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雇用と賃金の開国

朝日新聞4月29日連載「限界にっぽん、超国家企業と雇用」は「フラット化する賃金」でした。
中国大連にあるIT企業が、日本の大手システム開発会社からソフト作りを請け負っていることが、紹介されています。そして、大連のシステムエンジニアの賃金が日本国内の半額であること、それが日本のシステムエンジニアの賃金を引き下げたり失業に追い込んでいることが指摘されています。
国際化は、カネやモノが国境を越えるだけでなく、雇用も国境を越えます。すなわち、労働者が移動しなくても、仕事を海外に発注することで、雇用が海外に流れ出します。産業の空洞化の一面です。すると賃金が「国際化」して、より安い国に引きずられます。「賃金の開国」です。
福岡県内では日産自動車の工場に、日本と韓国の両方のナンバーを付けた大型トレーラーが、韓国から部品を運んできます。「九州日産」は日産本体から分離され、給料は別体系になっています。すると今後の給与水準は、横浜の日産本社とではなく、アジアの水準に引きずられます。
記事には、2001年と2011年の正社員の年齢別賃金がグラフで出ています。10年間で給与が下がっていること、55歳以上で急激に下がることが示されています。この給与が上がらないことが、これまでのデフレの主犯であり結果です。

ネクタイの消費量半減

5月2日の毎日新聞に、「消える?ネクタイ」という記事が載っていました。
業界の調べでは、ネクタイの生産・輸入量は、1991年の5,600万本に対し、2011年は2,900万本です。半減です。うち国内生産は570万本で、1988年の4,700万本から8分の1に減っています。
私にとって、驚きの事実は次の通り。
・20年間で、消費量が半減したこと。成人男性の数は、そんなに減っていません。
・減った理由として、クールビズが挙げられています。でも、それだけでしょうか。もう一つの大きな理由は、贈答品が減ったことではないでしょうか。ネクタイは、自分で買うより、奥さんや恋人からもらうもの、取引先や飲み屋のママからもらうものが多かったのだと思います。
輸入先は、イタリアとフランスだと思っていたのですが。2011年では、中国が2,140万本、イタリアが165万本、フランスが108万本、韓国が137万本です。
・輸入に比べ、輸出はどうなっているのでしょうか。

規制委員会は業界から嫌われるべき

朝日新聞3月6日オピニオン欄「原発安全の番人」グレゴリー・ヤツコ前アメリカ原子力規制委員会委員長の発言から。
「日本の原子力規制委員会は、NRCをモデルにして原発を推進する省庁と切り離しましたが、電力業界から不満や批判もあるようです」という問に対して。
・・業界の人たちが不満を持っているのなら、たぶんいいことです。規制当局にとって最も大切なのは、許認可の意思決定の際、独立して判断が下せる能力です。日本には今、それがあると信じます。
それには、自らが技術的な専門家集団でなくてはなりません。そうでないと、他の人たちの情報に頼らざるを得なくなる。規制当局の存在意義とは突き詰めると、事業者が自らノーと言いたくないことに対して、時にノーを言うことです・・
古くてすみません。連休中に資料を整理したら、切り抜いてあったのが出てきたので。でも、この主張には納得します。

特区制度による効果

復興特区制度で、被災地での企業投資を促しています。制度創設以来約1年間の効果をまとめました。それによると、投資額は約1兆円、雇用は6万4千人です。それぞれ予定の数ですが、結構な成果が出ています。
いつも述べていますが、制度は作ったらよいというものではなく、また指定した件数で測るものでもありません。どれだけ効果が出たかで測るべきものです。

大型連休終了

大型連休が終わりました。皆さん、充実した休日を過ごされたことでしょう。一部の地域では天候が荒れましたが、比較的天気に恵まれたようです。
私が行ったある美術館は、長蛇の列ができていました。30分並んで入ったとしても、あの小さな空間にこれだけもの人が入ったら、絵を見るどころか人の頭を見に行くようなものだと悟り、断念。
15年ぶりに行った(誘ってくれた息子の記憶)高尾山は、新宿や銀座より込んでいて、山道の所々で登山者が渋滞を起こしていました。朝早く出発し、麓から頂上までケーブルカーに乗らず歩いたので、待ち時間はなし。体力と下りの際の膝に不安がありましたが、歩き通すことができました。浄心門には、「大震災復興」の額が掛かっていました。
私は、谷間の平日3日と数日の休日出勤だけで、お休みもいただきました。手帳を見ると、昨年はカレンダー通りに、休みをもらいました。一昨年は大震災直後でもあり、とても休める状態ではありませんでした。
おかげさまで、仕事や頭の整理ができました。仕事の進め方については考えがまとまり、指示書も作ったので、職員のメールに送り込んであります。例によってたまっていた資料や新聞切り抜きを、だいぶ片付けました。復興庁の私の部屋と自宅の書斎は、かなり資料を捨てたので数センチ浮き上がったでしょう(笑い)。
さらに、思いついてメモにしてあったいくつかのテーマ(行政論)を、ゆっくり考えることができました。時間があるときにしかできないので、これは収穫でした。もっとも、読もうと思っていた本はそれほどはかどらず、書き始める予定の原稿もだめでした。一つの本を読み出すと、次々と興味が広がって、あれこれと手を広げてしまいます。
そもそも、遊びに行く、おいしいものを食べる、本を読む、原稿を書くをすべてやろうと考えることに、無理があります(苦笑)。いつものことながら、欲張りと好奇心が多すぎることを反省。それなりに充実した休みだったことに、満足しましょう。この間も皆のために働いておられる、警察、病院、交通、商売など多くの方に感謝します。