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21世紀最初の20年、2

「21世紀最初の20年」の続きです。
21世紀になってから、20年以上が経ちます。現在の日本を分析するには、バブル崩壊の1991年を起点にするのが良いと思いますが、今回は21世紀の20年を対象としましょう。国際問題は別の機会として、日本国内の変化を見てみましょう。

経済では、低成長が続いています。経済規模は、世界第2位から第3位へ。一人あたり所得は、トップクラスから20位以下へと転落。G7では、この間ずっと7位。非正規雇用は4割近くに。対策は打たれつつありますが、格差縮小はまだ目に見えて進んでいません。
政治では、省庁改革、小泉内閣、政権交代、民主党政権、安倍内閣、非自民政党の分裂がありました。この間の特徴は、政治主導の強化でしょうか。
消費税を5%から10%に引き上げましたが、財政赤字はさらに膨れあがっています。
人口は減少に転じました。少子高齢化は、相変わらず進んでいます。結婚しない若者が増え、一人暮らしも増加。自殺者は一時減少しましたが、増加に転じています。
女性の社会参加が増えました。非営利団体の活躍増加も挙げておきましょう。

インターネットが普及し、多くの人がスマートフォンを持つようになりました。反面、テレビを見る人や新聞を読む人が減りました。商品をネットで購入し、宅配で届けられることが増えました。
出来事としては、2011年の東日本大震災、その後続く大災害。2020年に日本にも広まった新型コロナウイルス感染症。
あなたとあなたの家族、そしてあなたの地域では、どのような変化がありましたか。
さて、次の20年はどのような姿になるでしょうか。私たちは、どのような国と社会をつくるのでしょうか。

明治維新では、黒船来航1853年から20年後は1873年、維新がなり、廃藩置県まで進んでいます。戊辰戦争1868年から明治憲法1889年まで満21年です。戦後改革では、1945年から20年後は1965年。東京オリンピックが1964年、ドイツを抜いて世界第2位の経済大国になるのが1968年です。

国際法と国際関係の相互作用2

国際法と国際関係の相互作用」の続き、7月20日の朝日新聞オピニオン欄、小和田恒・元国際司法裁判所長へのインタビュー「国際法の理想の長い旅」から。

――ところで米中対立など混沌たる世界情勢を「歴史の幕間劇」と評されました。その意味は。
「この講座で歴史をどう扱うかは両大学の判断ですが、私見を言えば、ウェストファリア会議以降に欧州が中心だった『国際社会』は2度の大戦を経て大きく変わりました。グローバル化です。植民地から独立した新興国がメンバーの多くを占め、温暖化対策やコロナ禍のように国境を越えて人間の安全に関わる問題への取り組みが必要な『地球社会』へ変貌した。社会が構成員の福祉と安寧のために存在する以上、国際社会が協調によって秩序を築く流れはとどまることはないと思います」

――しかし冷戦がありました。
「その冷戦を、私はシェークスピアの芝居の幕間劇のように考えます。確かに米ソが戦争をすれば互いに滅ぶという恐怖から均衡が保たれるという、19世紀と同様の『力の均衡』の世界が一時的に出現しました。しかしその間も歴史劇の主題であるグローバル化は着々と進んでいたのです」
「冷戦終結とはグローバル化にソ連の社会体制が対応できなかった『敗北』でした。幕間劇が終わればグローバル化という主題が表舞台に出て、新興国も加わる『第2のウェストファリア体制』と言うべき協調の時代へ向かうはずでした。それが誤解され、米国を中心とする資本主義の『勝利』という考え方が生まれました」

――幕間劇に収拾がつかないまま、今日に至っていると。
「野放しの自由放任主義に統治原理としての正統性が与えられ、協調で国際秩序を築く努力は滞りました。格差拡大への不満から社会の分断が進み、米国では自国第一のトランプ現象が、英国でも欧州連合(EU)からの離脱が起きた。他のEU諸国でも移民や難民の受け入れに国民が反発するナショナリズムが強まりました」
「ソ連の後身ロシアではプーチン長期政権でのクリミア併合に見られるような領土回復主義、中国では前世紀までの植民地支配の屈辱を晴らす復讐主義と、国際秩序を軽視する国民感情が生まれました。ウェストファリア体制前の欧州さながらに、各国が目先の偏狭な利益の追求に走っています」

