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NPOの貢献

11月5日の朝日新聞連載「限界にっぽん、福島が問う政府」は「避難町民、結束へNPO」として、NPOの活躍を取り上げていました。
その例として、福島県浪江町からの避難民でつくっているNPO法人「まつづくりNPO新町なみえ」が取り上げられています。この団体は、全国に散らばった避難者の交流に力を入れ、孤独死も防いでいます。
・・全国に散らばった人たちをつなぐ役目を政府が担いきれず、その穴を町民自らが始めたNPOが埋めている・・
復興庁で非常勤職員を勤めてもらっている田村太郎さんが、「お雇い民間人」として紹介されています。
・・活発にうごくNPOなどの民間団体の力を生かそうと、政府も模索している・・
・・2年前後で異動をくり返す霞が関では、そもそも専門性にすぐれた人材は生まれない。民間の専門家との協力は欠かせないはずなのに、十分にできていないのは「政府も民間を信用していないから」。民間は言いたいことだけ言って責任をとらない、といった意識が政府には強いという。
・・「おたがいに不信をもつ政府と民間のあいだには『通訳』が必要なのに、それができる人材が足りない」と湯浅(誠)さんは話す・・
記事には、福島を支援している団体の活動例や、NPOと行政を比較した特徴の差を整理してあります。原文をご覧ください。
復興庁では、ボランティア活動やNPOの活躍に期待をしています。役所ではできない、やりにくい分野があります。また地域の復興は、行政だけでできるものではなく、企業やボランタリー・セクターの役割も重要です。このホームページでは、繰り返し主張しています。「被災地から見える「町とは何か」~NPOなどと連携した地域経営へ~」にも、詳しく書きました。先日の総理大臣の所信表明演説でも、触れていただきました。
復興庁では、「ボランティア連携班」をつくって、田村さんのようなNPOの「復興関係のプロ」に来ていただき、助言をもらっています。記事が指摘するような「官僚や行政機構の欠点」は確かにあります。反省しなければなりません。それを、少しずつ打破したいのです。
まだ取り組み始めたばかりですが、関係者の理解と協力を得て、成果を出していきたいと考えています。リュックサックを背負った個人ボランティアの活動は、広く認知されているのですが、NPOの活動はまだ理解が少ないです。マスコミも、NPOの活動をどんどん報道してください。

大震災による企業倒産、今回の災害の特徴

10月29日に、帝国データバンク(民間調査会社)が、東日本大震災の影響を受けた企業倒産件数を発表しました。先日、各紙が伝えています。
1年7か月で、1,000件に達し、阪神大震災の同時期(291件)と比べて、約3.4倍の早さになっています。規模がはるかに違うのです。
地域別では、関東が約5割です。また、中部や九州でも件数が多く、大震災が消費や物流に与えた影響がわかります。
直接被害は、85件で約1割です。社屋の倒壊や津波の浸水被害です。残りの9割は間接被害で、買い控えや自粛による売り上げ低下(小売り・サービス業)、物流網の混乱による調達難(建設・製造業)、得意先が被災したことなどです。ここでも、消費や物流(サプライチェーン)への影響が大きいです。今回の災害の特徴が、現れています。
業種別では、旅館・ホテルが最も多いです。これは、観光客、それも全国的な外国人観光客の現象の影響でしょう。次いで内装工事、土木工事、貨物自動車運送が多くなっています。
倒産企業の従業員数は、正規雇用で1.6万人です。非正規を含めると、2.4万人と推計しています。
原発関連倒産は、90件あります。野積みしていた商品が放射能汚染を受けて輸出が減ったこと、停電によって温度管理ができず培養していたキノコの品質が悪化した例もあります。

回復が進む被災地の農畜産物

11月1日の日経新聞夕刊が、「被災地の農畜産物、回復。復旧進み、風評被害も緩和」を書いていました。
・・宮城、福島、岩手各県のコメや牛肉などで、震災前の2010年の出荷量や市場価格に届き始めたものもある。津波の被害を受けた農地の復旧が進んだほか、原子力発電所事故を巡る風評被害が緩和しつつあることも要因だ・・
福島県のモモ(全国2位)は、この夏の京浜地区での卸値が平年並みに回復。福島県のリンゴ(全国5位)は、京浜地区での卸値が昨年の1.4倍に。宮城県のコメ(全国7位)は、今年の収穫量が1昨年の98%に回復。岩手県の肉用牛(全国7位)は、東京中央卸売市場での卸値が全国平均を上回りました。
元気が出るニュースです。マスコミには、このような分析記事も書いてほしいですね。
農林水産業は、この地域の主要な産業の一つです。もちろん、まだ復旧していない農地や漁業、風評被害に悩む産品もあります。

避難解除区域のインフラ復旧計画

11月2日に、福島県楢葉町と飯舘村の、公共インフラ復旧工程表を公表しました。すでに8月には、広野町、田村市、川内村、南相馬市について公表済みです。
楢葉町は8月に警戒区域を見直し、避難指示解除準備区域となりました。町内全域が20mSV/年なので、住民は帰還が可能です。しかし、インフラが復旧しないと生活はできません。また、海岸部では津波被害を受けています。そこで、除染は平成24年、25年度で実施し、内陸部は24年度から工事に着手、津波被害地域は25年度に計画を作ります。
飯舘村は応急復旧は終わってるのですが、本復旧が必要です。放射線量が20mSV/年以下のところと、超えるところがあります。まず除染を、村の西側(線量の低い地域)から行い、インフラの復旧は平成25年度から本格化させます。
市町村と、県と、国とが協力して、復旧させます。
工程表では、対象事業別に、さらに施設別に、時期を明示した矢印で示してあります。これで、関係者は「いつ、どこが復旧するか」見ることができます。しかも、ホームページに載せてあるので、いつでも・誰でも・どこからでも、見ることができます(楢葉町の例、後ろの方のページを見てください)。
復興庁では、避難した12市町村ごとに、参事官を責任者としてチームを作り、各市町村と打ち合わせて課題を解決しています。一方、課題ごとに(インフラ復旧、町外コミュニティ、避難者支援など)、参事官を責任者とする班を作っています。この地域割りと業務割りの掛け合わせで、仕事を進めています。
そして、それらの参事官と職員を、「大福島班」としています。参事官も職員も、一人で何役も兼ねていること、そして現地に行かないと仕事が進まないので、大忙しです。

災害関連死調査、第2回

今日11月2日に、災害関連死の数(第2回)を、公表しました。9月末までの、約1年半の間の数です。合計で、2,303人です。前回(5月に)、3月末までの数を、1,632人と発表しました。今回の調べでは、3月10日まで(1年以内)は、2,263人です。認定が進んで、増えたということです。1年を過ぎてから、これまでの間(この半年間)は、40人です。
最初の半年で2,014人、次の半年間で249人ですから、新たな死者数は大幅に減りました。しかし、1年経過してもなお40人もの方が、亡くなっているのです。
あの大震災を逃れることができたのに、その後お亡くなりになっています。40人とか2,300人とか数字で語ってしまいますが、一人一人かけがえのない命です。
原因を調べるため、詳しい調査を行うこととしています。