カテゴリー別アーカイブ: マスコミ論

行政-マスコミ論

朝日新聞『秘録 退位改元』

朝日新聞取材班著『秘録 退位改元 官邸VS.宮内庁の攻防1000日』を紹介します。
本屋で手に取ったときには、「連載記事を本にしたもの(記事は読みました)」「事実を追ったもの(政治構造を分析したものではない)」と考えて、読みませんでした。
関係者から「次のような視点で読んでください」と助言をもらったので、読みました。
そのような視点で読むと、納得できました。ご関心ある方は、読んでください。

・新聞社がどのような形で取材しているか、取材の過程を明らかにしている
新聞社が日ごろどのように取材しているかは、取材源の秘匿を重視する立場からなかなか明かせないものです。しかし、この本ではできる限り、取材の過程、記者の奮闘、記事にするかどうかの判断についても触れることで、歴史的場面に立ち会う記者の動きや葛藤も含めてリアリティを追求した本となっています。

・内幕と人間模様を描く
新しい元号「令和」が決まるまで、天皇陛下(いまの上皇さま)が退位の意向をにじませてから3年間に起きた出来事について、政府、宮内庁、学者、メディアそれぞれの内幕や人間模様を描きながら、動きを追ったものです。副題が「官邸VS.宮内庁の攻防1000日」となっています。

・天皇と政治の関係
天皇陛下による政治介入か、官邸による天皇の政治利用か、といった微妙な問題と、政権の支持基盤や永田町の権力構造との関連性に触れています。

安倍総理 トランプ大統領 国連演説要旨

9月26日の読売新聞が、1面を使って、安倍総理とトランプ大統領の国連演説要旨を載せていました。
ほかの新聞は確認していないのですが、これまであまり目にしたことはありません。

もちろん、このご時世ですから、インターネットで調べれば、原文を読むことができるのでしょうが。
広く国民に、国連でわが国の首相がどのようなことを発言しているかを知ってもらうことは、重要だと思います。さらに、トランプ大統領だけでなく、主要国の元首がどのようなことを話しているか。
これまでの日本のマスコミは、国際情勢に疎かったです。日本語という障壁に守られて、内弁慶でした。
「国連によって、世界が変わるか」と言われれば、それまでですが。世界では何が課題になっていて、首脳たちは何を議論しているか。それを知ることは、重要だと思います。芸能界のゴシップを追っているよりは、価値があると思います。

質問、再質問

NHKのウエッブニュース「城の石垣 半数以上が「修復必要」」(5月14日)。内容とは異なりますが、質問のあり方について考えました。

・・・NHKは「日本城郭協会」が選んだ日本100名城と続日本100名城を対象にことし3月、アンケート調査を行いました。
石垣のない城などを除く169の城について、管理している地元自治体などに用紙を送り、このうち73%に当たる124の団体から有効な回答を得ました。

はじめに城の石垣に関して日常的な観察や管理を行っているか尋ねたところ、92%に当たる114の団体が「行っている」と答えました。
「行っている」と答えた団体に頻度や実効性について問いかけると、「おおむねできている」が77と多数を占める一方で、「十分にできている」は5か所にとどまり、「あまりできていない」は32と、3割近くに及んでいました。
また、「現在、修復を要する被害や劣化は見られるか」と尋ねたところ、57%に当たる71の団体が「見られる」と答えました・・・

日常的な観察や管理を聞くと、9割が「行っている」と答えます。しかし、頻度と実効性を聞くと、3割はできていません。
これは、参考になります。ほかの問題でも、応用できます。「やっていますか?」と聞くと、「やっています」と答える場合があります。しかし、「では、どの程度やっていますか」を具体的に聞くと、形だけとか、実効的でないことがばれます。この質問は、具体的に聞く必要があります。「よくやっている」「ある程度やっている」といった、曖昧、主観的な選択肢では、意味がありません。

