カテゴリー別アーカイブ: 政治の役割

行政-政治の役割

日本の国益

1月13日の読売新聞1面コラム、田中明彦・政策研究大学院大学学長の「安倍外交7年 平和・繁栄・価値観で成果」から。

・・・しかし、そもそも現代世界において外交の評価とはどのように行うべきなのか。外交とは国益を最大化するための非軍事的手段による国際関係の処理である。そうだとすれば、本来、日本の国益とは何かが明確にならなければ評価のしようもない。現代における日本の国益とは何か。

抽象的にいえば、民主主義国の国益は、その民主主義プロセスが明示的・暗示的に定義する国の諸目的の実現にほかならない。多くの人々が大事だと考えること、これが国益である。
具体的に日本にあてはめてみれば、その国益は比較的はっきりしている。
第一に平和であり、日本の安全保障が侵害されないことである。
第二に繁栄であり、日本国民の生活水準を維持・向上させることである。
第三に国民が大事だとみなす様々な価値――自由、平等、法の支配などが維持・向上されることである。
いうまでもなく、細部を吟味していけば、いろいろと意見の違いはあるだろう。しかし、国益の大きな方向性としてそれほど異論はないのではないか・・・

データでみる首相官邸

日経新聞が12月29日から、「データでみる首相官邸」という連載を続けました。
29日、官邸支える人材3割増、首相が精鋭指名 官僚機構も強化
30日、内閣府・内閣官房の出身省庁、経産が最多
31日、首相と面会、外交・安保トップ急増 財務次官は少なく
1月1日、経済財政諮問会議、小泉政権より4割減少

第2次安倍政権になって、官邸の仕事の仕方が変わったと、多くの人が指摘してます。しかし、それらの指摘は断片的で、実証的ではないようです。
このように、数値を挙げて検証することは良いことですね。あわせて、政治主導はどのように変わったか、その方法の解説も欲しいところです。

かつては、各省庁の仕事の仕方について、マスコミや研究者が検証しました。ところが、官邸と内閣官房のしくみや仕事の仕方については、これと言った研究がありません。
そして、この連載でも取り上げられたように、内閣官房は急速に組織人員、仕事の範囲が広がっています。
省庁改革直後の2001年には、515人だったものが(予算定数)、現在では1,188人と2.4倍に膨らんでいます。この外に、併任発令職員がいると思います。
内閣人事局、国家安全保障局という実施組織もできました。1府13省庁と並んで、内閣官房が省庁並みの組織になっています。組織図組織と定員
行政学としても、取り上げて欲しい組織です。

政治家が示す目指す社会像

12月4日の朝日新聞オピニオン欄、国分高史・編集委員の「仏改憲が教えること めざす社会像、論じるのが先」から。
・・・ フランスは戦後、昨年まで27回の憲法改正を経験している。多くは議会の行政監視機能の明確化など統治機構に関するものだが、憲法院(憲法裁判所)による違憲判断を克服し、研究者に「特筆すべきだ」と評価されている例がある。
1999年と2008年に、男女の平等な社会参画を促す条項を加えた改正だ。前者は議会選挙の候補者を男女同数にすることを政党に義務づける「パリテ法」制定に道を開き、後者はそれを議会だけでなく、企業の取締役など広く社会一般に広げることを目的とした。
仏国民議会(下院)の女性議員比率は、改憲前の水準から4倍近い40%になった。ひとまずここまで来るには、女性たちの粘り強い運動や議会内外での論争など、国民合意に向けた長年の積み重ねがあった・・・

・・・フランスでは家父長制の伝統が根強く、1789年の人権宣言でも女性は対象外とされた。女性参政権が認められたのは、欧米ではかなり遅い1944年のことだ。
それでも70年代から女性の政界進出の機運が高まった。82年には社会党の女性議員が北欧発祥の「クオータ制」を地方議会選挙に導入する選挙法改正案を提出。候補者名簿に25%以上の女性を載せることを政党に義務づける内容で、議会を通過した。
だが、憲法院はこの改正案を違憲と判断した。全ての市民は法の前に平等であり、性で候補者を区別するのはフランス共和主義の理念に反するという理由だった。
この壁を乗り越えるには、どうしたらいいのか。そこで出てきたのがパリテの理念だ。一定割合を女性にあてるクオータ制には、男性への逆差別との批判がつきまとう。これに対し、パリテはざっくり言えば「世の中は男女半々なのだから、議会も男女半々に」というものだ・・・

