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行政-災害復興

被災地企業と大手企業支援とをつなぐお見合いの場「結の場」

1月11日の読売新聞「大震災 再生の歩み」は、「結の場」(ゆいのば)でした。
・・・東日本大震災の被災地の企業と、首都圏などの大手企業が手を組み、新たなビジネスが生まれている。出会いのきっかけを作ったのは、復興庁主催の相談会「結の場」。経営課題を抱える被災地企業と、課題解決のノウハウを持つ大手をつなぐ、いわば”お見合い”の場だ・・・
という書き出しで、岩手県大船渡市の木工品・職員製造会社「バンザイ・ファクトリー」が富士通の助言で作った「香るiPhonケース」などの実例が紹介されています。

結の場については、復興庁ホームページ「結の場」をご覧ください。仕組みとともに、これまでの実績も載っています。

復興の3要素、その3

復興の3要素、その2」の続きです。
復興に携わって、これらの施策をどのように整理するのがよいか、どのように説明すると皆さんに分かってもらえるかを、職員と考えました。そして作ったのが、この表です。この3分類は、復興庁の施策体系でも採用しています。

「1インフラ・住宅の再建」がモノの復旧であり、お金と工事技術があればできるのに対し、あとの2つは、様相が違いました。それを、どのように表現したらよいかを、考えたのです。
施設設備が復旧しても、それだけでは、産業やなりわいが復旧したことにならないのです。小売りやサービスが再開されないと、また働く場所が戻らないと、復旧したことになりません。これまで政府も自治体も長年にわたり地域振興施策を続けてきました。しかし、施設設備への補助金だけでは成功しなかったのは、それが理由です。モノでなく機能が再建されなければなりません。そして、継続、持続する必要があるのです。その点で、施設設備は「容易」です。お金と技術があれば作ることができます。
コミュニティの再建は、もっと難しいです。モノでも機能でもなく、住民のつながりであり、それが持続しなければなりません。補助金でできるものではありません。産業なりわいの「機能」の再建は、お金や技術で支援することができますが、住民のつながり維持は、お金と技術では限界があります。

要約すると、次の通りです。
インフラ再建は、モノの復旧であり、お金でできました。そして、公共施設は国や自治体のものでした。技術も経験もありました。
産業・なりわいの再生は、機能の再生であり、主体は事業主でした。これまでは、事業主に任せていました。施設設備への補助金だけでは、機能は復旧しませんでした。
コミュニティの再建は、つながりの再建であり、主体は住民でした。これまでは、住民任せでした。再建支援は、手探りで行いました。

歴史的には、つい最近まで、私有財産の災害復旧には、公費を投入しませんでした。個人の住宅再建に公費を出す「生活再建支援金」の法律ができたのは、2008年です。産業・なりわいの再生とコミュニティの再建に国が乗り出したのは、東日本大震災からです。それは「まちのにぎわいの復興に必要な3要素」図の右端に書いておきました。

このように図にすると、個別の施策の位置づけが明確になります。目的、主体、手法なども、明確です。この表で、各施策を管理すると、何ができていて、何が不足しているかも分かります。
なかなか良くできた整理だと、自負しています。大学での公共政策論の講義でも、これを活用しています。もちろん、わかりやすくするために大胆な分類にしてありますから、すべてをきれいに整理できるわけではありません。
私はこのように、簡単な表にするのが好きです。というか、それも幹部の役割でしょう。例えば、麻生内閣でも、主な政策体系を図にしました。

復興の3要素、その2

復興の3要素、その1」の続きです。
その後、「1インフラ・住宅の再建」は順調に進みました。国土交通省、自治体などの管理の下で、建設業者が住宅再建や道路・堤防の復旧を進めてくれました。

3コミュニティの再建」は、仮設住宅での見守りから、住宅再建が進むと、恒久住宅での孤立防止に課題が変わりました。新しい町や集合住宅では、町内会がないのです。そこで、「コミュニティの形成」(町内会の形成)を、支援内容に加えました。図の左下の枠内。これは、既存の省庁で担当する役所はありませんでした。現在も、復興庁が担っています。

