カテゴリー別アーカイブ: 経済

経済

暗い予測はできても対応できない

5月18日の朝日新聞オピニオン欄に、沼上幹教授が、「特需の向こう側、予測段階での危機管理が必要」を書いておられました。家電エコポイント制度と地上波デジタルへの移行という2つの政策が、家電量販店と家電メーカーに与えた影響です。この政策によって、テレビがよく売れました。しかし、それが終了すると、極端に売れなくなり、量販店は大幅な減益、メーカーは巨大な固定設備を持っているのでさらに悲惨で、大赤字になっています。
・・この種の急激なアップダウンは、ある程度予測されていたからである。それなのに、どうしてこれほど対応時期が遅れるのだろうか。実際、地上波デジタル移行やエコポイント終了の時期などは、ある日突然決まるのではなく、事前に公表されている。しかも、この政策の結果として需要が先食いされ、2012年には需要が急減し、その後も低迷する期間が続くから、「地デジへの移行期間までが勝負だ」という考え方も広く知られていた。
だが、実際の企業の対応はかなり後ろにずれ込んできたように見える。すでに昨年8月からはテレビ売り場で閑古鳥が鳴いていたのに、家電量販店がテレビ主体の売り場づくりからの脱却を本格化し始めたのは、つい最近のことである・・
うーん、これは、危機管理というべき話ではないかもしれません。

日本企業人材の国際化

4月30日の日経新聞オピニオン欄「グローバルオピニオン」は、スイスIMD学長のドミニク・テュルパン氏の「日本企業に多様性必要」でした。IMDは、世界各国の競争力ランキングを発表することで有名です。
・・長年日本をウオッチしてきた私にとって、日本企業に元気のない現状はとても残念だ。世界経済が大きく姿を変えつつあるなかで、日本企業はうまく対応できていない。あるいは日本の社会そのものも、豊かさを達成したことに満足し、以前は旺盛だった外への関心を失っていると思う。
日本企業の弱点は、多様性の欠如だ・・
・・日本には昔からジョブローテーションという優れた仕組みがあり、自分の専門の分野だけでなく幅広い業務を経験させることに熱心だった。自動車会社のエンジニアなら、エンジンの開発ばかりではなく、生産なども経験することで視野を広げ、タコつぼ化を避ける狙いだ。
だが、世界のさまざまな市場を渡り歩かせて、キャリアを積ませるネスレ型のグローバルローテーションはほとんど実践されていない。グローバル人材は、一朝一夕には養成できない。長期を見すえたブレのない取組が必要だ・・

外国人が日本で買っていく物

外国人観光客が、日本で買っていく物はなんだと思いますか。日経新聞電子版の「映像ニュース」が伝えていました。「映像ニュース」の「話題・特集」から、「秋葉原で外国人に人気の商品」(前編)(後編)をご覧ください。
かつて日本人のヨーロッパ旅行の土産は、お酒、たばこ、チョコレートでした。その後、ブランドものの鞄やネクタイ、時計などに変わりました。アジアの人たちが日本で買っていく物には、意外なものがあります。
あなたなら、外国からのお客さんに何を勧めますか。私は文化的なものだと、東京国立博物館のミュージアムショップが、外国の方におもしろいのではないかと、紹介していました。他には、スーパーマーケット、ドラッグストア、文房具店などが、日本人の現在の暮らしを見てもらえるので、お勧めかなと思っています。
「これぞ日本だ」というものが思い浮かびませんが、和菓子屋さんも良いですよね。もっとも、生菓子は持ち帰ることはできませんが。

海外で売れるクールな日本製品

5月2日の日経新聞「会社研究」は、三菱鉛筆を取り上げていました。
デジタル製品が次々と進化する中、地味に見える鉛筆やボールペンですが。連結売上高の4割を、海外で稼いでいるとのこと。握る部分にゲル状のバンドを巻き書きやすくしたボールペン「ユニ アルファゲル」は、韓国で売れています。福岡県の免税店で、韓国人観光客がこのペンを大量に買うようになりました。価格は、韓国の一般的なペンの5倍するそうですが、日本製のペンをクール(格好いい)と見る学生に人気が広がったそうです。このHPでは、なめらかなボールペンの「ジェットストリーム」を紹介したことがあります(2011年6月26日)。
もっとも、新興国では、フランスのBICが先行しています。

努力と付加価値の違い

3月16日の朝日新聞「沼上幹の組織の読み筋」から。
半導体のDRAM製造で世界第3位のエルピーダメモリが、経営破綻したことを取り上げて。
・・つい1年前に1個2ドルだったパソコン用2ギガビットのDRAMが、昨年11月には70~80セントにまで低下した。円にすると60円くらいという感覚だろうか。
「最先端の技術を使っているのに、おにぎり半分の値段にしかならない」。エルピーダの坂本幸雄社長もこう嘆く。国内の最優秀層の人材を投入し、しかもその優秀な技術者たちが人一倍精力的に日夜知恵を絞って「付加価値」を生んできたつもりなのに、その血と汗と涙の行き着いた先が「おにぎり半分」なのである。このやるせなさを経験すると、「ハイテクになるほどもうからないのだ」とぼやきたくもなる。
しかし、当たり前のことだが、もうかるかどうかは、製品に盛り込まれた技術が高度か否かで決まるのではない。自社以外に、同等品を提供できる会社が何社あるかで決まっている。たとえ盛り込まれている技術が高度であっても、同じくらい高度な知識を製品に盛り込める会社が世界中に何社も存在するなら、残念ながら利益は手に入らない。
・・「付加価値」は、自分が努力した量に基づいて判断するものではなく、買い手の立場に立って自分がどれほど取り換えのきかない存在なのか、自分がいなくなったらどれほど周りが困るか、という観点から考えなければならない・・
冷酷ですが、その通りですね。行政組織も、いえ、私たちサラリーマン個人も、同じです。