国際法と国際関係の相互作用

7月20日の朝日新聞オピニオン欄、小和田恒・元国際司法裁判所長へのインタビュー「国際法の理想の長い旅」から。
東京大学とオランダのライデン大学が秋に共同で始める「小和田恒記念講座」について。
――講座の狙いは何でしょう。
「第一に、法の支配に基づく国際秩序への挑戦が冷戦終結から今世紀にかけ台頭した背景と、その克服です。私が終生の実践と研究の対象とする『国際法と国際関係の相互作用』から探ります」
「17世紀の欧州で宗教戦争を和解に導くウェストファリア講和が実現し、主権尊重と内政不干渉を中核に主権国家が併存する近代国際秩序の枠組みが確定しました。ここから発展した近代国際法学には、ユートピアを目指す規範主義的指向が強く、国際紛争の平和的解決を掲げた1899年のハーグ平和会議で頂点に達します」
「これに対し2度の大戦とナチス台頭への幻滅から生まれたのが国際関係学で、ジャングルの掟が世界を支配するという認識に立つ現状肯定的指向が主流です。国際法学が目指す理想と、国際関係学が取り組む現実のギャップを埋める努力がなく、国際社会観を乖離させてきたのではないか。近代以降の歴史の流れを巨視的に見て『国際法と国際関係の相互作用』を的確に捉えることが、世界に安定をもたらす道と考えます」

――「国際秩序への挑戦」と言えば、いま世界は米中対立やコロナ禍で混沌としています。
「歴史は繰り返すと言われますが、私は国際秩序はらせん状に進化すると考えます。今はその進化の途中の『幕間(まくあい)劇』であり、講座ではこの紆余曲折を乗り越える歴史的課題に接近を試みます。国際法と国際関係のギャップを埋めるため、宗教や文化、感情といった人間集団に影響する様々な要因を学際的に探ることも必要です」
この項続く

仏教、解釈の変遷

植木雅俊著「仏教、本当の教え インド、中国、日本の理解と誤解」(2011年、中公新書)を読みました。
お釈迦さんが説いた仏教が、中国、日本へと伝わる際に、どのように変わっていたったか。原典のサンスクリット語と比べて、意図的な内容の変更や誤訳を指摘しています。最も典型的なのが、本来は男女平等だったのが、中国に来て、男尊女卑に書き換えられたことです。

仏教は、お釈迦さんの死後、インドで広がるとともに、さまざまな解釈が広まりました。そして、大乗仏教、小乗仏教(上座部仏教)、密教などに分かれ、さらにその中で分派しました。お経の数は膨大な数になっているようです。日本に伝わってからも、中国に学びに行き、先端の(異なった)宗派を輸入するとともに、鎌倉時代以降、独自の解釈で宗派ができます。

この本は、積ん読の山から、発掘されました。途中にしおりが入っていて、そこまでは読んだ形跡がありました。かつて、船山徹著「仏典はどう漢訳されたのか」(2013年、岩波書店)を読んで、漢訳する際に先生が読み上げる方法だったと知って、驚いたことがあります。

韓国との相互不信

6月9日の読売新聞が、韓国日報社との共同世論調査結果を載せていました。
・・・日韓関係を巡っては、「戦後最悪」と言われる状況に改善の兆しはみられない。日韓関係が「悪い」との回答は、日本で81%(前回2020年調査84%)、韓国で89%(同91%)となり、厳しい見方のままだった。「悪い」は両国ともに3年連続で8割を超え、高止まりしている。
相手国への信頼や親しみについて聞いた質問でも、日韓関係の行き詰まりを反映し、変化はみられなかった。日本で韓国を「信頼できない」は69%(前回69%)で、韓国で日本を「信頼できない」は80%(同83%)だった。相手国への親しみを「感じない」は日本で57%(同58%)、韓国で76%(同77%)に上り、相互不信は固定化している・・・

近年の変化も、図で載っています。日本では、2011年頃までは、良いと悪いが拮抗していました。韓国では、1995年にはかなり接近していましたが、その後は悪化したままです。「質問と回答