大型工事の計画当初と直近の事業費を比較できる資料があれば、増額の実態が分かるはずだ。
国土交通省の道路、水管理・国土保全、港湾の各局を訪ね、ホームページ(HP)で公表されていない資料の提供を求めた。粘り強く交渉した結果、提供されたデータの分析で判明したのは、物価高を上回る増額の多さだった・・・
・・・各地の地整局から届く開示文書を調べるうち、思わぬ発見があった。東日本大震災の復興工事で、競争入札や随意契約(随契)を経ず、既存の別工事に費用を上乗せする形で施工した工事が岩手県と福島県で計5件見つかった。
会計法は政府調達の競争性を確保するため、受注を希望する業者が広く参加できる競争入札を原則としている。なぜこのような契約が認められるのか。
発注者の東北地整局は取材に対し、復興支援道路の開通時期に間に合わせるため、やむを得ない措置だったと釈明した。だが、複数の専門家が「会計法令に抵触する可能性がある」と問題視した。緊急性のある場合など特定の業者と随契を結ぶ場合もあるが、別工事の受注業者に直接工事を依頼し、費用を別工事に上乗せする手法は異例だ・・・

・・・増額の頻発は公共工事の「費用対効果」も悪化させている。国の公共工事は、経済・安全効果を総費用で割った費用対効果指数が「1」をどれくらい上回るかが採択の判断材料となる。指数が高いほど価値のある事業とみなされる。
国交省の公表データをもとに、検証可能な約1200事業を調べると、5割の事業で指数が低下し、「1」を下回る事業も46件あった。指数が悪化した工事には、費用を過少に見積もったり、効果を過大に評価したりしていたものもある。本来、事業の要否を判断するための指標が「機能不全」に陥っていた・・・

確定申告書、日本語だけ

3月12日の朝日新聞夕刊に「確定申告、言葉の壁 マニュアルは5言語を用意、けど提出書類は日本語のみ」が載っていました。国際化はまだまだですね。

・・・外国人であっても日本国内で所得を得た場合は課税対象であり、確定申告を求められるケースもある。法務省によると、国内の在留外国人は2023年6月末現在、322万人超に達した。10年前の約1・6倍で、過去最高を更新した。
だが、確定申告書やe―Tax(国税電子申告・納税システム)は日本語版しかないという。一体、なぜなのか――。

国税庁に取材すると「予算の制約で他言語に対応するに至っていない」との回答だった。
申告書については、手書きの文字を自動で読み込むOCR(光学式文字読み取り装置)が外国語仕様ではないといった障壁もあるという。
同庁はホームページ上で提供する申告書作成コーナー用に、英語や中国語を含む5言語のマニュアルを用意。外国人が申告しやすい環境作りを進めているというが、申告書やe―Taxそのものの多言語化は現段階では検討されていないという。

国際税務に長く携わってきたゾンデルホフ&アインゼル税理士法人(東京)代表社員の永島寿夫税理士によると、以前は在日外国人の多くは日系企業や外資系企業の日本支社に勤めており、勤務先と契約した大手税理士法人に税務を任せてきた側面があった。「そもそも他言語の申告書のニーズがなかったのではないか」とみる・・・

朝日新聞「能登へ、首長の教訓」

朝日新聞夕刊連載「現場へ!」、3月4日の週は「能登へ、首長の教訓」でした。大震災当時に苦労された首長さんが出ておられました。

この方々と一緒に、現地の惨状を見て、当初は途方に暮れました。いつになったら、がれきの山が片付くのやらと。もっとも最初は、膨大な避難者の生活支援で、先のことは考えられませんでした。それから、一つずつ片付けていったことを思い出しました。

首長さんの中には、お亡くなりなった方、引退された方も多いです。
あれから13年が経ちます。原発被災地では多くの地域で、まだ復興は緒に就いたばかりです。

追悼、五百旗頭真先生

五百旗頭真先生が亡くなられました。いくつかの報道機関から、発言を求められました。3月8日の朝日新聞では、少し取り上げられました。「五百旗頭さん、残した哲学 「創造的復興」被災者に光/批判すべきは批判
・・・神戸大名誉教授の政治学者で、東日本大震災復興構想会議議長や防衛大学校長を務めた五百旗頭真さんが6日、急性大動脈解離で死去した。80歳だった・・・
五百旗頭さんが復興に携わった被災地を中心に、悼む声が相次いだ。
2011年、東日本大震災の翌月に発足した復興構想会議。議長となった五百旗頭さんは「創造的復興」を掲げた・・・
・・・ともに10年近く復興行政に携わった岡本全勝・元復興庁事務次官は「政権内に防災・減災の哲学を植え付けた」と五百旗頭さんの功績を語った・・・

先生の復興に関しての功績は、復興構想会議提言で、戦後の災害復旧思想を転換してくださったことです。戦後の復旧・復興行政は、元に戻すこと、同じ災害での被害を防止することを基本としてきました。公共施設や住宅は元に戻します。防潮堤を復旧する際には、過去の最も大きな津波を防ぐことができる高さにしました。しかし、千年に一度の津波を防潮堤で防ごうとしたら、とんでもない大きさの防潮堤が必要になります。そこで、防潮堤と逃げるを組み合わせた復旧に転換したのです。防災から減災へです。それによって、高台移転や町のかさ上げを行いました。
これがなければ、東日本大震災からの復興は現地で意見が分かれ、混乱した可能性がある。その点では、復興哲学を転換したという大きな功績です。これは、住民の意見を聞く政治家も、官僚にも難しいことでした。

先生はまた、構想会議の提言をまとめるだけでなく、引き続き復興推進委員になって、その提言が実行されるか見届けてくださいました。何度も、現地を見ていただきました。多くの政府審議会は、提言して終わりが多いのですが、お目付役も果たしてくださいました。
ご冥福をお祈りします。