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復興推進会議

今日、官邸で復興推進会議(全閣僚等の会議)を開きました。今回のテーマは、この1年間の取り組みとその成果、もう一つは、平成26年度の取り組み方針です。それぞれ簡潔にまとめてあるので、ご利用ください。津波被災地域では、高台移転などの計画が出そろい、工事が本格化します。原発事故被災地では、区域ごとの方針とそれを進める道具立てが出そろい、早期帰還や長期避難者の生活拠点の整備事業が本格化します。
このほか、定期的に改訂している「復興の現状」(23ページ)、「復興の取り組みと関係諸制度」(83ページ)も、大きく見なおしました。事業が進むと課題も新しくなるので、これまでの資料ではピントがずれるのです。がんばってくれた職員に、お礼を言います。
さて次は、ここに示した施策を、着実に実行することです。もちろん、現場では、さまざまな課題が生まれます。

ニクソンとキッシンジャー外交、2

現実主義というと、現実にとらわれ、現状を所与のものと考える、と思ってしまいます。すると、何も変えることができません。
そうではなく、理想は直ちには実現できないが、各国の利害が錯綜するなかで、少しずつ理想に近づける・自国の利益を進めるというのが、ここに言う現実主義です。そこでは、現実に流されるのではなく、何ができるかを想像し、策を打っていきます。その反対は、想像力がなく、現実に流され、その場限りの取り繕いをする「その場主義」でしょうか(反省)。
彼らの現実主義は、想像力を持って、かつ現実的な対策を打つという、能動的なものです。理想主義と同様に、理想は持っています。違いは、できることから行うのか、できないことを言うのかの違いでしょう。
政治を、可能性の空間と考えるか、決められたこと・運命と考えるかの違いです。「政治とは可能性の技術である」とは、ドイツの大宰相ビスマルクの言葉です。そのためには、想像力の大きさと、打つ手の確実さが必要です。これは、大政治(ハイ・ポリティクス)に限らず、どの世界も同じでしょう。
さて、本書は、新書版の分量で、ソ連との戦略兵器削減条約、米中和解、ベトナムからの撤退という大きな外交戦略を分析しています。その結果、わかりやすいですが、生々しさまでは書けていないようです。
ところで、二人三脚で進められたニクソン・キッシンジャー外交ですが、2人はかならずしも仲が良かったわけではありません。これについては、カール・バーンスタイン、ボブ・ウッドワード著『最後の日々―続・大統領の陰謀』を紹介しました(2013年3月20日の記事)。

さりげなく応援

このような、被災地応援もあります。
一月前、12月13日の新聞朝刊に、夜、めがね橋の上を通る列車と、その下の川岸でチェロを演奏する女性を写した広告が載りました。会社の名前だけが書かれていて、他に宣伝もなければ、どこかという場所の説明もありません。
でも、私は見た瞬間に、ぴんときました。「いつも通っている、あの場所だ」と。東北新幹線を降りて、釜石に向かう途中に(2時間半かかります)、いつも休憩する道の駅から見る風景でした。
調べたのですが、ソニーのホームページには出ていません。ようやく、動画を教えてもらいました。この動画の19秒ごろに、出てきます。遠野市宮守にある、宮守川橋梁です。新聞広告では女性演奏者で、それも幻想的でした。

ニクソンとキッシンジャー外交

大嶽秀夫先生の『ニクソンとキッシンジャー 現実主義外交とは何か』(2013年、中公新書)を紹介します。
私は若いとき、ニクソン外交、特に米中和解(1971年)を見て、これはすごいと感心しました。当時は、キッシンジャーがやっているものだと、思っていたのですが。
その後、ニクソンは、ウォーターゲート事件で失脚します。しかし、ニクソン著『指導者とは』を読んで、さらに感心しました。拙著『明るい係長講座』で、『指導者とは』を引用したこともあります。なお、『指導者とは』は、文春学藝ライブラリー文庫で、復刊されました。
ニクソンとキッシンジャーが展開した現実主義外交の内容は、本書を読んでいただくとして。当時、米ソ対立・共産主義対資本主義という構図でとらえられていた国際政治構造を、米ソ中の対立構造に変えたのです。これには、世界中がびっくりしました。誰にも知らせない秘密外交が、その衝撃を大きく演出しました。
国際政治でいうと、その後、1989年のベルリンの壁の崩壊と共産主義の崩壊も、予想していなかったので、びっくりしました。
ところが、このように、現実の世界では、予想もしていないこと、できっこないと信じていることが、起きるのです。もちろん、そこにはそれを仕掛ける人がいて、それを成り立たせるだけの経済政治社会条件がある(後でわかる)のですが。
また、2人は、泥沼のベトナム戦争から撤退します。これには、相手(北ベトナムや南ベトナムなど)のほかに、国内対策も困難な要素でした。それを、どのように乗り越えていったか。2人の作戦を、読んでください。
この項続く。

御厨貴先生の研究録

御厨貴先生が、『知の格闘―掟破りの政治学講義』(2014年、ちくま新書)を出されました。2011年9月から12年2月まで、6回に分けて行われた、東大最終講義の記録です。
いや~、おもしろいです。といったら失礼になりますが、先生は許してくださるでしょう。一気に読み終えてしまいました。
先生による、40年近くに及ぶ学者生活の「自叙伝」です。次のように、先生のこれまでの活動が、整理されています。
1 権力者の素顔に迫る―オーラル・ヒストリー
2 政治の最前線に躍り込む―公共政策
3 近現代からの現場中継―政治史
4 進撃!歴代首相邸へ―建築と政治
5 同時代とのバトル―書評と時評
6 映像という飛び道具―メディアと政治
本業の政治史にとどまらず、いろんな分野で活躍されたことがわかります。単に研究書だけで政治に接近するのではなく、また大学の研究室に閉じこもっているだけでなく、さまざまな切り口・接近方法があることを身をもって示されたのです。
そして、一貫して流れているのは、日本の現代政治をどうみるかです。「政治学の教科書や研究書は難しくて」とか「新聞や週刊誌の政局ものは内容がなくて」とご不満の方、ぜひお読みください。おもしろいですよ(繰り返し)。
また、帯についている先生の似顔絵が、秀逸です。カバーの写真は温和なお顔ですが、似顔絵はエネルギッシュな先生を良くとらえてあります。よく見たら、黒鉄ヒロシさんのイラストでした。