カテゴリー別アーカイブ: 行政機構

行政-行政機構

圧倒的に少ない日本の公文書保存

7月6日の日経新聞夕刊「公文書管理 遅れる日本」に、諸外国との比較が、わかりやすい表になって載っています。

・・・公文書の分野では、所蔵量を書架の長さで比較する。日本は62キロメートル。米国の1400キロメートル、韓国、フランス、ドイツの300キロメートル台、英国の200キロメートルより圧倒的に少ない。日本は保存の歴史が短く、対象の範囲も狭い。
公文書を管理する機関の職員数も圧倒的に少ない。欧州諸国は500~600人台、米国は3000人超に上るが、日本は188人だ・・・

職員の少なさにも気になりますが、保管量の桁外れの少なさに驚きます。もちろん、この背後には、公文書を大切にしない官僚をはじめとする「意識」があります。

予防接種、副作用のある政策のジレンマ

6月16日の朝日新聞オピニオン欄、「ワクチン後進国」、中山哲夫・北里生命科学研究所特任教授の発言から。

・・・日本のワクチン開発は1980年代まで、それほど遅れてはいませんでした。しかし70年代以降、天然痘ワクチン後の脳炎など、予防接種後の死亡や障害が社会問題になりました。国がその責任や補償をめぐり争ったため、各地で集団訴訟が相次ぎ裁判は長期化。国に損害賠償を命じた92年の東京高裁判決などで決着したのですが、国は予防接種に消極的になり、ワクチン政策は約20年間止まりました。
多くのメディアが被害者の悲惨な状況を報道したこともあって、子どもにワクチンを受けさせないという考えも広がりました。
ワクチンは国に導入の意思がなければ開発が進みません。政府は開発のみならず、海外から導入することもしませんでした。防げる感染症を防ごうとしなかった厚生行政の責任は重いのです。

欧米では感染症の発生動向を監視し対策を講じるという政府の戦略が明確ですが、日本はその姿勢が貧弱です。例えばおたふく風邪は90年ごろ、ワクチンによる無菌性髄膜炎の副反応が問題となり、自己負担で受ける任意接種になりました。その結果、接種率が下がり、15、16年の2年間で少なくとも348人がおたふく風邪による難聴になりました。国の調査ではなく、日本耳鼻咽喉(いんこう)科学会による調査で明らかになったのです。
おたふく風邪ワクチンが定期接種となっていないのは、先進国では日本ぐらいです。ワクチンによる無菌性髄膜炎の発生率は、おたふく風邪による発生率の25分の1という研究報告もあります。ワクチンの効果と副反応についてメディアの理解を深め、市民に正しい知識を普及させるためにも、根拠となるデータが重要です・・・

6月15日の読売新聞は、解説欄で「子宮頸がんワクチン勧奨中止5年」で、同様の問題を取り上げていました。

副作用を伴うワクチン接種を進めるのか、やめるのか。難しい判断を迫られます。しかし、伝染病のワクチンは、多くの人が接種することで、流行を防ぐことができます。個人の自由にするだけでは、目的を達しないのです。
この点については、手塚洋輔著『戦後行政の構造とディレンマ-予防接種行政の変遷』(2010年、藤原書店)が詳しい分析をしています。「行政の決断と責任

予算偏重の時代錯誤

日本社会が大きく変わったのに、行政や国民の意識が変化していないことの一つが、予算偏重です。
かつては、モノとサービスを増やすことが、社会でも行政でも大きな目標でした。豊かになる、便利になるという「国家目標」を達成するために、先輩たちはがんばりました。電化製品、自動車、そして道路や学校、病院。そのおかげで、世界でも最高水準の豊かさと便利さを手に入れました。

一通りのモノが行き渡り、サービスの仕組みもできました。すると、モノとサービスを増やすことは、行政の第一の目標ではなくなったのです。
予算があれば、モノとサービスを増やすことができました。よって、予算を増やすことが官僚の身近な目標でした。その要求を査定する、財務省や財政課が権限を持ちました(私も官僚人生の3分の1は、予算や地方交付税を査定し配分することをしていました)。
社会の問題は、お金では解決できないことが多くなりました。

いまだにマスコミが、財務省を「最強の官庁」と呼ぶのも、時代錯誤でしょう。マスコミが、意識改革に遅れているように思えます。
国会でも、予算委員会が花形です。しかし、審議している国政の重要事項は、外交や安全保障、政治のあり方です。「予算委員会」という名称はそろそろやめてはどうでしょうか。いわゆる「党首討論」は、「国家基本政策委員会」という名称です。このような名前の方が、ふさわしいと思います。

企業の自治体協力

昨年12月に、福島県と三井住友海上火災保険が包括連携協定を結んだことを、取り上げました(2017年12月6日の記事)。
具体の取り組みが行われています。会社のホームページをごらんください。
東京の地下鉄、新御茶ノ水駅(三井住友海上本社ビルに通じる)地下道にある大型電子看板(デジタルサイネージ)で、ふくしまの希望を描くショート・ミュージカル・ムービー「MIRAI2061」が投影されています。

福島県庁の企業との連携事例

雑誌『行政法研究』

宇賀克也責任編集『行政法研究』第20号(2017年10月、信山社)を紹介します。
第20号は、「行政法の課題」です。現在の行政法学の課題を、それぞれ第一人者が解説しています。目次を見るだけで、そして冒頭の宇賀先生による概要紹介(はしがき)を読むだけで、現状が分かります。
行政法の世界も、社会の変化にしたがって、どんどん変わっていきます。教科書では追いつけません。何が問題になっていて、どのような考え方になっているのか。それを知るために、このような概括は便利で、ありがたいです。

この雑誌は、宇賀先生が編集者になって、2012年から発行されている論文誌です。この号で、20号になります。
フランスなどでは、有力な研究者が編集者になって、雑誌を編集することが多いようです。宇賀先生のこの雑誌も、そのような試みでしょうか。
社会科学系の研究者が論文を発表するには、ジュリストのような商業雑誌、学会の機関誌もありますが、それぞれ制約があります。このような雑誌は、良いことですよね。もっとも、商業的には成り立ちにくいでしょうし、編集担当の先生にも大きな負担がかかるでしょう。
信山社からは、その他の分野、環境法、社会保障法、消費者法などの論文誌も出ているようです。