カテゴリー別アーカイブ: 行政機構

行政-行政機構

政策の検証

4月3日の日経新聞夕刊に「福島沖の洋上風力発電 撤去、消える復興の夢」が載っていました。
・・・東日本大震災から10年、この間おこなわれた「復興事業」のひとつに、福島沖洋上風力発電実証事業がある。目的は、世界初の複数基による浮体式洋上風力発電システムの安全性・信頼性・経済性を明らかにすること、福島沖での実証と事業化により風力発電関連産業の集積を期待することなど。
楢葉町沖合20キロメートルには3基の浮体式洋上風力発電施設と1基の変電機が設置された。ところが昨年12月、政府は不採算を理由に、設置した施設を2021年度に全て撤去すると決めた・・・

・・・では、肝心の技術開発はどうなったのか。事業は大手の重電・海洋・造船・素材メーカー、商社など10社、1大学からなるコンソーシアム(共同事業体)が請け負った。コンソーシアムのパンフレットには「東日本大震災の被害からの復興に向けて,再生可能エネルギーを中心とした新たな産業の集積・雇用の創出を行い、福島が風車産業の一大集積地となることを目指しています」とある。
だが、早くから機器の不具合や稼働率の低さが報じられていた。特に世界最大級の風車(7メガワット機)については、経産省が委託した専門家委員会が18年に「商用運転の実現は困難であり、早急に発電を停止し、撤去の準備を進めるべきだ」と提言した。残った2基も、実用化に向けて引き継ごうとする事業者はいなかった。
投じられた国費は約600億円。データは取れたというものの、県や自治体が切望した自然エネルギーも地元の雇用も産業も生み出すことなく、洋上風力は福島の海から姿を消そうとしている。洋上風力による復興という福島の大いなる夢を深い失望に変えて、事業にかかわった方々は今、どのような思いをお持ちなのだろうか。復興の文脈における事業の検証を望みたい・・・

この3基の風車は楢葉町の岬からよく見え、私も期待していました。残念です。新しい技術の開発ですから、失敗することもあるでしょう。でも、欧米ではたくさんの風力発電が稼働しています。日本を代表する企業が参加していても、こんなに簡単に失敗するのでしょうか。
600億円と聞くと、考え込みます。起きたことは仕方ないとして、何が原因だったのか、検証が必要です。

新型コロナ対策、自治体向け文書

新型コロナウイルス感染症対策で、国から自治体に次々と事務連絡が出されています。厚労省のホームページに、載っています。
自治体・医療機関向けの情報一覧(事務連絡等)(新型コロナウイルス感染症)2020年
自治体・医療機関向けの情報一覧(事務連絡等)(新型コロナウイルス感染症)2021年
すごい量です。どなたか、数を数えてもらえませんか。

ある人がこれを見て、「大変な仕事ですね」と感想を漏らしました。いえ、出す方も大変なのですが、受ける方はもっと大変なのです。
去年末に会ったある自治体幹部が、「届いた文書を積み上げると30センチを超えるでしょう」と笑っていました。「そうなると、読みませんわ」とも。
出す方も受ける方も、全体像を把握している人はいないのではないでしょうか。それも心配です。何らかの基準で、分類することが必要です。検索する際にも、大変でしょう。

しかも、地方財政関係の文書なら、受け手は、県庁の財政課と市町村課、市町村の財政課とはっきりしています。しかし、コロナ関連だと、自治体の受け手がどの課かわからないときもあると思います。そして、小さな村役場では、これを数人でやっています。もちろん、専門家はいないでしょう。

東日本大震災の当初に、被災者生活支援本部に、いろんな指示や依頼が来ました。それに対して「それを、いまあの県庁や市役所に行っても無駄です」と止めるのも、私の仕事でした。すべて受け止めると、職員が何人いても足りません。もちろん緊急を要する案件は直ちに対応し、そうでない案件は後回しにすると言うことです。

