カテゴリー別アーカイブ: 社会と政治

社会と政治

社会のルールを誰が決めるか

昨日、「経済活動のルールを誰が決めるか」を書きました。26日の日経新聞「論点争点」が、「健全サイトの認定機関、法規制回避へ自主対応」を書いていました。これは、有害情報を誰が規制するかです。
青少年の保護のために、携帯電話のサイトでの違法・有害コンテンツの閲覧を制限する話です。自民党は、国の審議会が有害サイトを指定し、プロバイダーにそのサイトを青少年が閲覧できなくするように義務付ける法案を考えました。これに対し、業界が自主規制を始めたのです。コンテンツ業界やプロバイダー、電気通信事業者が、監視機構を立ち上げました。外部の有識者が審査して、認定するそうです。
これには前例があり、放送倫理・番組向上機構も、法律による規制を回避するために、民間が自主規制したのだそうです。
表現の自由と青少年保護、難しい問題です。新しい技術によって新しいサービスが普及すると、社会のルールづくりが課題になります。(5月26日)
6日の日経新聞経済教室は、塩沢修平教授の「企業の社会貢献活動のあり方」でした。社会システムを、市場・政治・狭義の社会の3つのシステムからなると捉えておられます。これは、拙著「新地方自治入門」第8章「公の範囲は」で解説したのと同じ考えです。そして、公共サービスで政府・企業・NPOは競合すること、政治・市場を補完する上で企業の役割は重要と述べておられます。

経済と政治・国家間交渉

24日の朝日新聞変転経済は、「95年、日米摩擦解消の切り札、トヨタの海外生産」「国際プラン準備しています」でした。生産台数世界一になったトヨタ自動車の、海外生産への転身についてです。
1960~70年代は貿易と資本の自由化を迫られ、1985年のプラザ合意で円高が加速しました。1990年代の日米通商摩擦と超円高(1ドル=80円にもなりました)という逆風を乗り越えたのは、海外生産の加速でした。
興味深いインタビューが載っています。日米自動車協議の担当だった、渡辺修通産省機械情報産業局長が、次のように述べておられます。
「・・以前の日米交渉では、通産省が早く妥協しようとして業界にずいぶん無理をしてもらった。数字はビジネスの結果として出てくるものだが、部品購入の数値目標はあらかじめ約束させるもの。政府が受け入れれば、業界に再び無理をお願いすることになる。それはやめようという原則を貫きました。答は、民間にしか出せなかったのです・・」
次のようなくだりもあります。
・・約4千人いた本社事務部門の社員の2割を、中長期の経営課題などに対応するチームの専従者として引き抜いた。残りの8割で従来の業務をこなし、事務の合理化も進める・・
これを2人の有力副社長が、後押しした。1人は財務・経営企画担当の奥田碩で、「変えろ、変えろ。何も変えないやつが一番悪いとゲキを飛ばし続けた。もう1人は人事担当の磯村巌。仕事が増えることをいやがる既存組織の抵抗を見て、全部長を集めて「これはやるんだ」と厳命した。「お前が引き抜かれるかもしれんぞ」と一喝した・・

経済と政治・経済活動のルールを誰が決めるか

5月20日の経済財政諮問会議で、対日直接投資が議論されました。その中で、M&A(Mergers and Acquisitions、企業合併と買収)、特に企業買収のルールが問題になっています。興味深いのは、そのルールをどのように設定するかです。日本への投資を呼び込もうとすると、買収しやすくする必要があります。一方で、経営者保護のために過剰な防衛策が導入されたり、防衛のために大きな負担が発生している例もあります。
企業に関する基本的ルールは、会社法で決められています。国家が決めているのです。個別の会社の中のことは、それぞれの企業が決めます。今回の議題になっている買収のルール、というより買収防衛策のあり方を誰が決めるかです。
斉藤東京証券取引所グループ社長は、席上次のような発言をしておられます。
「・・こういうことを言うと大変失礼であるが、こういうことは政府がやり方の是非を決めるような問題ではないのではないか。いわゆる買収防衛策の導入指針を政府に提示させることに、少し違和感がある。本来そういうことは、ビジネス側が提案していかなければいけないものである。経営者がそれを盾にし、逆にポイズンピルなどを導入することが起こってしまうと、常識的には経営者の保身だと見られている・・」(議事要旨p10)
なお、東京証券取引所は、株式の取引という公共性の大きな仕事をしていますが、株式会社です。日本銀行も、お札の発行という国家に欠かせない仕事をしていますが、国と民間が出資した会社です。

非正規雇用

14日の日経新聞経済教室は、阿部正浩教授の「非正規雇用、スキル向上へ費用議論を」でした。
非正規雇用者や無業者が増えることで、老後に生活保護を受給しなければならなくなる人が77万人にもなり、追加的予算が20兆円にもなるとの試算があるのだそうです。日本の雇用政策は、企業の雇用慣行を補完する形で作られていて、非正規雇用は学生や主婦のパートと考えていました。主たる生計者と考えていなかったのです。だから、社会保険や労働保険の適用除外になっている人も多いのです。職業訓練も受けられず、就業機会に恵まれません。この課題の先進国であるイギリスでは、より進んだ対応をしています。