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社会と政治

殺人事件の減少、自殺の増加

今朝の読売新聞が、昨年の殺人事件が戦後最小になったことを、分析していました。2009年中に全国で起きた殺人事件(未遂を含む)は、警察の調べで1,097件で、戦後最小でした。最も多かったのは1954年で、3,081件ですから、3分の1になっています。その後、減少を続け、1990年代から1,300件前後でした。それが、さらに減ったのです。
私たちは、凶悪犯がニュースになると、治安が悪化したと感じますが、実際はそうではないのですね。
その原因です。1985年と比べると、職場関係が104件から61件に、知人友人が317件から254件に減っています。身近な人間同士が加害者被害者になる場合が、減っているのです。また、怨恨も、466件から194件に激減しています。「他人と深く付き合うことが少なくなったのではないか」と、記事は分析しています。
他方で、子が親を殺した事件が、40件から121件になっています。介護疲れのようです。幼児虐待も、増えているのではないでしょうか。
しかし、昨年の自殺は32,753人で、前年より504人も増え、12年連続で3万人を超えています。大まかに言って、千人の人が殺人事件に遭い、5千人が交通事故で死に、3万人が自殺しています。1日に直すと、3人が殺され、13人が交通16事故で死に、80人が自殺しています。やはり衝撃的です。

人を動かす3つの方法

他人や他国を動かす、当方の都合のよい方向に動かすには、大きく分けて次の3つがあります。個人の場合は「人を動かす」であり、国家の場合は「ハード・パワーやソフト・パワー」の議論になります。
1 力ずくでやらせる。腕力や武力に訴える。
2 お金や、ほうびを上げる。
3 信じさせる。あこがれや、そうすることがルールだとか良いことだと、信じ込ませるのです。
1はコストがかかり、こちらも痛い目に遭うことがあります。また、恨みを買う場合があります。2は1に比べ粗野ではありませんが、やはりコストがかかります。そして、しばしば、金の切れ目が縁の切れ目になります。
3は言葉で動かすので、もっともコストがかかりません。相手が自発的に行動してくれるので、恨みを買うこともありません。文化的あこがれ、国際標準、恋愛、宗教・・・。

ジャパン・アズ・ナンバーツー

先日、朝日新聞の連載「ジャパン・アズ・No.3 日中GDP逆転へ」を紹介しました。私は、この連載はよい企画だと思いましたが、標題には疑問を持ちました。
引用しましたが、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を書かれた、エズラ・ボーゲル教授は、次のように発言しておられます。
「僕がナンバーワンと言ったのは、経済が一番大きいという意味ではなかった。日本は義務教育の水準、会社への忠誠心、長寿であることなど多くの点で世界一で、その日本から米国は学ぶべきところがあるという意味だった・・」
日本がGDPで世界第2位は、1968年から約40年間続きました。でもその間に、日本は「ジャパン・アズ・ナンバーツー」だったでしょうか。経済力が世界第2位であることと、国際社会で「第2位」の地位を占めることとは、別物です(もし、そのような順位がつくとすればですが)。
この記事の、GDPが世界第3位になると、「No.3」であるとも読める標題の付け方は、依然として、経済力で自分の姿を測る考え方でしょう。
敗戦から立ち直った日本が、23年で、世界第2位の経済力を持ったことは、素直に喜んで良いでしょう。またそれを40年間も続けたことは、評価して良いでしょう。
しかし、国際社会で中心的な地位を占める、あるいは尊敬されるためには、軍事力や経済力が強いだけではだめです。世界の秩序(政治・経済・文化)をつくる際の影響力の大きさが、一つの基準でしょう。それには、他国からあこがれをもたれる存在であること、また国際社会での発言権と責任が必要です。日本は、世界に対し、どれだけのことを貢献し、発信したのでしょうか。
また、この記事に関連してですが、「G2」という言葉を、聞くようになりました。中国が力をつけてきたので、世界がアメリカと中国の2つの超大国を中心に動くという考え方のようです。しかし、これも、経済力が大きければ、国際社会の中心になるという発想だとすれば、短絡的ですね。

ジャパン・アズ・ナンバースリー

(ジャパン・アズ・ナンバースリー)
朝日新聞は、「ジャパン・アズ・No.3 日中GDP逆転へ」を連載しています。13日は、エズラ・ボーゲル教授でした。ベストセラーになった「ジャパン・アズ・ナンバーワン」(1979年)の著者です。
・・僕がナンバーワンと言ったのは、経済が一番大きいという意味ではなかった。日本は義務教育の水準、会社への忠誠心、長寿であることなど多くの点で世界一で、その日本から米国は学ぶべきところがあるという意味だった・・
「日本社会もナンバー3ですか」という質問に対しては、
社会構造で順位をつけるつもりはないが、55年体制はかつては適切で、30~40年間は非常にうまくいった。政治家は高度成長という方向性を打ち出して重工業の拡大に力を入れ、官庁は外国からの知識を得て政策に生かした・・しかし、2000年以降は、その取り組みも適切でなくなった。世界の変化とともにサービス産業に力を入れる必要があったが、日本ではサービス産業の保護を続け、自由に競争できる産業をつくらなかった・・
・・日本には競争力があるサービス産業や、高度な技術が必要だ。しかし、そのもとになる国際競争力のある大学が日本には少ない。大学教育に、会話力を含めた英語教育が足りないからだ。国際的に一流の人間を集めるためには、英語が必要だ・・
・・最近、日本人は内向きになり、海外にも行かなくなった。50~70年代は日本人は海外で懸命に学んだ。今は国内での生活に満足しているし「海外に行かなくてもだいたいわかる」という気持ちもあるのだろう。しかし、日本の将来を考えると、もう少し元気を出し、困難でも海外で挑戦するような精神が必要だ・・
日本はまだ覚えるために勉強している・・想像力とか、新しいものを発見する精神が足りない。子どもたちは、塾と学校の両方に行って夜まで同じことを繰り返し、能率が悪い・・
・・僕の本も悪い影響を及ぼしたかもしれない(笑い)。・・日本は80年代半ばごろから満足し、十分に勉強していない・・(この項つづく)