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行政-行政機構

公共工事、着工後の増額

2月21日の日経新聞が「公共工事の費用対効果、5割で悪化 着工後も増額頻発」を解説していました。
・・・国の公共工事の費用対効果が、着工後に悪化する事例が相次いでいる。道路やダムなど約1200事業(2010〜23年度)の5割で費用対効果指数が低下し、46事業(4%)で費用が効果を上回っていたことが分かった。費用を過少に設定したり、需要を過大に評価したりしていたケースがある。見積もりの精度を高めなければ、政策判断を誤る恐れがある・・・

「公共工事調べろ」端緒は官僚の一言 調査報道の舞台裏」(2月23日)には、この調査報道の過程が明かされています。
・・・公共工事ではまず発注者の国が工事費を見積もり「予定価格」を決める。その額を上限として競争入札を実施し、参加業者の「入札価格」などを考慮して、受注業者を決めるのがルールだ。
工事は受注業者の「落札価格」の範囲内で進む。だが近年、着工後に多額の増額が発生する公共工事が頻発していると官僚は明かした。

まず取り組んだのが全体像の把握だ。道路やダム、トンネル、河川――。国が発注する大型工事の計画当初と直近の事業費を比較できる資料があれば、増額の実態が分かるはずだ。
国土交通省の道路、水管理・国土保全、港湾の各局を訪ね、ホームページ(HP)で公表されていない資料の提供を求めた。粘り強く交渉した結果、提供されたデータの分析で判明したのは、物価高を上回る増額の多さだった・・・
・・・各地の地整局から届く開示文書を調べるうち、思わぬ発見があった。東日本大震災の復興工事で、競争入札や随意契約(随契)を経ず、既存の別工事に費用を上乗せする形で施工した工事が岩手県と福島県で計5件見つかった。
会計法は政府調達の競争性を確保するため、受注を希望する業者が広く参加できる競争入札を原則としている。なぜこのような契約が認められるのか。
発注者の東北地整局は取材に対し、復興支援道路の開通時期に間に合わせるため、やむを得ない措置だったと釈明した。だが、複数の専門家が「会計法令に抵触する可能性がある」と問題視した。緊急性のある場合など特定の業者と随契を結ぶ場合もあるが、別工事の受注業者に直接工事を依頼し、費用を別工事に上乗せする手法は異例だ・・・

・・・増額の頻発は公共工事の「費用対効果」も悪化させている。国の公共工事は、経済・安全効果を総費用で割った費用対効果指数が「1」をどれくらい上回るかが採択の判断材料となる。指数が高いほど価値のある事業とみなされる。
国交省の公表データをもとに、検証可能な約1200事業を調べると、5割の事業で指数が低下し、「1」を下回る事業も46件あった。指数が悪化した工事には、費用を過少に見積もったり、効果を過大に評価したりしていたものもある。本来、事業の要否を判断するための指標が「機能不全」に陥っていた・・・

確定申告書、日本語だけ

3月12日の朝日新聞夕刊に「確定申告、言葉の壁 マニュアルは5言語を用意、けど提出書類は日本語のみ」が載っていました。国際化はまだまだですね。

・・・外国人であっても日本国内で所得を得た場合は課税対象であり、確定申告を求められるケースもある。法務省によると、国内の在留外国人は2023年6月末現在、322万人超に達した。10年前の約1・6倍で、過去最高を更新した。
だが、確定申告書やe―Tax(国税電子申告・納税システム)は日本語版しかないという。一体、なぜなのか――。

国税庁に取材すると「予算の制約で他言語に対応するに至っていない」との回答だった。
申告書については、手書きの文字を自動で読み込むOCR(光学式文字読み取り装置)が外国語仕様ではないといった障壁もあるという。
同庁はホームページ上で提供する申告書作成コーナー用に、英語や中国語を含む5言語のマニュアルを用意。外国人が申告しやすい環境作りを進めているというが、申告書やe―Taxそのものの多言語化は現段階では検討されていないという。

国際税務に長く携わってきたゾンデルホフ&アインゼル税理士法人(東京)代表社員の永島寿夫税理士によると、以前は在日外国人の多くは日系企業や外資系企業の日本支社に勤めており、勤務先と契約した大手税理士法人に税務を任せてきた側面があった。「そもそも他言語の申告書のニーズがなかったのではないか」とみる・・・

生活保護基準額決定過程を明らかにしなかった

1月24日の朝日新聞に「生活保護減の決定過程、説明責任は 名古屋高裁判決、「ブラックボックス」と国を批判」が載っていました。

・・・生活保護の基準額を2013年から段階的に引き下げた国の決定を違法とした昨年11月の名古屋高裁判決は、異例の手法をとった国の決定過程を「ブラックボックス」と批判した・・・
・・・まず一つ目は、一般の低所得者世帯との均衡を図る「ゆがみ調整」だ。この調整は、専門家らが入る厚生労働省審議会の検証結果を踏まえたものだが、同省は独断で調整幅を一律に半分のみとする処理をした。この結果、基準を上げるべき世帯も十分に上がらず、全体で90億円分の保護費が削減された。さらに、こうした対応をしたことを、同省は国民や審議会の委員にも知らせていなかった。
判決は半分にすること自体は「厚労相の裁量権に属する」と認めた一方、専門家の検証結果を変更することは「非常に重要な政策判断」で、「明らかにして是非を問うことが必要不可欠」だったとする。
16年に北海道新聞が報じるまで3年以上、2分の1調整の事実が伏されていたことを「ブラックボックス」と表現し、「国民に知らされず、専門家も検証できなくされていた」と指摘。情報公開に後ろ向きな姿勢に対し、「国民や専門家からの批判を避けようとした可能性も十分に考えられる」とまで言及した。

