カテゴリー別アーカイブ: 政治の役割

行政-政治の役割

リベラルの任務

朝日新聞10月13日「2017衆院選 リベラルとは」、坂野潤治・東大名誉教授の「「民主化」「中道」こそ、目指した道」から。
・・・「歴史を踏まえて言葉の意味が変わっていくのは当然だ」としながらも、坂野さんは、戦後リベラルが社会の民主化を進めるという方向性を忘れているのではないかと懸念する。戦後民主主義は、憲法9条に象徴される平和主義を守ったかもしれないが、格差是正や多様性の尊重など、民主主義の課題にきちんと向き合ってきたかという問いかけでもある。
「海外に目を向けると、雇用が不安定な若者ら従来の政治ではすくい取れなかった人たちを吸引する勢力が出てきている。米国の民主党のサンダース上院議員や英国の労働党のコービン党首らがそうだ。だが日本の政党や政治家の動きは鈍いと思う」
「日本の政党政治が9条堅持か否かといった戦後民主主義をめぐる対立に終始するなら、政治と社会との乖離(かいり)が進んでしまう。今回の選挙の結果、仮に安倍1強政治が終わったとしても、この対立が続くだけなら意味がない。リベラル勢力に課された問題だ」・・・

砂原教授の本と論文紹介

砂原庸介教授の著書と論文が、先週末の新聞各紙の論壇時評と読書欄で紹介されていました。9月28日朝日新聞の論壇時評(小熊英二さん)、9月30日日経新聞の論壇時評(土居丈朗さん)、10月1日の読売新聞読書欄(奈良岡聰智さん)です。すごいですね。

著書『分裂と統合の日本政治ー統治機構改革と政党システムの変容』(2017年、千倉書房)は、このページ(2017年7月9日)でも紹介しました。国政と地方政治の関係、その不十分さを指摘したものです。日本の政治のあり方を考える際に、忘れられている視点だと思います。

ドイツ、一国潔癖主義

朝日新聞オピニオン欄9月27日「求められるドイツ」、ヤン・テッハウ(ドイツのシンクタンク所長)の発言から。
・・・戦後西ドイツの国家目標は、国際社会への復帰、東西ドイツの統一、経済の再建、そして戦争を二度と起こさないことでした。ドイツは半世紀かけ、これらの目標をすべて達成したのです。
その要因は、戦後一貫してドイツの国際政治を特徴付ける「戦略性の欠如」です。「国益」を考えないこと、と言い換えてもいい。国際社会の厳しい現実に目を向けずに済んでいたのです。
戦後の国際社会にとっての「ドイツ戦略」は、隣国を攻撃させないこと、欧州共同体(EC)など西欧の枠組みに組み込むことでした。ドイツの国益を考えない「控えめさ」が、「国際社会復帰」という国益をたまたまもたらしたのです・・・

・・・では、どうしてドイツはこうした「政治的戦略」に疎かったのか。
ドイツは、2度の世界大戦での敗北から「歴史的に間違った側に立ちたくない」という意識が強い。加えて、国土が何度も戦場になってきた。三十年戦争(1618~48年)もその一つ。そして、西ドイツ時代は主権が制限され、安全保障は米国任せ。外交は「欧州を大事にする」と言っていればよかった。だから「一国潔癖主義」に閉じこもっていられたのです。
そうした時代は終わりを告げようとしています。第一に、ドイツは経済的に指導力を持ち、その発揮を欧州も望んでいる。トランプ政権が生まれ、米国の欧州への関与も関心も減るでしょう。これからは、ドイツ人が避けてきた地政学を学び、「戦略」を見定めなければなりません・・・

戦前の膨張主義と敗戦を経験して、戦後日本は、一国平和主義、一国繁栄主義に閉じこもっていました。その日本にとって、ドイツはお手本、あるいは鏡です。
もちろん、ヨーロッパの情勢とアジアの情勢とは、異なります。

メルケル首相、大きなビジョンでなく危機管理

朝日新聞オピニオン欄9月20日の「ドイツ安定の理由」、ラルフ・ボルマンさん(ドイツのジャーナリスト)の発言から。
・・・20世紀前半に大きなカオスを経験したドイツ人にとって、「安定」こそが何よりも重要な価値観です。歴代の首相をみても、戦後初代のアデナウアーが14年、東西ドイツの統一を成し遂げたコールが16年。メルケル首相もすでに就任以来12年になります。
中でもメルケルは「安定」を擬人化したような人物です。金融危機のような混乱にあってもいつも冷静で、国民を安心させる。欧米諸国や旧西独出身の政治家たちは「世界の経済システムが崩壊する」とパニックになりましたが、メルケルは「世界の終わりではない」と言わんばかり。あわてて財政拡大に解決策を見いださず、長期的に何が良いのか、答えが出るまでじっくりと待ちました・・・

・・・彼女は、理想主義者なのか現実主義者なのか、という問いを受けますが、彼女にとってそれは同じことなのです。答えは彼女が愛読する英国の哲学者カール・ポパーの考え方にあります。自由と民主主義をとても大切に考えていますが、その社会では、すべての価値観は相対化されうる。すべての理念は、トライ&エラーのシステムによって検証され続けなければならないという考え方です。脱原発や同性婚の合法化をめぐる態度の変化も、彼女なりの検証の結果なのでしょう。
確かに彼女には、コールに見られたような壮大な「ビジョン」はありませんが、今の時代にビジョンは必要なのでしょうか? むしろ、危機をマネジメントすることによって存在感を増していったという意味で、1970年代の首相シュミットに似ているのかもしれません。
近年、世界をポピュリズムが席巻し、民主主義の危機が叫ばれています。世界が破滅的な状況になるのを防ぐ危機管理能力こそが求められている気がします・・・

トランプ大統領の効果、欧州共同防衛構想

8月28日の読売新聞コラム「地球を読む」は、ジョセフ・ナイ氏の「欧州のトランプ観 不人気だがよい大統領」でした。詳しくは原文を読んでいただくとして。
トランプ大統領の言動によって、欧州ではとても不人気です。信頼すると答えた人は、イギリスでは22%、フランスで14%、ドイツで11%です。しかし、この不人気こそが、ヨーロッパの価値観を強化するのに役立っているという見方です。

欧州でも盛り上がったナショナリズムとポピュリズムは、トランプ大統領当選以降、低下しつつあります。

ヨーロッパ統合は、関税同盟、共通通貨、国境検査廃止と来て、次は共同防衛が議論にのっています。これまでは、アメリカの傘の下(任せておけばよい)で、足並みが揃いませんでした。それぞれの国の事情もあります。
ところが、トランプ大統領が頼りない(頼りにならないかもしれない)という危機感から、ヨーロッパ各国が共同防衛構想を進めざるを得なくなったのです。
皮肉といえば皮肉ですね。時代というのは、敵があることや、危機が進めるのでしょう。