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行政

砂原庸介教授、自治体間連携の枠組み必須

8月10日の日経新聞経済教室「新型コロナウィルス 国と地方、浮かんだ課題」は、砂原庸介教授「自治体間連携の枠組み必須」でした。

・・・新型コロナウイルスの感染拡大への対応で注目されるのは、国だけでなく地方自治体、特に知事が最前線に立っていることだ。この感染症は、人々が密集する都市という局所的な単位で問題になる傾向が強い。
だが同様に局所的な対応が求められる地震や水害などの場面では、必ずしも知事が注目されたわけではない。知事にはある程度状況が落ち着いた後で復興をリードする役割が求められ、地元の要望を中央省庁に伝えるものの、縦割り行政の壁で思うような意思決定ができない、というのが見慣れた光景ではなかったか・・・

・・・しかし権限付与だけで組織が積極的に動き出すわけではない。1990年代の政治改革以降の日本政治の変動が新しい動きの底流にあると考えられる。
その一つは国政レベルでの「政治主導」の強まりだ。しばしば指摘されるように第2次安倍政権以降、各省間の調整が後景に退き、首相周辺の政治家・官僚を中心としたトップダウンの意思決定が強調されている。
感染の懸念も後押しする形で知事が直接政治に要求を届けると、それを受け取った大臣も何らかの反応を求められる。要請を受けた政府・与党内の意思決定過程では依然ブラックボックスとされる部分は残るが、知事の側がオープンに発言する以上、受け取った政治の側もオープンに責任を問われる。その結果として、全国知事会での対策を主導した知事からは、国が地方からの要求に対して非常に応答的であり、ときには期待を上回る形で要望が実現したとの評価もなされる。

次に知事を含める形で政治リーダーの競争関係があらわになったことがある。従来は次期首相をうかがう政治家など、政権党内での政治家同士のけん制や競争関係が注目されることが多かったが、今回は感染症対応を直接担うリーダーたちの発言が注目され比較されている。さらに感染者数や医療供給体制に関するデータが出されていることで、比較や格付けすらなされている。互いに全く意識しないのは難しいだろう・・・

・・・問題は早期発見・封じ込めが困難になるほどに感染者が増大していく局面だ。そうなると既に不特定多数の人々が感染しているという前提の下に、自己検疫による外出の自粛や経済活動の抑制、そして緊急事態での医療資源の管理といった「災害モード」が前面に出る。当初の感染者数が少ない状況では、対策があくまでも特定の都道府県・市町村の中で完結することが想定されるのに対し、災害モードでは国や周辺自治体を含めた広範な連携が必要になる。多くの人々が自治体の境界を越えて大都市の中心を利用しているからだ。
3月から5月にかけての感染拡大で、東京・大阪で災害モードの管理を中心的に担ったのは知事だった。知事には、経済活動の抑制や抑制解除の条件などで国と交渉しつつ、近隣の自治体との連携が求められていた。国との間に一定のコンフリクト(摩擦)があったのと同様、自治体間連携にも困難は生じる。日本の大都市圏には自治体を越えて連携するような仕組みが制度化されておらず、指揮系統や情報管理を一元化するのは極めて難しいからだ。

神奈川県・埼玉県や京都府・兵庫県といった大都市圏周辺に位置する府県は違う意味で難しい立場に置かれたと考えられる。これらの府県は大都市と連なる政令指定都市を抱えており、それらは東京・大阪の動向に影響される。他方、府県知事はかねて政令市以外の地域に注力する傾向にあるため、対策としては医療モードをまず重視することになる。そうした配慮が大都市を中心とした対応を遠心化させる可能性もあるだろう・・・

参考「砂原庸介教授 国の政治主導、地方の政治主導

風営法によるコロナ対策の飲食店立ち入り

8月6日の朝日新聞「コロナ禍の日本と政治」に、原田宏二・元北海道警幹部の「コロナ対策で警察、問題ないのか 風営法での立ち入り、根拠なし」が載っていました。

・・・接待を伴う飲食店での新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府は、風俗営業法(風営法)に基づく警察官の立ち入り調査に合わせて、感染対策の徹底も店側に促すと表明した。だが、同法はコロナ対策を目的とした法律ではない。政府は通常調査に「合わせた」形での呼びかけで、法的に問題ないと主張するが、政治主導の警察の動員に危うさはないのか。北海道警元警視長の原田宏二さんに聞いた・・・

・・・風営法はコロナ対策を目的とした法律ではなく、それに基づく立ち入りは法的根拠がありません。警察の責務は警察法で明記され、活動は厳格にその範囲に限られます。逮捕などの強制捜査をすることもあり、ほかの行政機関よりも厳格に法や、法の手続きを守ることが求められるからです・・・

・・・問題はそれだけではありません。感染リスクもあります。警察官を守る装備や手当、コロナの基本的知識の習得も必要です・・・

全国知事会、コロナ対策での役割

8月6日の読売新聞解説欄は、「知事会 コロナ積極提言…オンラインで意見集約」でした。
・・・新型コロナウイルスの対応をめぐり、全国知事会の動きが活発化している。機動的にオンライン会議を開いて各知事の意見を集約し、繰り返し政府に提言している。ただ、かつての「国との対決姿勢」は影を潜め、国への依存が強まることを危惧する声もあり、地方分権のあり方が問われている・・・