記者会見を見ていても、型どおりの質問をして、型どおりの回答があり、それで終わる、他の質問に移る場合があります。見ていて、残念な気持ちになります。「もっと、突っ込んでくれよ」と。
想定問答を準備している方も、再質問、再々質問を想定しています。突っ込みが足りないと、物足りないです。
その質問で何を聞きたいのか。それを考えて、質問と再質問を組み立ててもらいたいです。
余談ながら。事件や事故が起きたときに、質問に対し「詳細を把握していないので答えられない」「訴状を受け取っていないのでコメントできない」という答えがあります。ぜひ、数日後に、「その後どうですか」と聞いてほしいです。

ニュースと現実と

毎日、新しいニュース(同語反復ですね)が、伝えられます。私たちはそれを見て、世の中の動きを理解します。もっとも、それが世の中のすべてだとか、主流だと思うと間違いです。珍しいからニュースになるので、現実社会はそうではありません。
一つは、現実より先を走っている新しい動きだから、ニュースになっています。ということは、現実はそうではないということです。
もう一つ、その先端的な動きが、その後に主流になるか。そうなるとは限りません。多くの試行錯誤の中で、生き残るのはわずかです。多くの試みは、失敗となって消えていきます。
まあ、子供たちが「みんなが持っているから買って」というみんなは、3人から4人だそうですが。

1月25日の日経新聞オピニオン欄、中山淳史・コメンテーターの「GAFAに負けない稼ぎ方 世界の「分断」が追い風にも」に、興味深い例が載っていました。

・・・例えば、東芝だ。今後力を入れる事業の一つにPOS(販売時点情報管理)レジがあるという。「デス・バイ・アマゾン(アマゾン・ドット・コムによる死)」と言われる時代に今さらPOSか、という指摘もあろうが、現場はそう単純ではない。
小売業界では、インターネットを通じてモノが消費される比率のことを「EC(電子商取引)化率」と呼ぶが、日本のそれは現在、5.7%。米国でも約1割しかなく、リアルな世界の市場の方が経済規模は圧倒的に大きい。
東芝のPOS事業の販売シェアは国内が6割、海外が3割だ。POSを握る同社には楽天やヤフーのほか、アマゾンより多くの消費者データが集まってくる可能性がある。うまく使えば、巨額投資を伴わずにリアルの世界の消費経済を束ねるプラットフォーマーにもなれるチャンスだ・・・

1割の動きだから、ニュースになるのですね。このあと、それが過半数を超えるのか、それとも少数にとどまるのか。そして、どちらを商機ととらえるのか。

新聞記者が語る金融危機の現場体験

朝日新聞夕刊連載「平成とは」に、原真人・編集委員が「金融危機」を書いておられます。1997年の金融危機の話です。
経験のない事態に、金融関係者も記者たちもとまどう様子が、ありありと書かれています。1月22日の「絶対書かないで」。

また、24日の「「ご解約ですか」に寒け」は、別の面から興味深いです。公的資金投入に反対だった社論を、方向転換する。「空気の支配」と「責任ある対応」を、考えさせられる場面です。朝日新聞編集局という知性の集団にあってもです。
・・・事ここに至って事態の深刻さがのみ込めた。「このままでは日本経済は恐慌状態になる」
何をどう報じるか。危機を抱えて年が明け、経済部長やデスク、論説委員、一線の記者らが集まって議論した。政府が検討していた銀行救済への税金投入をどう考えるかが最大のテーマだった。
金融機関への公的資金の投入は不人気政策だ。6850億円を投入した2年前の「住専問題」が尾を引き、新聞各紙はどこも銀行救済に厳しい論調だった。朝日新聞の論説委員室も、反対論を掲げた社説を何本も書いていた。
取り付けを実際に見ていた私は「今は税金をつぎ込んででもパニックを止めないと」と主張した。だが論説委員たちは納得しない。らちが明かないとみた経済部長が私に言った。「それなら君が、私はこう考えるという解説記事を自分で書けばいい」
数日後「公的資金投入は『投資』」という署名記事が載った・・・