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復興庁法案閣議決定

今日の閣議で、復興庁設置法案を決定しました。
復興庁は、内閣府と同様に、内閣を補助する総合調整事務と、個別の実施事務を行います。また、内閣総理大臣を長とし、事務を統括する復興大臣を置きます。これは、総理が長で、官房長官が事務を統括している内閣府と同じです。各省の場合は、長は大臣です。復興庁は、各省より一段高い位置づけになります(国家行政機構での位置づけ)。
大臣を増員するほか、副大臣と政務官(3人)も増員します。出先機関(復興局)を岩手県、宮城県、福島県に置きます。沿岸部は遠いので、支所を置く予定です(組織図)。10年間の時限組織としてあります。

復興庁の役割は、被災市町村の復旧と復興を支援することです。市町村が望んでいることに、応えることができるように設計しました(復興局でのワンストップサービスの図)。
1 復興計画をつくる際に、技術的な助言をしてほしい。→復興庁が中心になって、各省の専門家とともに助言に行きます。
2 規制を緩和してほしい。→復興特区の認定は、復興庁が行います。
3 財源が欲しい。→復興交付金は、復興庁が決定します。
4 地区内で行われる、県事業や国事業、さらには民間(JR等)事業を調整してほしい。→協議会の場などで、調整します。
5 東京まで行ったり、各省の窓口をたらい回しにしないでほしい。→出先機関である復興局で、すべて受け付けます。各省にまたがる問題も、復興局の職員が調整します。本省に相談する必要があれば、復興局の職員がします。市町村職員は、復興局まで来ていただければ、東京まで行く必要はありません。他の国の出先機関に行く必要もありません。
市町村の立場に立った、かなり良くできた仕組みだと自負しています。

ユーロ危機、政治の挑戦と経済の失敗

ギリシャに端を発した欧州の債務危機が、大きな問題になりました。なぜ、こんなことになったのか、いろいろな解説がされています。私は、経済と金融という側面とともに、政治による新しい仕組みへの挑戦と混乱という観点に関心があります。10月28日の日経新聞「つまずいた大欧州」、下田敏経済金融部次長の解説「ユーロ、債務危機の試練。統合優先、粉飾見ぬふり」が、要点を整理してありました。

ギリシャがユーロに参加する前に、関係者は強い懸念を表明していました。ギリシャは財政規律や物価抑制の基準を満たすことができず、実際に参加は2年遅れました。その際も、基準を達成したけれど、数値が粉飾ではないかと、疑われていたのだそうです。その後、ギリシャ政府が「自白」しました。
それでもなぜ、参加を認めたのか。今回の債務問題の震源地であるギリシャ、スペイン、ポルトガルは、長く軍事独裁政権が続きました。1970年代に独裁政権が崩壊しましたが、放っておくと政治体制が揺らぐ恐れがありました。欧州統合で、これらの国に政治的安定をもたらそうとしたのです。
その後しばらくは、EUの中欧と東欧への拡大で、経済が拡大し、問題が顕在化しませんでした。ここに来て、露見したようです。

通貨と金融政策は統合したけれど、財政政策は各国に残るという、現在のユーロ制度に、問題はあります。しかし、完璧を期そうとすると時間がかかります。少々のリスクを抱えつつも、大きな目的に向かって改革に挑戦する。それが、進歩を生むのでしょう。
「こんな危険もある」「こんな恐れもある」といっていたら、改革は進みません。もちろん、被害の大きな改革は進める必要はなく、リスクには備えをしながら改革を進めるべきでしょう。しかし、石橋を叩いてばかりでは、前進はありません。メリットとデメリット、それも現在だけでなく将来を見通して進めることが必要です。

独創的な事業を生む社会

読売新聞10月29日「論点スペシャル」は、先日亡くなったアップル社の創業者であるスティーブ・ジョブズ氏に関して、「和製ジョブズ出るか」でした。坂村健東大教授は、次のように述べておられます。
・・日本は10年前から「IT立国」と言い続けてきたが、存在感が薄い。
技術がないわけではない。例えば、ジョブズ氏の会社の製品が使っている部品の半分以上が日本製だ。消費者からは見えないが、ビジネスという点では、日本の企業も結構うまくやっている。
しかし、これから日本で、ジョブズ氏のような、世界を変革するアイデアや製品が誕生するかと聞かれると、難しいと答えざるをえない。そういう社会ではないからだ。
インターネットの検索ソフトを見ると、良くわかる。日本の企業も、グーグル社より前に開発していた。しかし、著作権問題に抵触するのではないかなどの議論が起き、企業側の腰が引けた。
日本の法律は、ドイツをお手本にした「大陸法」だ。すべてのことが事前に想定され、相互に矛盾なく決めようとする。法律を作ったり、改正したりするには、時間がかかる。それで、世の流れに遅れる。
一方、英米法の考え方は、どんどん進めて問題が起きると、裁判の判例で解決する。スピードが速く、IT時代にふさわしい。
アップル社は、インターネット経由で楽曲を取り込む独自サイトを開設した。曲の著作権を巡って訴訟が起こるとわかっていながら進めた。訴訟もたっぷり抱えたが、事業は大成功した。
日本は、こうした訴訟文化になじまない。裁判になりそうな危ない事業には手を出すなという話になる。
人材の流動性もない。「いい学校」を出て、「大会社」に就職することが良いこととされ、いったん勤めると辞めない。つまり大企業が優れた人材を抱え込んでいる・・
・・法律や制度などを変えない限り、ジョブズ氏のような才能があっても、生かせないだろう。

八戸市意見交換会

今日は、復興大臣のお供をして、青森県八戸市に行ってきました。八戸市も、大震災で津波の被害を受けました。住宅、港湾施設、工場などです。工場や施設の復旧は進んでいます。住宅を流された人たちは、元の場所に家を再建するか、別の場所に移るか、悩んでおられます。難しい決断だと思います。