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国勢調査ができない国

1月30日の朝日新聞に、「ボスニア・ヘルツェゴビナ、国勢調査また延期へ」という記事が載っていました。1991年に実施して以来、国勢調査ができないのです。
ボスニア・ヘルツェゴビナでは、1992年から95年まで、激しい内戦が続きました。1995年の和平合意による現憲法は、3つの民族の均衡を定めています。議会や政府は、ボシュニャク(モスレム)人、セルビア人、クロアチア人の3民族から均等に選ばれることとなっています。国勢調査で、3民族の人口比が異なる結果が出ると、この憲法と政府の正当性が疑われることになります。
しかし、国勢調査がないと、人口も年齢分布もわかりません。いろいろと困難なことがあるでしょうね。何か別の手法で、国民を把握しているのでしょう。でないと、税金徴収や行政サービスができません。

被災地で活躍する任期付き職員

日経新聞1月29日夕刊に、被災自治体で活躍する任期付き職員が、紹介されていました。被災自治体では、復興のための業務が膨大になり、職員が不足しています。全国の自治体から、約1,700人もの応援の職員が入っています。これも、これまでにない仕組みです。
それでも足らないので、臨時に公務員を採用しています。それぞれの市町村役場が採用している場合、県庁が採用して送っている場合、他県の自治体が採用して送っている場合があります。
記事では、都市計画コンサル会社から東京都に採用され気仙沼市役所に派遣されている職員、東京の弁護士や大阪の大学の研究者からの転職者が紹介されています。このように、出身は様々です。
彼らの活躍が、マスメディアで紹介されると、働く人たちも元気が出ます。引き続き採用をしています。情報はこちら

アイデアと風

1月が終わりました。新政権が発足して、約1か月です。この間に、復興庁では、総理の指示により施策を総点検し、大きな見直しをしました。29日の記事にも書きましたが、「5年間の財政枠の見直し」「福島復興再生総局の設置」「24年度補正、25年度当初予算での新たな施策」の3つが、成果です。
総理指示が出たときは、課題の大きさに頭を抱えましたが、短期間の間に答えを出すことができました。その要因の一つは、総理指示という「重さ」。そして「時の勢い」も挙げることができます。担当者だけでなく、周辺の関係者も「少々無理をしても、やらざるを得ない」と思ってくれるのです。
もちろん、「風」だけで、成果が出るものではありません。普段からアイデアを温めておくこと、現状を頭に入れつつ、その「風」をどう利用するかが重要です。風が吹いていても、間違った帆を上げると、船は逆走したり、転覆します。穴が空いた帆では、船は進みません。
今月も、あっという間の1か月でした。正月を入れて、4日休みをいただきました。成果が出たので、良しとしましょう。国会が開かれたので、職員たちは引き続き残業をして、答弁資料を作っています。

戦争の歴史

マイケル・ハワード著『改訂版 ヨーロッパ史における戦争』(2010年、中公文庫)を読みました。数週間前に読み終え、このホームページで紹介しようと考えていたのですが、パソコンの前に放置してありました。中世から現代までの戦争を、小さな書物で解説することは、とても難しいことです。大胆な切り口で分析と分類をしないと、収まりません。この本では、次のような視角で、時代を追って分類しています。
封建騎士の戦争、傭兵の戦争、商人の戦争(交易と海賊)、専門家の戦争(専門的軍隊の出現)、革命の戦争(ナポレオンの衝撃)、民族の戦争(民族国家の成立)、技術者の戦争(第1次大戦)。
わかりやすいです。戦争の歴史というと、軍事技術の歴史を想定しますが、技術以上に、各時代の戦争がその時代の社会・政治・経済を反映した、それが許す範囲内でのものであったことがわかります。

仮設住宅暮らしの心得

復興庁のボランティア連携班で助言をいただいている田村太郎さんが、「2回目の冬を乗り切るために~被災された方々を取り巻く環境のメンテナンス」を、書いてくださいました。
仮設住宅は、あくまで応急のものです。2年を想定していますが、多くの地域で、それ以上の入居が予想されています。補修もしてはいますが、傷みも出ます。それ以上に、生活環境として良いものでもありません。「生活の心得」は、役人では思いつかない発想です。ありがとうございます。
各市町村が、高台移転や土地のかさ上げを急いでいます。なるべく早く新しい家を建てる、その見込みを立てることが、重要です。