2産業・なりわいの再生」は、水産加工場では施設設備が復旧したのに、売り上げが回復しませんでした。商店の棚を別の産地に奪われていたのです。売り上げを伸ばすにはどうしたらよいか。より品質の良いものをつくり、売り込まなければなりません。それは、補助金でできるものではありません。大企業などのノウハウを借りることにしました。図の右側。これは、民間から来てくれた復興庁職員が考えてくれました。

このように、地域の暮らしやにぎわいを取り戻すには、「1インフラ・住宅の再建」だけではダメで、「2産業・なりわいの再生」や「3コミュニティの再建」が必要だったのです。住民、地域共同体、事業主に任せず、国や自治体が支援することに手を広げました。さらにいま述べたように、あとの2つは時間とともに課題が変化し、対応を追加しました。
この項続く

復興の3要素、その1

被災者の私有財産への公費投入」の続きにもなります。著作や講演で使っている図を更新しました。
東日本大震災の復興に携わって、何が必要かを考えた際に整理した図です。

 

 

 

 

 

 

 

 

「1インフラ・住宅の再建」は、皆さんもおわかりでしょう。私は当初、これを復旧すれば、大震災からの復興は終わると思っていました。
しかし、現地に行くと、まず孤立防止が課題になりました。これは従来は、地域での助け合いに任せていました。しかし、それではうまくいかないことが、阪神・淡路大震災でわかりました。そこで、「3コミュニティの再建」のうち「見守り」が行政の仕事になったのです(この時点では、まだコミュニティの再建ではありませんでした)。
担当する省庁がないので、被災者支援本部、復興庁が担いました。実施は、自治体を通じて、NPOなどにお願いしました。

次に、津波被災地では商店が流されて、買い物ができませんでした。従来は商工業の復旧は、事業主に任せていました。政府がやったのは低利融資です。日本は自由主義・資本主義国ですから。しかし、現地は放っておくと、商業の再開は見込めませんでした。近くの町も、お店は流されています。住民は、ものを買うことができないのです。これでは、暮らしは戻りません。阪神・淡路大震災との違いです。そこで、仮設店舗の無料提供を始めました。これが、「2産業・なりわいの再生」です。
また、商工業を復旧してもらうために、グループ補助金をつくって、施設設備の復旧に公費を投入しました。これも、初めてのことです。それぞれ、経済産業省がつくってくれました。
さらに、この表には出ていませんが、二重ローン対策もつくりました。新しく工場や商店をつくるには、借金が必要です。その前に、流された土地や建物を担保に借りた借金が残っています。返し終わっていない借金の上に、もう一つ借金をしなければならないのです。
この項続く

平成30年の回顧1、復興

年末になったので、今年の回顧を始めましょう。
まず、第1回は、復興についてです。引き続き、内閣官房参与、福島復興再生総局事務局長として、大震災からの復興に関与しています。

被災地では、復興が着実に進んでいます。いくつかの町で、復興工事は完了しています。「復興の状況
津波被災地では住宅再建が9割以上終わり、多くの人が仮設住宅から恒久的な住まいに移っています。とはいえ、8年は長かったと思います。発災直後の47万人(推計)から、5万4千人にまで減りました。「避難者数の推移

あと2年3か月で、発災から10年になります。復興創生期間が終わり、一つの区切りとなります。復興庁も、10年の時限組織です。次に向けて、被災地域の復興状況を調べ、自治体に何が残っているかを聞き取りました。
地震・津波被災地域は、生活インフラの復旧はほぼ完了し、総仕上げの段階です。 被災者の見守りや心のケア、コミュニティの形成は、なお対応が必要です。
原子力災害被災地域は、中長期的対応が必要であり、今後も継続して取り組む必要があります。

東北復興新聞に、復興についての私の考えを簡潔にまとめました。ご覧ください。「復興庁は何をしたのか。元事務次官が語る国の”責任”」(2018年4月18日)
その2へ続く。