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原災本部会議

今日20日、官邸で原子力災害対策本部が開催されました。先日(12月11日)書いたように、原発事故災害の後始末は、原災本部の所管です。会議では、「第一原発での廃炉・汚染水対策」と、「原子力災害からの復興の加速」が報告され、決定されました。
このうち「原子力災害からの復興の加速」は、内閣府の原子力被災者支援チーム(実質的には経産省)が担当しています。「ポイント」を見てもらうと、概要がわかります。
これまでに、原子力規制委員会が「線量水準に応じた防護措置」を検討し、原子力損害賠償紛争審査会が「賠償の追加」を検討してきました。また、経産省では、汚染水問題への対応を検討してきました。それぞれが、結論を出し、あるいは結論を出す準備に入っています(P1)。
それらを踏まえての、今回の決定です。「早期帰還支援と新生活支援の両面からの支援」については、帰還可能な地域についての取り組みと、新たな生活の開始に向けた支援を示しました(P2)。そのほか、事故収束(廃炉・汚染水対策)や、国と東電の役割分担の明確化(P3、4)も決められました。
また、今回の決定は、11月に与党から出された提言への、現段階での回答になっています。
この地域の方に、避難指示を出したのは原災本部なので、それを解除することも、対象となった方々のお世話も、原災本部の責任です。そして、地域の復興や帰還への準備、帰還までの避難の支援を、復興庁が担います。
今回は方針を示したものも多く、これから順次、実行していくことになります。一気に全てが片付くものではなく、また全てのスケジュールを示すことができるものではありません。線量の減少状況、除染の進捗状況、インフラの復旧や商店など再開状況、そして住民の帰還状況を踏まえて、地区ごとに計画を立て、随時計画を改定していく必要があります。市町村や県と一緒に、進めていきます。
それを進める予算として、「福島復興加速化交付金」を平成25年度補正予算案で512億円、26年度当初予算案で1,088億円、合計1,600億円用意しました。

現地視察

昨日18日、今日19日と、衆議院復興特別委員会の現地視察に同行していきました。昨日は、東電福島第一発電所(正確には元発電所でしょうか)へ。第一原発へは、久しぶりです。所長は、3代目の方に交代しておられます。
免震重要棟での説明の他、多核種除去装置(アルプス)や汚染水漏れ対策の現場も見るので、バスから降ります。そこで、防護服のほか、面体(顔を覆うプラスチックカバー)もつけるという重装備でした。面体をつけると、圧迫感があって苦しいです。
半日構内にいて、私が浴びた線量は、累積で30マイクロシーベルトでした。レントゲン写真が1回で50マイクロで、ニューヨーク往復の飛行機が200マイクロです。
4号機の燃料取り出しのための上屋も、できてから見るのは初めてです。汚染水を貯めるタンクが林立しています。
廃炉作業は、進みつつあるようです。しかし、構内の雑然さや、免震重要棟内外の仮設状態は、相変わらずです。所長もおっしゃっていましたが、これまでは緊急対策に追われていました。施設が仮設なのです。これから30年以上かけて廃炉作業をするには、まだまだ片付けや恒久的な施設への拡充が必要です。
1日に、4,000人もの作業員が入っているとのことです。しかし食堂や休憩所が完備されていません。作業員の方の苦労には、頭が下がります。
今日は、陸前高田市と気仙沼市へ。高台移転や土地のかさ上げ工事が進んでいました。しかし、住宅が建つまでには、まだまだ時間がかかります。なにせ、山を切り開いたり、町全体を何メートルも盛り土するという、広範囲な大工事なのです。

日本の政治は機能している

12月16日の読売新聞が、日本とアメリカの共同世論調査結果を載せていました。中国や韓国との信頼関係が大きく取り上げられていますが、次の点が興味深かったです。
すなわち、自国の政治システムがどの程度機能しているかを聞いた問です。
日本では、機能しているが52%、機能していないが45%です。無党派層でも41%が機能していると答えています。他方、アメリカでは、機能していないが68%にもなり、機能しているは31%です。
これまで、何となく日本の政治は機能していないと批判され、アメリカはよいと言われてきましたが、意外な結果になっています。「欧米は進んでいる。日本は遅れている」といった100年続いてきた「定型批評」に、変化が出ているのでしょうか。

