カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

岡田元也・イオン社長。非正規が生んだ消費の抑制

2月13日の朝日新聞オピニオン欄、岡田元也・イオン社長のインタビュー「売り場は消えるのか」に、次のような発言があります。

「所得環境は改善せず、企業も賃金への配分を高めていません。これらは消費を抑制している大きな要因では?」という問に。

「もちろん影響はあります。企業にも責任がある。正規、非正規という区分が生んだ格差は大きいです。正社員、終身雇用という仕組みが柔軟性に欠けるからと非正規雇用が導入されましたが、雇用自体が不安定、かつ賃金も抑えられました。将来を担う若い人たちが安定した生活を送る、という根本的な問題が未解決なままです。

また、消費者の生活スタイルが変わっているのに、社会保障など社会のしくみが変わっていません。1人で子育てをする女性への支援は十分でしょうか。離婚しても養育費を受け取っていない女性も少なくない。欧米に比べても恵まれた社会ではないでしょう。そうなると自分で守るしかない。消費より貯蓄、となるのも当然です。」

アメリカで増える絶望死

2月7日の朝日新聞オピニオン欄、ニューヨークタイムズ、ニコラス・クリストフさんの「米国で増える「絶望死」 責任は社会に、投資を人に」が、勉強になりました。詳しくは、原文を読んでいただくとして。

・・・ナップ家の5人の子どもたちは賢く有能だった。しかし、ファーランさんは何年もの薬物とアルコールの乱用で亡くなり、ジーランさんは酒で酔いつぶれている間に家が燃えて亡くなった。ネイザンさんは覚醒剤を精製中に爆死し、ロジェーナさんは薬物使用による肝炎で亡くなった。キーランさんが生き残れたのは、オレゴン州の刑務所に13年間いたおかげでもある。
彼らのような労働者階級の男性と女性は、肌の色を問わず、薬物やアルコール、自殺といった「絶望死」で死ぬ人が増えている。米国の平均寿命がこの100年で初めて3年連続で短縮したのはそのためだ・・・

・・・貧しい黒人が多いフィラデルフィア北部で生まれた新生児の平均寿命は、4マイルしか離れていない、白人が多く住む市中心部の新生児より20年短い。これは一方の赤ちゃんが「弱い性格」だったからではない。
英国では、ブレア元首相のもとで子どもの貧困が半減した。赤ちゃんが突然、自己責任をより示すようになったからではない。政府が責任を果たしたのだ。米国では子どもの貧困を半減させるため、全米科学、工学、医学アカデミーが青写真を描いたが、議会とトランプ大統領は何もしない・・・

・・・ナップ家の人たちが間違いを犯したのはその通りだ。だが彼らは、戦後豊かに生きてきた両親や祖父母よりも賢明さや才能、勤勉さが劣っていたのではない。
変わったのは、いい職を得る機会が減り、人的資本へ投資する公約が少なくなり、依存性のある薬物が蔓延し、取り残された人たちを中傷する無情な社会の声が高まったことだ。労働者は尊厳と希望を失った。自己治療と自己破壊、孤独と絶望の悪循環が、スクールバス6号車を席巻した・・・

・・・よりよい社会の声とはどのようなものか。自己責任だけでなく、子どもたちを支援するような、集団としての社会的責任を認めるものだ。指をさして非難し合うよりも救いの手を差しのべるような、共感と「恩寵の倫理観」に満ちているものだ。国民の大多数が自身の潜在力を生かせていなければ、国もその潜在力を生かし切れていないということを認めるものなのだ・・・

今日のアメリカは、明日の日本です。そうならないように、対応しなければなりません。

犯罪被害者基本法15年

12月1日の読売新聞が、犯罪被害者基本法15年として「事件の傷ケア 早く長く」を大きく取り上げていました。。犯罪被害者給付金支給法ができたのは、その前の1980年でした。
・・・犯罪に巻き込まれた人や遺族ら犯罪被害者の「権利」を明記した犯罪被害者基本法は1日、成立から15年を迎えた。深く傷ついた心身のケアに、加害者側に賠償を請求するための方策……。被害者を取り巻く環境は改善されてきたが、いまだ十分といえない。被害者の現状と課題を考える。
死傷者が年間2万5000人を超える犯罪被害者への支援は、事件直後に始まり、裁判後も続く。その流れと実態とは・・・

まだ、できて15年です。多くの方は、詳しくは知らないと思います。また、この法律の適用がない方がよいのですが。記事と共に図で、支援制度が解説されています。
・まず必要になるのが、心身の傷の治療です。
・事件現場が自宅だと、ホテルなどに一時避難したり、転居する必要があります。
・家事や育児ができなくなることもあり、その際は生活支援が必要です。
・裁判になると、弁護士の支援が必要です。