・・・知事会で全国の知事が顔を合わせるのは通常、年2、3回の会議のみ。だが、新型コロナの感染拡大を受け、2月下旬に飯泉会長を本部長とする対策本部を設置し、これまでに10回もの会議を開く「異例の対応」(事務局)をとる。5回目以降は全面的にオンラインでの開催となり、地元にいられる便利さから知事本人の出席が一気に増えた。
新型コロナ対応では自治体が主導的役割を担わざるを得なくなり、最前線に立つ知事に脚光が当たった。改正新型インフルエンザ対策特別措置法では、緊急事態宣言下での外出自粛の要請や施設使用制限の要請・指示など、知事に強い権限が与えられた。知事会も、現場の声が集まる場として注目されたことで知事の参加意欲も高まった。
知事会は会議のたびに政府への提言を取りまとめ、機を逃さず担当閣僚らに要望。提言は「対策本部」名義だけで11本に上る。感染拡大を防ぐための休業要請に応じた事業者への補償をめぐっては「休業要請と補償はセット」と訴えた結果、地方創生臨時交付金を休業への協力金に充てることが認められた・・・

新しい形での、全国知事会の役割が見えてきました。詳しくは記事をお読みください。

危険に対する科学者と政治家の役割分担

8月2日の読売新聞「コロナ禍と原発事故」、小林傳司・大阪大名誉教授の「科学 解答には相応の時間」から。
・・・科学は、人間社会が手にした最強の知的道具です。それ故に、新型コロナをはじめとする新興感染症や2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故のような有事の際には、科学者の知見を、被害拡大を防ぐ政策判断に反映させようと試みられてきました。そこには、常に難しい問題が潜んでいます。
科学者が客観的な事実やリスク評価を示す役割を担い、それをもとに政治が基準を定めたり、判断を下したりするというのが、通常の科学と政治との関係です。こうした分業でうまくいく事例はたくさんあります。ところが、うまく機能しないタイプの問題が噴出してきました。古くは原発の安全性をめぐる議論であり、今回の新型コロナ禍への対応なども、その典型です・・・

・・・新型コロナの場合はどうでしょうか。感染防止という観点だけでいえば「濃厚接触を断つしかない」と、専門家の考えは極めて明瞭です。しかし、いつまで自宅で巣ごもりを続けるべきなのか、感染リスクをある程度許容しながら経済活動を維持すべきなのか。政治と交わる境界領域で何を重視するのか、科学だけでは答え難い「トランス・サイエンス」の問題と言えます。

こうした問題では、政策決定者と専門家の間で十分に議論することが、必要不可欠です。特に、医学や公衆衛生学は、「人の命を救う」「感染症から社会集団を守る」という目標を掲げた学問であり、ある種の線引きや基準づくりが求められる分野です。その点で、政策判断との親和性が高かったはずです。

ただ、政府への提言を検討してきた当事者たちは難しいかじ取りを迫られたと感じていた。新型コロナ対策を助言してきた専門家会議が6月、自身の活動について「前のめり」「政策を決めている印象を与えた」などと総括する報告書を公表したことでも明らかです。
知見が少なく制約が多い中で、提言や情報発信にあたった苦労が文面からも伝わってきます。大事なのは、最終局面での判断は、政治の責任で引き取り、科学との境界をはっきりさせることです。そうしないと、科学者が政治的決定の責任を問われかねず、助言するシステムそのものが崩壊してしまうからです・・・

中間貯蔵施設のいきさつ

朝日新聞デジタルに、大月規義編集委員の「土壇場で消えた「最終処分場」 環境省が模索した事情」が載っています(8月4日掲載)。

・・・東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の発生から来年で丸10年を迎えるのを前に、最近、これまで取材してきた政治家や官僚らを改めて訪ねている。その中で、びっくりな裏話を聞くこともある。たとえば、福島県の双葉、大熊両町で整備が進んでいる汚染土壌の「中間貯蔵施設」。公になる寸前まで、最終処分場とする動きがあったという・・・
・・・官僚経験者のA氏が「2011年8月26日」にかけた電話の内容から解き明かす。菅直人首相が福島県庁を訪れ、佐藤雄平知事と会談する前日だった。
「あすは何を福島側に提示する?」。電話の相手は、会談を仕切っていた経済産業省の幹部だった。「ローキー(控えめ)でやるよ」。それしか教えてもらえなかった。妙な気配を感じたまま電話を切った。
当日。菅首相が佐藤知事に申し出た。「汚染物質を適切に管理、保管する中間貯蔵施設を県内に整備することをお願いをせざるを得ない」。A氏は仰天した。
処分する施設の頭に「中間」と付くとは、「まさに寝耳に水だった」という。環境行政に詳しいA氏が理由を説明する・・・

・・・国は14年に法律を改正し、汚染土を施設に搬入し始めてから30年後の2045年までに、県外に運び出すと定めた。「中間」と名付けて問題を先送りしたが、搬出のタイムリミットまであと25年だ。しかも搬出先を探すのは、先送りを仕掛けた張本人の経産省ではなく、環境省の役目になっている。
中間貯蔵施設に入る汚染土は、東京ドーム10個分を超える量だ。環境省は県外搬出を前に、土砂を分別・減容し、安全な土砂については公共事業用の土砂などに再生利用しようとする。だが、きれいになった土であっても、受け入れ先を探すのは難航している・・・

詳しくは、全文をお読みください。
そんな事情だったのですね。良く取材した記事です。9年が経って、記憶が薄れると同時に、当時の実情を話す人が出てきたと言うことでしょう。私は発災後しばらくは、地震津波対応が職務で、原発事故は所管ではありませんでした。なので、詳しい事情は知らないのです。
私が経験したことは、緊急災害対策本部被災者支援チームと復興庁のホームページに残し、また本にまとめました。原発事故対応の方は、ホームページもなく(原子力災害本部の会議録だけで、その事務局のホームページがないのです。問い合わせ先もありません)、関係者による記録も見当たりません。これだけの事故、そしてこれまでにない対応をしたのですから、当事者は記録を残す義務があると思います。