岡本全勝 のすべての投稿

愛国心、いびつな言説はメディアにも責任、2

・・日米安保体制の強化で中国の行動への抑止力を高めることは必要でしょう。けれども20年後、さらに50年後はどうか。米国に頼って中国と軍事的に対峙する路線が、どれだけ賞味期限をもつのか。そうしたリアリズムこそ日本に必要なものです。
13億人の中国は、多少の挫折はあっても将来米国と肩を並べ、さらに米国を超える超大国になる可能性が高い。他方、百年国恥の屈辱感の裏返しである現在の中国の攻撃的な路線が永久に続くわけではない。対立するより、諸国と共に中国の過剰な被害者意識をなだめ、卒業してもらう工夫を日本はするべきです・・
・・中国が持たないソフトパワーをいかすことです。日本の学者が主導してアジア国際法学会を日本で開催した際、参加した中国人が必死に運営のノウハウを学ぼうとしたことは象徴的です。製造業やサービス業、医療のシステム、アニメやファッション、さらには秩序だった市民生活のルールなど日本には中国にとって魅力のあるソフトがあります。それで中国の懐に入り込み、ウインウインの関係をつくり出すべきです・・

復興推進委員会

4月18日に、復興推進委員会を開きました。平成25年度の先導モデル事業の評価を報告するとともに、26年度の先導モデル事業のうち、先行する「継続事業」と「横断的課題」を選びました。さらに、「提言」をまとめてもらいました。
提言では、これまで進めている5つの項目(子ども、高齢者、エネルギー、回復力、地域資源)の他に、産業復興が取り上げられています(提言p57)。地域の活力は、なんと言っても産業、働く場です。これを受けて、被災地での産業復興の体系化に、取り組むことになりました。

統計数字の錯覚、都道府県別有効求人倍率

日経新聞4月21日の「地方の雇用、本当は元気求人倍率、働く場所で集計すると都市部は減少」が、興味深かったです。都道府県ごとの有効求人倍率ですが、その算定方法を探ると、公表数値と違う結果が出てくるのです。
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厚生労働省が公表するのは、本社所在地ごとの有効求人倍率。東京都に本社があるスーパーが青森県内の店の求人を出すと、原則として東京都の求人として計算するため都市部が上昇しやすい。これを就業地別に青森県の求人として数え直すと、地域雇用の実態がみえやすくなる。
2013年の実績を本社地別でみると東京都が1.33倍で首位。就業地別で計算すると1.00倍と大きく下がり、15位にまで転落する・・
そうだったのですか。これでは、都道府県別の数字をそのまま鵜呑みにするわけにはいきません。
松尾洋平記者、良い記事を書いていますねえ。彼は、2010年10月4日にもこのホームページに登場しています。

自民党、大島理森復興加速化本部長

自民党復興加速化本部の大島理森本部長が、今日、衆議院議長に選出されました。
大島本部長には、自民党が政権復帰し、加速化本部長に就任されて以来、お世話になりました。あの厳つい雰囲気で、皆さんだまされます(本人もそれを楽しんでおられるようです)。週刊誌などでは、「悪代官」と書かれていますが、やさしい方です。呼び出しを受けて説明に行くと、地元や省庁の意見を、じっくり聞いてくださいます。また、被災地にも何度も足を運んで、実情を見てくださいました。その上で、的確な判断を下されます。ときには、テーブルを叩くという「演技」もなさいますが(苦笑)。

本部長就任直後、2013年1月ごろのことです。「全勝統括官、まずしなければならないことは何かね」とのご下問がありました。「あれもこれも・・・」と説明したら、一喝されました。「優先順位の高いのは何か」「被災者は何を望んでいるのだ」と。「そりゃ、住宅ですわ」と申し上げたら、「年内に、住宅を完成させよ」とのご指示。「3年目の冬を、仮設住宅で越させてはいかん」。
「無理です」と答えたら、なぜかを説明させられました。納得してもらうと、次には「年内に、住宅のめどを立てよ。避難者に、いつ頃どこに入居できるかを示せ」との指示でした。これが、与党の第1次提言「復興加速化のための緊急提言~震災三年目の冬を希望持って迎えるために」です。
復興庁はその提言を元に、関係省庁や自治体と一緒になって、何よりも住宅再建を優先し、予算も職員も作業も、ここに投入しました。逆に、公園や箱物、集団移転跡地整備などを後回しにしました。批判も受けましたが、私は正しかったと考えています。

もう一つは、原発被災地復興の方針転換です。民主党政権時は、「避難者全員に一日も早く帰還していただく」というのが、政府の方針でした。しかし、時間とともにわかってきたのは、放射線量の高いところは当分の間、帰還は困難だということです。大島本部長の判断は、「避難者を、いつまでも、不安定な状況に置いてはいけない」でした。これが、第3次提言「原子力事故災害からの復興加速化に向けて~全ては被災者と被災地の再生のために」です。すなわち、早期に帰還できる地区や人には、それを急ぐこと。帰還を待つ人には、そのための住宅を建てること。そして、新しい生活を選ぶ人には、その支援をと、大きく3つに分類して、支援の方向を打ち出していただきました。これもまた、大きな政策変更でした。
政府・行政は、一度決めた決めた方針に沿って、平等・一律に政策を進めます。方向転換や、優先順位を付けることが不得手なのです。そこを、与党・政治主導として、補ってくださいました。

衆議院議長に就任され、自民党復興加速化本部長は外れられます。この2年余りの間、政府与党一体の政策遂行、政治家と官僚の協働と役割分担の見本を、示していただきました。ここに書けないことも多いですが、その一端を皆さんにお見せしました。感謝を込めて。

愛国心、いびつな言説はメディアにも責任

朝日新聞オピニオン欄4月16日は、大沼保昭教授の「日本の愛国心。『誇り』か『反省』か、極論を見せ続けたメディアにも責任」でした。
「最近、日本人の愛国心が変だと心配されていますね」との問に。
・・「愛国」や「日本人の誇り」を主張する人が、日本の起こした過去の戦争を反省する姿勢を「自虐」と切って捨てる姿勢が強まっています。戦争を真剣に反省して努力を重ねたからこそ、世界に誇り得る戦後日本の見事な復興と達成がある。そこが十分理解されていないのではないでしょうか・・
・・他方、現在のいびつな状況をつくり出した大きな責任は、「愛国」「誇り」の論者と過去を「反省」する論者を対立させるという「激論」の図式で人々の思考に影響を与え続けてきた日本のメディアにあるのではないか。戦後日本は過去を反省し、世界の国々から高く評価される豊かで平和で安全な社会をつくり上げた。それを私たちの誇りとして描き出さず、戦前・戦中の日本に焦点を当てて、愛国か反省かの二者択一の極論を見せ続けた。その結果、いびつな愛国心が市民に広がったのではないでしょうか・・
・・私はずっと、戦後日本は過去の植民地支配と侵略戦争を反省して平和憲法を守り続けてきたことを世界にもっともっと発信した上で、欧米に対して「あなたたちはどうだったのですか?」と問題提起をするべきだと主張してきました・・