カテゴリー別アーカイブ: 政治の役割

行政-政治の役割

保険料+税金で成り立っている社会保障

10月8日の日経新聞オピニオン欄、大林尚・上級論説委員の「「消費税こわい」偏る負担 社会保障、現役もう限界」に、わかりやすい図が載っていました。

「主な社会保障制度の財源構成」です。生活保護、基礎年金、国民健康保険、後期高齢者医療制度、介護保険、協会けんぽ、健保組合、厚生年金です。
このうち、健保組合と厚生年金は全額保険料でまかなっていますが、その他の制度には、国費と自治体負担が入っています。生活保護は全額が公費、基礎年金・国民健康保険・後期高齢者医療制度介護保険は、半分が公費です。この公費は、税金です。
皆さん、ぼんやりとはわかっているのですが、このような図で示されると、わかりやすいですね。

大林さんの原文は、今後も増え続けることが予想されるこれら社会保障費の、財源をどうするのかを問うています。
次のような記述もあります。
・・・増税に真っ向から挑んだのは与謝野馨氏。2009年、麻生政権の経財・財務相として改正所得税法案の国会審議の矢面に立った。付則にこう書かれていた。「消費税を含む税制の抜本改革を行うため11年度までに法制上の措置を講ずる」。増税の法定期限を区切った法案を賛成多数で成立させた自民党は、その年の衆院選に大敗し野に下った・・・
私は、総理秘書官として、その現場に立ち会いました。

自由貿易への反発は、国内問題から

10月5日の日経新聞オピニオン欄、パスカル・ラミー前WTO事務局長の「自由貿易の土台 まず国内から」から。

・・・米欧で自由貿易への反発が広がるのはなぜか。痛みを感じる弱者が適切に扱われていないからだ。グローバル化の勢いが増す一方で、弱者を救済する社会システムが衰えている。ポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭は、国内の問題に原因がある。
だから保護主義を封じ込めるには、求められる努力の80%程度を国内に向けなければならない。労働市場や失業保険、年金・医療などの問題を解決する必要がある。これらは世界貿易機関(WTO)が取り組む課題ではない。

残りの20%は国際的な努力だ。貿易自由化のルールブックを更新せざるを得ない。先進国は互恵的な自由貿易を志向し、途上国には非対称性や柔軟性を認めるというのが、WTOの方針だった。だが貧しい国民が多い先進国もあれば、豊かな国民が多い途上国もある。いまの二分法が正しいかどうかを検証すべきだろう・・・

原文をお読みください。

高岡望さんの新著『グローバリズム後の世界では何が起こるのか』

高岡望さんの新著『グローバリズム後の世界では何が起こるのか』(2018年、大和書房)を紹介します。すばらしい切れ味の分析です。国際政治、国際秩序、そして学者や私たちが考えていた理想の世界像が大転換していることを、極めて明晰に分析しています。

アラブの春の勃発、イギリスのEU離脱、ヨーロッパ各国でのポピュリズムの台頭、そしてアメリカでのトランプ大統領の誕生。私たちにとって想定外の出来事が続きます。
「そもそも想定が間違っていたのでしょうか。そうであれば、なにか世界情勢を見通す指針のようなものが、見つからないのでしょうか。この本は、そんな思いにこたえるために著したものです。」(本書p1)

私も、大学で学んで以来、世界は経済発展し、相互依存を強め、多少の行きつ戻りつはあっても、国際統合に進むものと考えていました。その際の推進役は、アメリカ、西欧、日本であり、経済成長と国際貿易と政治哲学だと思っていました。イギリスのEU離脱、ポピュリズム、トランプ大統領は、大きな歴史の流れでは「困ったエピソード」と考えていました。でも、この本を読んで、そうではないと思うようになりました。

筆者は、「世界政治のルールが、20世紀型から21世紀型に変わってしまったのだ」と考えます。そして次のような仮説を立て、4つの地域の将来を予想します。
1 世界全体が21世紀に入り、百年に一度の大転換を迎えた。
2 大転換後の21世紀には、グローバリズムに対抗して、世界各地でナショナリズムが復活し、盛り上がる。

4大地域の将来予想は、次の通りです。
1 アメリカの分断は深まるのか
2 ヨーロッパの将来はどうなるのか
3 中東の混乱は続くのか
4 中国の夢は実現するのか

IT産業や金融の発展とグローバリズムが、世界経済を発展させました。ところが、困ったことに、その恩恵は一部の大金持ちに集中し、これまでの経済と社会ひいては民主主義を支えていた中間層が貧しくなったのです。経済の発展は国民を豊かにし、社会を安定させるという「法則」が成り立たなくなりました。そして、彼らが、グローバリズムに反旗を翻したのです。
この説に立つと、各国での社会分裂、ナショナリズムはさらに進行し、政治が不安定になるとともに、国際化は停滞するでしょう。

紀伊國屋新宿本店でも売れ筋新刊コーナーに山積みされ、私の近所の町の本屋さんにも並んでいました。それだけ反響が大きいということでしょう。

高岡さんは外交官で、これまで、アメリカ、イギリス、イタリア、スウェーデン、エジプト、イランでの経験があります。その体験と、深い洞察力とで、できあがった本です。
イギリス・エディンバラ総領事として、先日旅立って行かれました。彼の地での活躍を期待しています。

麻生内閣発足から10年

2008年9月24日に、麻生太郎内閣が発足しました。あれから、10年が経ちます。内閣の簡単な記録は、総理官邸のホームページで見ることができます。
私は、総理秘書官に就任しました。その数日の私の動きは、日経新聞夕刊コラム「いつ寝るか」に書きました。緊張する、充実した時間でした。

時間がたつのは、早いですね。私はその後、東日本大震災の対応に呼び出され、7年半にわたってその仕事をしています。
政権は民主党へ、そして自公連立政権へと再交代があり、安倍内閣が6年続いています。

リーマン・ショックから10年3

リーマン・ショックから10年2」の続きです。当時、麻生総理が国際的にリーダーシップを発揮したことに、もう一つ、中国への働きかけがあります。

ちょうどその時期に、北京で国際会議があり、胡錦濤・国家主席や温家宝・首相と会談しました。会食の際、麻生総理と胡主席が熱心に話しておられました。また、温家宝首相とも、話し込まれました。内容は、この経済危機にどのように対応するかでした。
当時、日本は世界第2位、中国は第3位の経済大国でした。アメリカやヨーロッパが機敏な対応ができないので、日本と中国が財政出動して、景気後退を食い止めようということです。
中国はその後、大規模な景気刺激策をとるとともに、日本と同様に1000億ドルを国際通貨基金(IMF)に融資することを決めました。

100年に一度と言われる国際金融・経済危機。それに対し、各国が協力して封じ込める対策を打つ。
1929年の大恐慌の際は、各国が自国の利益優先で囲い込みに走りました。それが、経済危機をさらに深くしました。今回は、その経験を踏まえて、各国が協調し、危機を押さえ込んだのです。
その現場に立ち会い、政治の役割を認識する、貴重な経験でした。