・・・政治の動きを、最後に後押ししたのは世論だった。憲法のどの条項を改正するかをめぐり、政府・国民議会と保守的な元老院(上院)が対立すると、一般紙だけでなく大衆紙や女性ファッション誌も競うように賛否両論を特集。関心が薄かった市民を巻き込み、パリテに消極的と見られた上院に批判的な論調が強まっていった。
上下両院は妥協に向かい、政府案提出から1年後の99年6月、「選挙で選ばれる公職への男女の平等なアクセスを促す」など二つの条項を加える案が、両院合同会議で可決された。採決では、国民投票がなくても成立する「有効投票の5分の3」を超え、ほぼ満場の賛成票を集めた・・・
・・・この経験から日本が得られる教訓は何か。「多くの人が正義だと考える政治課題の実現を憲法が妨げている時、合意をつくって改正という最終手段をとる。これこそが憲法改正のあるべき姿だと思います」と糠塚さんは話す。
私は、日本でも女性議員を増やすためにすぐに改憲すべきだと主張したいわけではない。フランスでも改憲までの丁寧な合意形成やその後のフォローアップがなければ、前進はしなかっただろう・・・

ポピュリズム権威主義

11月25日の読売新聞文化欄、神保謙・慶應大学教授の「論壇キーワード」は、「ポピュリズム権威主義」でした。

・・・グローバルな民主主義の後退が10年以上にわたり続いている。国際NGOフリーダムハウスによれば、過去13年間連続で権威主義体制が興隆し、民主主義体制の国々でも政治的自由度が低下するか、体制自体が瓦解するというトレンドが続いている。これら民主主義体制の瓦解には、ケニア、ロシア、タイ、トルコ、ベネズエラといった戦略的重要度の高い国々が含まれる・・・
・・・かつての民主主義の瓦解は、軍事クーデターと戒厳令による統治権の剥奪はくだつや、選挙による代表制の停止など、唐突な形での政治体制の転換が多くみられた。しかし今日の民主主義の後退は、むしろ民主的手続きを経て信任されたポピュリスト政治家が、徐々に司法の独立を制限、報道規制を強化、市民の政治的自由に介入し、権威主義化を進めていくモデルが目立っている。これを「ポピュリズム権威主義」もしくは「ポピュリズム独裁」と呼ぶ・・・

・・・ポピュリスト政治家が権威主義化を進める現象は、民主制が根付いた国家にも広く及ぶようになった。米国のトランプ大統領、ハンガリーのオルバン首相、ブラジルのボルソナーロ大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領など例に事欠かない。欧州・アジア・ラテンアメリカにおけるポピュリスト政党や政治家の伸長も、さらなるポピュリズム権威主義の予備軍となっている・・・
・・・新興国の権威主義体制は経済成長の果実とIT技術による統治強化を携え、社会の自由をますます制約しながら権力の強靱きょうじん性を強めているようにみえる。先進国の民主主義はグローバル化に対する反動と、低成長期の分配政治の限界を抱え、反エリート主義を掲げるポピュリストが権力を握る傾向が顕著となっている。こうした動向から、経済発展が民主化を促し定着させるという近代化仮説は、その役割を終えたとする議論すらある・・・

中国指導者の最優先事項

11月17日の朝日新聞オピニオン欄、ロバート・ゼーリック元世界銀行総裁のインタビュー「米中の共存共栄は幻か」から

・・・「習近平体制下で中国が圧制の傾向を強めたことは確かです。国家主席に就任した習氏は、『最優先事項は何ですか』と尋ねた私に『8668万人の共産党員です』と答えました。1949年の建国以来変わらず共産党は人民の『前衛』として指導する立場にあり、その強化が最優先だ――。そんな彼の本心が伝わってきました」・・・