二つ目の「説明不足」に挙げたのが、厚労省が独自指数をもとに、08~11年の物価下落分を反映させた「デフレ調整」(580億円分)。テレビやパソコンなど保護世帯では支出が低い品目も、同省は専門家に諮ることなく、一般世帯の消費支出をもとに下落率を算出。07~08年には物価が上昇していたが、そこは考慮せず、08年以降の物価下落だけを反映させていた。
判決は専門家の検証を経ないだけでは「過誤、欠落があると言えない」としつつ、その場合は「全体が具体的に説明されなければならない」と指摘。国は妥当性を主張したが、「判断の過程の全体が具体的に説明されているとは言えない」と認定した。
当時の厚労省担当者は口頭弁論で、役所の意思形成過程に関わるとして多くの証言を拒否した。判決は「ブラックボックスにしておいて、専門技術的知見があるから検討の結果を信用するよう主張することは許されない」と強調した・・・

客観的、公正性が、官僚の矜持だったのですが。これは、どうしたことでしょうか。役所の中のどの段階で、このような作業と非公表が決められたのでしょうか。

目標の設定されていない予算

11月29日の朝日新聞「膨張予算」は、「ずさんな目標「民間なら通らない」 水ぶくれの基金、見直し迫られる国」でした。

・・・水ぶくれする国の基金で、約190の事業のうち少なくとも43事業で、成果の数値目標がない実態が明らかになった。目標が明確でなければ、事業が失敗しても、見直されずに無駄遣いが続くことになる。有識者から改善を求める声が相次いでおり、国も見直しを迫られている。

10月のデジタル行財政改革会議で、家計簿アプリを運営するマネーフォワードグループの瀧俊雄執行役員は苦言を呈した。「民間であれば経営会議を通らない。血税をあてはめていいのか」
瀧氏が問題視したのは、「失敗を許容する」として、文部科学省が「ムーンショット型研究開発プログラム」の目標を設定していないことだ。ほかにも、不合理な理由を並べて、目標を設定しない事業が相次いでいる。
目立つのが「グリーンイノベーション基金」や「中小企業イノベーション創出推進基金」など、コロナ禍以降に新設されたもの。担当する経済産業省は「支援対象の採択が完了していないため」などとし、支援する案件を決めてから目標を設定する構えだ。
ただ、先に事業で何を目指すかを決め、達成するのに必要な予算を確保するのが本来あるべき順序だ・・・

予算を編成する担当者からすると、基金は予算規模を膨らますには、都合のよい手法です。そしてそれが使われないと、後に不用額となって歳入として使えます。これも、都合はよいのですが。必要なところに、必要なときに、必要な予算を配分するという原則とは異なる思想です。

政府予算、基金の問題。民間に丸投げ

朝日新聞が「膨張予算」という連載で、政府の基金を検証しています。さまざまな対策で基金が創られますが、使われずにいるものも多いのです。10月20日は「巨額の基金、企業が仕切る 官から運営委託、補助金審査も」で、もう一つの問題を分析してしいました。
役所が仕事を企業に丸投げすることで、能力が低下する問題についてはコメントライナー「役所にも人工知能がやってくる」で解説しました。

・・・経済対策の補助金などに使う国の基金が急増している問題で、主要な業務の大半を民間企業に委ねる基金事業が相次いでいることが分かった。公的機関だけで執行を担えないほど基金の規模が急拡大したためだ。補助金をどこに配るのかという政策的な判断が必要な業務も企業に委ねられ、中立性や公平性が問われる事業もある。

一度の補正予算としては過去最大の8・9兆円を基金に投じた2022年度の第2次補正の事業について、朝日新聞がお金の流れを各省庁の資料から分析した。その結果、予算計上された基金50事業計8・9兆円のうち、民間企業に補助金を配る事務局を委ねているものは8事業計3・9兆円分あった。
基金の多くは、独立行政法人や公益社団法人など公的機関が運営を担っている。一方で、8事業では、一般社団法人などがいったん基金の設置を引き受けたうえで、補助金の支給先を決める審査を含む業務の大半を、広告大手や民間シンクタンク、人材派遣会社に委ねていた・・・

・・・やむを得ず、この基金の実施を担う農林水産省以外の4省庁は、一般社団法人、低炭素投資促進機構に資金の管理を担当させ、審査の支援など業務の大半を野村総研などに外注することにした。機構の関係者はこう解説する。「うちには一切ベンチャー育成のノウハウが無い。だから、専門知識がある企業に実務をお願いせざるをえない」
経産省関係者によると、2020年度補正で新設した「中小企業等事業再構築促進基金」も、独立行政法人、中小企業基盤整備機構に運営を依頼したが、他の事業を新たに引き受けているとして断られた。結局、実務をパソナにほぼ「丸投げ」することで、機構が基金の設置に応じたという・・・