カテゴリー別アーカイブ: 連載「公共を創る」

祝・連載「公共を創る」100回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第100回「通念と生活の「ずれ」ー顕在化した不安」が、発行されました。社会を支える民間のうち、企業や非営利団体の活動を説明したので、もう一つの要素である個人の意識を説明します。

同じような自然環境や地理的条件にあっても、関係資本や文化資本が違うと、国や地域で発展の違いが生まれます。「この国のかたち」が異なるのです。民主主義を輸入しても、刑法を輸入しても、それだけでは機能しません。国民がそれを受け入れ、運用しないと、絵に描いた餅になるのです。「集団主義」と呼ばれる日本国民の通念と慣習は、発展途上時代にはとてもよく機能しました。しかし、成熟社会になって、その通念と慣習が逆機能を生んでいます。

これで、第100回を迎えました。2019年4月25日からですから、2年半ですね。よく続いたものです。当初は、1年半ほど続くかなと思っていたのですが。こんなに続きました。この間、一度も原稿締めきりに遅れなかったことが自慢です。

事実の確認をしてくれた同僚、作図をしてくれた知人。そしてなんと言っても、毎回、原稿に目を通し鋭い指摘をして、真っ赤にしてくれる右筆たちに感謝です。さらにその原稿の誤りなどを指摘してくださる校閲さんには、頭が上がりません。
第4章2までたどり着いたので、もう少しで完結です。

連載「公共を創る」第99回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第99回「広がる企業の役割」が、発行されました。

社会貢献についての企業戦略が、慈善活動から社会的責任を果たすことへ、さらには積極的に社会課題を解決しようとすることへ変化してきました。そのいくつかの例を紹介しました。
また、企業と行政との連携「官民連携」も増えてきました。ここで言う官民連携は、公共施設の建設や運営に民間活力を活用するものだけでなく、企業が自治体と組んで地域の課題に取り組むものです。その特徴的な例を紹介しました。そのほか、企業と非営利団体の協働もあります。
ここから見えることは、「餅は餅屋」です。行政、企業、非営利団体それぞれが得意な分野を受け持つのです。官と民が区分され対立する公私二元論ではなく、3つの存在が協力して社会を支える官共業三元論を基本とすべきです。

記事で紹介したいくつかの例を、載せておきます。
(社会起業家)
認定NPO法人フローレンスは、病児保育問題に取り組んでいます。https://byojihoiku.florence.or.jp/
有限会社ビッグイシュー日本は、ホームレスに仕事の機会を提供しています。https://www.bigissue.jp/
ユニファ株式会社は、保育園や幼稚園の生産性向上に取り組んでいる会社です。https:/nifa-e.com/company/
リノベーター株式会社は、単身高齢者、外国人、生活保護受給者など住宅を借りることが困難な人に対して低廉な家賃で部屋を貸し、必要がある場合には生活や就労相談、さらには地域住民ともめないための調整を行っています。京都府=https://rennovater.co.jp/about-rennovater/
株式会社ヘラルボニーは、障がい者の経済的、社会的な自立と尊厳を実現することで、障がい者への偏見をなくすことを目指しています。障がい者が描く絵などを、ポスター、バッグ、服飾雑貨にデザインし、製作販売して、障がい者にも十分な対価を支払います。岩手県=https://heralbony.com/
ココホレジャパン株式会社「ニホン継業バンク」は、地方の零細企業の跡継ぎを探し、引き合わせるサービスです。岡山県=https://keigyo.jp/

(官民連携、民民連携)
あいおいニッセイ同和損保「地域活性応援サイト」。https://adclub.jp/creation.html
特定非営利活動法人「放課後NPOアフタースクール」は、多くの企業と協働して、学童保育でさまざまな学びと遊びの機会を提供しています。https://npoafterschool.org/activities/afterschool/

何と、連載はこれで99回です。次回で100回になります。

連載「公共を創る」執筆状況報告

恒例の、連載「公共を創る 新たな行政の役割」の執筆状況報告です。
「(1)社会を支える民間」の後半分を、右筆たちに手を入れてもらって、編集長に提出しました。毎回、さまざまな意見をくれたり、丁寧に手を入れてくれたりする右筆たちに感謝です。
締めきりに、間に合わすことができました。記事の形にしてもらうと、4回分になりました。11月25日号から12月16日号です。

今回は執筆に時間がかかり、余裕のない提出となりました。反省。
その続きの執筆も、進んでいないのです。今回出稿した分で年を越せると思ったのですが、編集長からは、年内の次の原稿の催促を受けました。
これからは恒例の年賀状書きもあるし、ほかに引き受けている案件もあります。夜の意見交換会も盛況で、時間が取れません。困ったことです。
毎回、同じことを言っています。

連載「公共を創る」第98回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第98回「サービス提供、担い手は官か民か」が、発行されました。

前回に引き続き、社会における企業の役割を説明します。前回は、損害保険の役割を紹介しました。みんなでお金を出し合い、事故や出費の必要性が発生したときに金銭を給付するのが保険制度です。
そのような観点からは、地域や親族での助け合いが、最初の保険とも言えます。助ける側にも、助けてもらう側にもなります。そして、民間会社の保険や、政府の保険に発展しました。また、政府そのものが、保険金を集めない保険とも言えます。税金で、国民や住民の困りごとに応えるのです。

この議論をサービス提供主体の違いに広げると、経済学や行政学の教科書では公共サービスと民間サービスとの違いが説明されますが、官と民との区別があまり有効でないことがわかります。
1980年代から民営化、民間委託が広がりました。他方で、企業が撤退したバス路線などでは、市町村がそれを担う場面も出てきました。
すると、企業が提供するのか行政が提供するのかが重要なのではなく、住民にとっては、サービス提供が確保されること、そしてその質の確保です。そして、行政の役割は、民間が提供しない重要なサービスを提供することと、官民が提供するサービスの質の監視です。

なおこの視点からは、公務員と民間従業員との、一律の区別も有効ではありません。公務員はストを禁止されています。しかし、コロナウイルス感染拡大で分かったことは、役所の内部管理業務などは少々滞っても問題なく、それに比べ保育園、学童保育、介護施設は休まれると住民に大きな支障が出ます。

連載「公共を創る」第97回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第97回「保険に見る企業と政府の協働」が、発行されました。

前回までの「第4章 政府の役割再考 1.社会の課題の変化」(連載第71回〜96回)では、日本が成熟社会に入り社会の課題が変わったこと、それに従って行政の任務も大きく変わるべきであることを説明しました。今回からは「2.社会と政府」に入り、これらの変化を念頭に、これからの政府の役割を検討するために、社会と政府の関係を見直してみます。

本稿では、社会は公私が対立しているのではなく、官(政府・行政)、共(非営利活動、非営利団体)、業(企業・市場経済)の三つの主体・場・仕組みに支えられていると考えるのです。そして、社会が私たちの暮らしを支えている場合には、モノやサービスの提供だけでなく、働く場、他者とのつながり、生きがいや居場所という機能も果たしています。それらは、法律や制度だけでなく、国民の意識と生活がつくっています。
かつて安全で安心といわれた日本、また驚異的な経済成長を支えたのは、これら国民の民度や気風がつくるこの国のかたちでした。
しかし、今や日本社会の安心にほころびが生じ、経済も低迷しています。安心して暮らせる社会をつくるためには、行政の役割を現状に即して変更していくことも必要ですが、民間の役割や国民の意識の変革も重要です。

ここでは、社会を支える民間活動と国民意識を再検討します。まず、改めて企業という存在に注目してみます。保険を例に、企業が私益を追求するだけでなく、社会を支えていることを見ます。