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社会

日本社会を変える働き方改革

4月1日から、働き方改革の法律改正のいくつかが適用されます。3月25日の日経新聞夕刊「働き方ルール どう変わる? 」が、わかりやすい解説をしていました。
働き方改革にはいくつもの項目があるのですが、特に大きいのは「残業時間の規制」と「同一労働同一賃金」でしょう。これが日本の職場や労働慣行を変えることになると、期待しています。

残業規制は、長時間労働をなくすためのものです。これまでの働き方を変えないと、この規制にひっかかる職場は多いのではないでしょうか。これをきっかけに、長時間労働が減り、効率が上がると良いのですが。

もう一つの、同一労働同一賃金は、正規と非正規の格差を是正することになるでしょう。
・・・同じ企業の中で同じ質と量の仕事をしているならば、年齢や性別などの違い、そして正社員やパートなど雇用形態の違いに関係なく、同じ額の賃金を払わねばならないという原則です・・・
・・・雇用者全体に占める非正規の割合は18年の平均で38%になります。また非正規の平均年収は17年で175万円と、正社員の35%の水準です。そこで能力や経験が同じであれば正社員と同一の基本給を支給するなど、待遇差を縮小することにしたのです・・・

ボストン市民社会の文化人類学2

ボストン市民社会の文化人類学」(渡辺靖著『アフター・アメリカ』)の続きです。P239以下に、「居場所の喪失」が書かれています。

ボストン・ブラーミンとボストン・アイリッシュという2つの集団。彼らの生活を支えていた「居場所」の感覚が、戦後急速に希薄になります。
ブラーミンは、経済的社会的特権地位を低下させることによって。アイリッシュの方は、経済的社会的に上昇することによってです。かつての区切られた地域から出て、他の地域に住むことや、他の社会集団と結婚することが、それを加速します。
それぞれの集団の中で助け合い、他方で他の集団とは交わらずに暮らしていた人たちや家族が、個人主義が進むことで、その結束が崩れていくのです。
「日本は欧米に比べて家族主義(家族の束縛)が強く、個人主義が育っていない」という主張がありますが、個人主義と思われるアメリカでも、結構そうではないのです。

とはいえ、人間は一人で、無色透明な空間に生きているのではないことを、再認識します。

ボストン市民社会の文化人類学

渡辺靖著『アフター・アメリカ ボストニアンの軌跡と<文化の政治学>』(2004年、慶應義塾大学出版会)を読みました。いつか読もうと思っていたのですが、思い立って。面白くて、引き込まれました。勉強になりました。

アメリカ発祥の地、ボストン。そこには、伝統的な階級社会があります。アメリカ最古で最上の名門家族である「ボストンのバラモン」。他方で遅れてやってきた、アイルランド系移民家族の「ボストン・アイリッシュ」。彼らもまた、アメリカンドリームを実現して、中流の地位を占めます。そして、その後から来た移民が、その下の階級を形成します。
アメリカは、しばしば「保守とリベラル」「白人と黒人」と色分けされますが、白人社会にも、このような階級が存在します。

著者は、アメリカ人でない(日本人留学生)という立場にもかかわらず、勇猛果敢にこの人たちにインタビューを試み、実現します。そして、時には「語りたくない話」を聞きます。
まだ、電子メールがない時代です。その苦労は、並大抵だったではないでしょう。
一読をお勧めします。この項続く

輸入思想

朝日新聞1月31日の論壇時評、小熊英二さんの「富山=北欧論争 リベラルは上滑りなのか」から。
小熊さんは、井手英策さんの『富山は日本のスウェーデン』(2018年、集英社新書)を紹介したあと、次のように述べています。

・・・もっとも井手は、富山のこうしたマイナス面も著書に書いている。そのうえで彼は、スウェーデンもかつては家族総出で働く保守的で家父長制的な社会だったこと、西欧をモデルにするばかりではいけないことを指摘し、こう述べている。
「リベラルの議論がどうしてもうわうすべりな感じがして仕方ないのは、社会の根底にある土台、風土や慣習のようなものと、そのうえに据えられる政策とがうまく噛みあっていないからではないか・・・保守的な社会の土台を見つめ、その何が機能不全となり、何が生き残っているかを見きわめる。そしてその土台にしっかりと根を張れるような、まさに地に足のついた政策をリベラルは考える責任がある」・・・

私はこの指摘に納得しているのですが、小熊さんは、井手さんの主張を批判しています。原文をお読みください。

いつものことながら、古くなって恐縮です。書こうと思って、切り抜いてあったのですが、他のことにかまけていて。資料にしろ本にしろ、すぐに他の資料の中に埋もれて「行方不明」になってしまいます。それが、ひょっこり出てきて・・。

企業広報の変化、平成の30年

3月13日の日経新聞「私見卓見」、江良俊郎・エイレックス代表取締役の「企業広報に変化突きつけた平成
・・・平成が始まる3年前、1986年に大学を卒業して以来、企業が手がける広報と危機管理の業務を支援してきた。まもなく幕を閉じる平成は企業広報に大きな変化が生じた時代だった。私が考える3つの変化から今後の企業広報のあり方を探りたい・・・
として、次の3つを挙げておられます。
1 危機が起きたあとの対応の失敗が、企業の存続に直結するようになったこと。雪印乳業が倒産した。
2 リスク要因の多様化。労災認定を受けた家族の記者会見、アルバイト店員の不適切投稿。
3 危機管理に取り組む企業の進化。トヨタのように、社長が記者会見に臨むようになった。

・・・現代社会は多様な価値観を尊重する一方、不寛容な面もある。危機意識の高い企業は社会の求めに敏感だ。主体的な危機対応を心がける。平成の次の時代、企業は社会が要請するコンプライアンス経営と説明責任を徹底する必要がある・・・

勉強になります。原文をお読みください。
私も、おわびのプロだと自任していたのですが。「おわびの仕方