人間は、自然と社会を理解でき、制御できる

佐藤俊樹著『社会は情報化の夢を見る―“新世紀版”ノイマンの夢・近代の欲望』(2010年、河出文庫)を読みました。この本は、『ノイマンの夢・近代の欲望―情報化社会を解体する』(1996年、講談社選書メチエ)を増補・改訂したものです。
元の本を読んだときに、佐藤先生は「いつもながら鋭いなあ」と感心しました。先生は、『不平等社会日本ーさよなら総中流』(2000年、中公新書)で、現在の日本の不平等論に、火をつけられました。
IT技術が、急速に発達しています。「情報化社会」や「高度情報化社会」という言葉が、はやり言葉になって久しいです。20年ほど前に、「3K」という言葉が、はやりました。高齢化、高度情報化、国際化です。「それによって社会が変わる。行政も、それに対応しなければならない」という主張でした。
先生は、ものの見事に、その情報化社会の「夢」を、打ち壊します。すなわち、IT 技術が、社会を変えることはない。社会の方が、技術の使い方を規定する。そして、IT技術の進歩は、情報化社会の到来をもたらさない。これもまた、近代産業社会の中での出来事(商品)でしかない、とです。興味ある方は、ぜひお読みください。情報化論と言うより、社会学です。しかも、元の本が出て15年経っても、状況に大きな変化はありません。その比較については、本をお読みください。
さて、私がこの本を読んだ(読み返した)のは、この主張とともに、次のような先生の主張を、確認したかったからです。
一つは、近代産業社会は、人間が科学技術の力を借りて、自然を支配できると考えるようになった。あわせて、社会技術によって社会を制御できると、信じたということです(p212)。
私が少し敷衍すると、近代と中世の違いは、科学革命です。自然界も社会も、中世に信じられていたような、理解不能な神の摂理や、神の恩寵で動いているのではない。そこには、科学的な法則があるという思想へと、転換しました。
自然科学は、自然の法則を発見し、自然界を制御できるという思想に成り立っています。物理学、化学、生物学、天文学、医学、工学・・。
社会科学も同様に、社会の法則を発見し、社会を改良し、制御できるという思想に立っています。政治学、法律学、経済学、社会学、教育学、歴史学・・。もっとも、自然科学・科学技術に比べ、社会科学・社会技術は社会を制御する点において、良好な成果を挙げたとは言えませんが。
この項続く

区民意見交換会

今日は午後から、杉並区役所の意見交換会に行ってきました。テーマは、使用料の見直しと、区立施設の再編計画です。
54万人区民のうち18歳以上の48万人から、無作為抽出で1,000人が選ばれました。その人たちに参加の意向を聞き、50人ほどの人が選ばれたとのことです。なんと、私も当選したのです。宝くじも当たらないし、小田急デパートの福引きも外れだったのに。ある身近な人が、先日懸賞で外車が当たったということに比べ、えらい違いです(苦笑)。
地方行政を専門としてきているのに、これを拒否するわけにはいかず、仕事も入っていなかったので、参加しました。すると、コメンテーターに、明治大学の牛山久仁彦教授がおられて。ははは、ばれてしまいました。
参加した約40人が2グループに分かれ、さらにそれぞれが3班に分かれて、2つのテーマを議論し、意見や結論を紙に書き出して発表します。私は持論を述べてはいけないので、司会を引き受けました。それでも、発言しましたが。
最初に自己紹介します。年齢や職業は、さまざまなでした。ただし、若者や中年は少なかったです。
議論して、大方の意見は、値上げ賛成、再編賛成でした。別々に議論したのに、その結論や出た意見が似通っていて、あとからの発表者が「我が班も同じです」ということになりました。ある人曰く、「反対者は、一人もいないのかね」と。私も意外でした。
みなさん、サービスに費用はかかること、無料はあり得ないことを理解しておられます。それどころか、高齢者の方が、「高齢者には受益者負担をしっかりとって、若者につけ回しをするな。子育てには、税金をつぎ込もう」と発言しておられました。区長や区役所にとっては、心強い結論や発言だったと思います。
区長の説明では、料金値上げは数十年放置され、施設計画は昭和40年代にできたものだそうです。子どもの数は、半減しています。区長は「選挙があるので、どうしても値上げや施設の再編(厳しい方の)は、やりにくい」とも言っておられます。その通りです。ある参加者が「来年、区長選挙があるのに、値上げの議論をするのかね」と指摘しておられました。でも、責任ある政治が進むことは、良いことですよね。
このように、住民の意見を聞くことは良いことです。住民に実情を理解してもらうことも。私も、計画を初めてまじめに読みました。でも、値上げって、区議会の重要な仕事なのですが。
NHKも取材に来ていて、17日の夕方の地方ニュースで放映されるそうです。