かつての刑事事件は、加害者を罰することで終わりました。しかし、加害者の社会復帰を支援し、再犯防止をすることが必要です(刑期を終えても、また起こす人がいます。自立できない人も多いのです)。
そして、被害者は、加害者からの賠償以外は、何の手当もありませんでした。
いまから考えると、冷たい社会でした。たぶん、以前は、親族や地域社会で助けることと理解されていたのでしょう。
これらの制度は、前進です。もちろん、このような支援を受けても傷は治りませんが。

ネット・ゲーム依存症調査結果

11月28日の各紙が、厚生労働省が、生活に支障が出るほどオンラインゲームなどに没頭する「ゲーム障害」に関する初の実態調査の結果を発表したことを伝えていました。
「10~20代のゲーム利用者のうち、7%が授業中や仕事中にもゲームを続けているなど、一部に依存症状が見られた。休日には12%がゲームを6時間以上していた」日経新聞

ネット・ゲーム使用と生活習慣に関するアンケート調査」です。
今年1~3月に、無作為に抽出した全国の10~29歳の男女9千人を対象として、5096人が回答しました。
それによると、過去1年間にゲームをしたことがあるのは、85%。機械は、スマホが81%、据え置き型ゲームが48%です。オンラインでゲームをする人は48%。
平日のゲーム時間は、男性では3時間以上が25%、うち4%は6時間以上。女性では3時間以上が10%、うち2%は6時間以上もやっています。

ゲームを止めなければいけないときに、ゲームが止められなかったか。ゲームのために、スポーツ、趣味、友達などと会うといった大切な活動に対する興味が著しく下がりましたか。ゲームのために学業に悪影響が出たり、仕事を危うくしたりしても、ゲームを続けましたか。ゲームのために睡眠障害や憂鬱になっても、ゲームを続けましたか。といった質問が並んでいます。
多くの人が「はい」と答え、プレイ時間が長い人ほど学業・仕事への悪影響だけでなく心身の問題も起きています。
大きな社会問題です。
依存症対策全国センター(国立病院機構久里浜医療センター)

松元崇さん、若者の働き方支える視点を

11月1日の日経新聞経済教室は、松元崇・元内閣府事務次官の「全世代型社会保障改革に向けて 若者の働き方支える視点を」でした。
ポイントは、次のようです。
・スウェーデンは高成長で政府規模を縮小
・有意な転職支える流動的な労働市場カギ
・国が成長しなければ国民の所得増えない

・・・スウェーデンについては1995年から2015年にかけての20年間の動きが矢印で示されており、この間に政府規模が英国やドイツよりも小さくなったことが分かる。スウェーデンはかつて大きな政府で有名だったが、高い経済成長率により状況が変化したのだ。
ビル・エモット氏の著書「『西洋』の終わり」によると、スウェーデンは高い経済成長率を持続することで、93年に国内総生産(GDP)比で72%もあった政府規模を07年には49.7%に引き下げた。GDP比で約22ポイントの引き下げは、GDPが550兆円の日本の感覚に当てはめれば、約120兆円にも相当する。

スウェーデンの高成長の背景にあるのが選択と集中だ。選択と集中の時代には、企業の栄枯盛衰や個人の転職が当たり前になった。そこでは転職に際して、学校などで新たな技術を学び直す、そうした個人をしっかりと支える仕組みを持つ国の経済が成長するようになった。個人のキャリアアップを支える流動的な労働市場を持つ国の成長率が高まるようになったわけだ。
かつて転職が珍しかった時代には、そうした仕組みは経済成長にほとんど役に立たなかったが、それが様変わりしているのだ。
図でスウェーデンと正反対の動きを示しているのが日本だ。その大きな要因は、個人のキャリアアップを支える労働市場がほとんどないことによる低成長だ。日本の経済成長率は先進国の平均を1%ほども下回っている。その分だけ図の潜在的国民負担率の分母が大きくならず、負担率が上がっていくことになる・・・

・・・日本でも個人のキャリアアップを支援する取り組みは始まっている。19年6月の「骨太の方針」では、就職氷河期に正規社員になれなかった人々の再チャレンジを支援する方針が打ち出され、7月には内閣官房に就職氷河期世代支援推進室が設置された。就職氷河期世代の正社員を30万人増やす目標が掲げられている。
18年4月の週刊ダイヤモンドによれば、就職氷河期に就職できなかった人々がそのまま老後を迎えると、生活保護に依存せざるを得なくなる。「生活保護予備軍」は約147万人にのぼり、生活保護費は約30兆円にも達すると試算されている。そうした人々が再チャレンジして就職し、生活保護予備軍から脱却すれば、当人も幸せだし、日本のGDPも相当押し上げられるはずだ。ちなみに再チャレンジは、第1次安倍内閣が06年に掲げた政策目標だ・・・

原文をお読みください。
松元さんの主張については、著書『日本経済 低成長からの脱却』をこのホームページで紹介しました。