省庁再編から20年

1月6日で、省庁再編から20年が経ちます。新しい府省が発足したのが、2001年1月6日でした。省庁改革本部での体験を書いたのが「省庁改革の現場から」です。10年前には、次のように書いていました。「省庁再編10年」。その後、復興庁、出入国在留管理庁ができました。デジタル庁設置の作業が行われています。

かつては、5年か10年のうちには、もう一度、省庁再編(大規模なものでなく、見直し)が行われるだろうと、予測していました。いくつか小規模な変更は行われましたが、再編はありませんでした。
省庁再編には、膨大なエネルギーがかかります。それを提言し実行するだけの、理念が必要です。私は他方で、「国民生活省構想」を提起しています。「厚労省再編案」。1月6日の日経新聞は「くすぶる厚労省改革論 省庁再編20年、コロナ後に検証」を紹介しています。

また、省庁改革は、省庁再編だけでなく、内閣官房や内閣府の強化(政治主導の強化)、行政機能と組織の減量、独立行政法人制度の創設、政策評価と情報公開を含んでいました。いずれも、形としては達成しました。また定着しましたが、政治主導の強化は試行錯誤中でしょう。
さらに、省庁改革が目指したものは、「この国のかたち」の再構築でした。これは、まだまだでしょう。それを念頭に、連載「公共を創る」を書いています。

応援と受援をうまく機能させるには。コロナ、保健所の経験

10月20日の読売新聞、検証コロナ次への備え「「夜の街」防げなかった感染拡大」から。

・・・西村氏と小池知事らが打ち出した「感染対策3本柱」は始動からつまずいた。特に問題となったのが、「保健所機能の強化」だった。
都は7月20日、歌舞伎町を抱える新宿区保健所の支援拠点を区内の都施設に開設した。地域保健法に基づく正式な保健所ではないが、拠点は「第2保健所」と称され、多忙な区保健所に代わり、一部の陽性者の感染経路の追跡調査や健康観察を受け持つことになっていた。だが当初、現場の受け止めは冷ややかだった。

新宿区保健所の担当者は「100キロのスピードで走っている車に急に飛び乗ってきて、『運転を教えろ』というようなものだった」と振り返ったという。「区保健所が土日返上、平日も深夜まで忙殺されているのに、第2保健所の都職員は定時で帰っている」とのうわさも広がった。新宿区幹部は「区と都の連携がうまくいかなかったのは、どの業務をどれくらい引き継ぐべきか、双方がわからなかったことが理由だ」と話す。

厚労省も、都と連携して新宿区保健所の支援に当たることにしていたが、これも滞った。
複数の厚労省幹部は、都からの要望で保健師らを全国から集めたが、都が設置した「第2保健所」に行くと、「座る場所はない」と門前払いされたと証言する。保健師らは急きょ、埼玉県などに派遣された。
幹部の一人は「区の方からも『業務はパンク状態なので、(支援を受け入れるために)これ以上仕事を増やさないでほしい』と突き放された。『都や区とは二度と一緒に仕事したくない』と話す職員もいた」と明かす・・・

官庁の人材不足

10月9日の日経新聞「デジタル行政怠慢の20年」「手つかずの人材育成」から。

・・・新型コロナの第1波が日本を襲った4月上旬、民間から厚生労働省のクラスター対策班に加わった人がいる。ビッグデータ分析を手掛けるALBERT(アルベルト)の7人のデータサイエンティストたちだ。
通信会社の位置情報データなどを使い、人同士の接触頻度を分析するのが主な任務。臨時の国家公務員として班に合流した。

だが目にしたのは、データを分析する環境も人材もそろっていない驚きの光景だ。北海道大学や東北大学から参加した研究者や学生らは、各自が持ち込んだパソコンやモバイルルーターでインターネットに接続していた。作業体制の整備が最初の仕事だった。
「致命的な問題だった」と参加した中村一翔氏(33)が振り返るのが司令塔の不在。集めたデータをどう分析し、コロナ対応に生かすのか。データサイエンティストや研究者と意思疎通を図り、全体方針を決める存在が政府にいなかった・・・