岡本全勝 のすべての投稿

フクシマ危機時のアメリカ政府の意思決定

月刊『フォーリン・アフェアーズ・リポート』2012年4月号に、前アメリカ国家情報会議の幹部であったジェフリー・ベーダー氏が「フクシマ危機を前にホワイトハウスはどう動いたか―米市民の保護か日米間への配慮か」を書いています。東京電力福島第一原発事故の際に、アメリカ政府はどう考えどう行動したか。日本政府から、情報が十分に伝わらない(日本政府も持っていない)場合に、どのように対応したかが、書かれています。
日本にいるアメリカ市民を対象とした避難地域の設定をする際に、日本政府が設定した半径12マイルではなく、半径50マイルの避難地域を設定したこと(ここには、アメリカ人がほとんどいなかった)。しかし、東京にいるアメリカ市民(約9万人)とその近郊にある横田と横須賀のアメリカ軍とその家族への避難指示は、難しい課題であったこと。すなわち、アメリカ大使館関係者や米軍の家族は避難を望み、一方でアメリカ政府が避難勧告を出すことの日本社会へ与える「非常に大きな衝撃=パニック」の可能性をどう考えるかという難問。そして、最悪のシナリオを考え、緊急避難計画を立案すること、それが漏れた場合の対処。
勉強になります。また、その担当者が、そのプロセスを公表することも。詳しくは、原文をお読みください(『フォーリン・アフェアーズ』は英語誌ですが、私は日本語訳の『フォーリン・アフェアーズ・リポート』で読んでいます。といっても、読まないうちに次の号が届きます。反省)。

スーパーで考える、哲学と接客

今日の東京は、良い天気でした。近所のスーパーマーケットに、「お客様の声」という掲示板があります。買い物客が投書した「意見書」と、それに対する「店の回答」が貼ってあります。キョーコさんが「勉強になるわよ」と言っていたので、見てきました。
一つ目の投書は、「福島県産の卵ばかり置いてあります。被災地を応援しようということは理解できますが、そうでない人もいます。前のように西日本の卵も置いてください」でした。店の答は「福島県産の他に、××県(西日本の県)の卵も置いてあります」でした。
もう一つの投書は、「近くの別のスーパーでは、同じ品がより安いです。レシートを貼っておきます(実際に、レシートが貼ってあります)。お宅の従業員もあの店で買っているのを、よく見かけます」という趣旨でした。どう答えるのかなと見たら、「仕入部に伝えます。一度、お目にかかってお話を聞かせてください」でした。

外国人が日本で買っていく物

外国人観光客が、日本で買っていく物はなんだと思いますか。日経新聞電子版の「映像ニュース」が伝えていました。「映像ニュース」の「話題・特集」から、「秋葉原で外国人に人気の商品」(前編)(後編)をご覧ください。
かつて日本人のヨーロッパ旅行の土産は、お酒、たばこ、チョコレートでした。その後、ブランドものの鞄やネクタイ、時計などに変わりました。アジアの人たちが日本で買っていく物には、意外なものがあります。
あなたなら、外国からのお客さんに何を勧めますか。私は文化的なものだと、東京国立博物館のミュージアムショップが、外国の方におもしろいのではないかと、紹介していました。他には、スーパーマーケット、ドラッグストア、文房具店などが、日本人の現在の暮らしを見てもらえるので、お勧めかなと思っています。
「これぞ日本だ」というものが思い浮かびませんが、和菓子屋さんも良いですよね。もっとも、生菓子は持ち帰ることはできませんが。

日本の移民対策

宮島喬御茶ノ水大学名誉教授が、東大出版会PR誌『UP』5月号に、「地方の時代と国際化」(連載「四半世紀の国際化、多文化化をみつめて」第4回)を書いておられます。先生は、日本での移民(定住外国人)問題について発言をしてこられました。
・・欧米でも移民の受け入れに地方の果たす役割は大きい。カナダでは・・ドイツでは・・イギリスも・・。
しかし同時に、受け入れの理念、政策、移民の権利や給付につき国が基本方針を示すのは当然で、たいていその主務官庁も決まっている。担当の大臣はメディアにも頻繁に登場し、国の方針を語る。だが、日本では国家の顔がよく見えない。訪れる外国人研究者から「移民の統合政策を担当するミニストリーはどこか」と尋ねられて、答えに困るのである・・

この問題については、「2009年11月15日の記事」で取り上げ、内閣府に定住外国人施策推進室が設置されたことを紹介しました。しかし、まだ世間での認知は薄く、先生の指摘のような状態が続いています。マスコミの政治部記者でも、何割が知っているでしょうか。
ここには、定住外国人(移民)にどう対応するかという方針の問題と、それを政治の課題として扱うかどうかという二つの問題があります。もちろん二つは関連しています。そして、課題を解決するためには政策をつくるだけでなく、それを所管する専門組織が重要です。「あまり受けない問題」は、とかく置き去りにされがちです。これを日本の中央政治と行政の「機能不全」というのは、言い過ぎでしょうか。
外国での事象には「移民」という言葉を使いながら、日本国内での事象には「移民」をあまり使わず、「定住外国人」と呼ぶことが多いのも、何かしら意図があるように思えます。

鎌田先生の新著

京都大学の鎌田浩毅先生が、またまた新著を出されました。『次に来る自然災害』(2012年、PHP新書)。
先日、私がこのHPに「坂野潤治先生が、1937年(昭和12年)が、日本が危機の時代から崩壊の時代に入る区切りの年と位置づけている」と書きました。鎌田先生によると、それと対比して、「まさに昨年の2011年が、地球科学的にも「大地動乱の時代」に突入した区切りの年」なのだそうです。以下、先生からのメールです。

・・歴史的には1945年にやってきた「崩壊」を、未来の日本で少しでも軽減するため、今から出来ることは何でもしなければなりません。具体的には、首都機能分散、たとえば各地方にバックアップ拠点としての「危機管理都市」をつくること、及び2030年代に起きる「西日本大震災」(東海地震・東南海地震・南海地震の三連動)への対処、を直ちに開始しなければならない、と私は考えます。
これは地球科学者からの緊急メッセージで、拙著の新刊の主要テーマでもあります。
なお、本書は「週刊東洋経済」に1年間連載した「ビジネスパーソンのための地球科学入門」をまとめたもので、「3・11」後に予想される地震・噴火 ・気象災害を解説した前編です。「エネルギー資源」「地球環境と生命」を扱った後編は、6月に出ます。
東日本大震災はいまだ終わっておらず、むしろ「巨大災害の世紀」が幕を開けてしまったのです。安全を約束された場所は、残念ながらこの国にはありません。歴史学者と地球科学者が連携し、「3・11」の教訓を未来に向けて活用する必要があるのではないか、と私は考えています・・

鎌田先生は、NHKテレビBSプレミアム「世界!旅する!グレートネイチャー」55日(夜7時~830分)にも、出演されるそうです。