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資材費高騰対策

被災地では、通常でない量の土木や建築工事を進めています。すると、資材や労務費が高くなります。公共事業費については、国交省が素早く単価を見なおし、事業費を高くしてくれています。
資材費の高騰は、それ以外の事業にも及んでいます。企業の設備や施設、病院施設などの復旧経費も、2年前に見積もった金額では実行できなくなっているのです。2年前に補助金の交付決定をしたけれど、高台移転などの工事を待っているうちに資材が高騰して、当初の予算額では完成しない事例も出てきています。被災地からは、何とかして欲しいとの要望が出ていました。
このうち、企業の施設設備については、今般、中小企業庁が、中小企業等グループ補助金交付決定後の資材等価格の高騰によって工事が完成しない事例について、補助金を増やす決定をしてくれました。これも、これまでにない大英断です。財務省の理解があってできた手当です。
もちろん、その分の財源が、必要になります。これは、国民の皆さんに負担してもらっています。

被災自治体で活躍する若手官僚

7月17日の朝日新聞朝刊に、「復興前線、やる気官僚」という記事が載っていました。
・・被災自治体にかつてない数の中央官僚が出向している。待ったなしの復興の現場で、あるべき国と地方の関係が芽生え始めている・・という書き出しです。
被災地の市町村役場に、求めに応じて、霞が関の若手官僚が、たくさん派遣されています。被災地の小さな自治体では、これまでにない大きな課題を、たくさんこなさなければなりません。外部人材が、土地や役場内での「しきたり」にとらわれずに、腕をふるうことが期待されています。
若手官僚にとっても、現場で経験を積む良い機会です。霞が関で日本全体を相手にしていると、自分が作った政策でも、現場での実際や成果が見えないのです。それに比べ、現場では、できたかできなかったか、結果が直ちに見えます。
もっとも、現場で腕をふるうことは、そう簡単ではありません。多くの職場は官民を問わず、規則に定められた公式の権限(オモテ)とともに、人間関係やしきたりといった非公式の進め方(ウラ)で、仕事が進みます。前例のない仕事の場合、しがらみを断つために、外部の人材が腕を発揮できる場合があります。しかし、事態が落ち着いてきて、また長期間になると、「非常時の仕事の進め方」は通用しなくなります。組織は人間関係で動いています。法律論や理論、あるいは偏差値だけでは、仕事は進みません。そこで、どのように地元のしきたりと折り合いをつけるか。経験と力量が試されます。
それぞれに、苦労しているでしょう。しかし、それが勉強になるのです。がんばれ。

政党の構図

7月9日の朝日新聞オピニオン欄、「政党政治を問い直す」、萱野稔人・津田塾大教授の発言から。
・・政党とは本来、政策を競うものだ。そうよく言われる。しかしこれからの時代、それを素直に自明視することはできない。
なぜなら政策を実行するには財源が必要だからだ。社会保障の拡充にしても、景気対策にしても、あるいは防衛力の強化にしても、その点は同じである。
政党が政策を競うということは、したがって財源を奪い合うということである・・
・・少子高齢化のもとでそうした集団による競争がおこなわれれば、希少なパイの奪い合いになり、いきおい既存のパイでは足りなくなるだろう。足りないパイは政府が借金をして、将来世代にツケをまわすしかない。政党間の競争は将来世代のパイまで奪い合う事態をもたらしている・・

政党は、近代民主主義国家にとって、必要不可欠です(なのに、日本国憲法には、規定がないのですが)。
国会などの場で、多様な国民の意見や利害を代表する、あるいは集約するには、政党が必要です。有権者の支持を集めるために、社会のある利益集団(利益層)を代表するか、意見を同じくする人たちを代表することになります。
社会に、利益や意見の明らかな対立があると、政党の配置はわかりやすくなります。ごく簡単に言うと、近代先進国では、地主、企業家、労働者、その他のホワイトカラー、あるいは軍人が、母集団になりました。税金をどこから取るか、関税や補助金などで既存産業を保護するか、労働者の利益を保護するか企業家の利益を優先するかなどです。
どのような社会をつくるかの意見の違いも、そこから出てきます。資本主義で行くのか、社会主義に進むのか。東西冷戦を背景に、第2次大戦後の保守対革新は、この争いでした。もっとも、戦後日本においては、保守政党(と呼ばれる政党)が改革を提唱し、革新政党(を自称する政党)が「憲法を守れ」に代表されるように保守を提唱しました。
さて、そのような「呼称と実態のズレ」を別にして、現在の日本において、政党の構図がいまいちわかりにくい。また、2大政党制を目指したのにそうなっていないことの背景には、国民の間の利害対立が明確なっていないことがあります。経営者の多くがサラリーマンになり、資本家対労働者の対立は、明確でなくなりました。市場経済主義対共産主義(=自由主義対一党独裁)も、勝負がつきました。
私は、日本においては、都会対地方や高齢者対若者が利害対立の軸、そして政党の対立になるのではないかと思っていました。前者については、東京一極集中が進み、政治的には成り立ちにくくなりました。後者については、年金や医療費の財政負担において、今なお存在理由を失っていないと考えています。

萱野さんの発言は、なるほどと思います。対立軸は、何に予算をつけるかでなく、誰が負担するかになっているのです。しかし、それはあまりに露骨で、夢がありません。政党が有権者に売る「商品」としては魅力がなく、正面からは打ち出しにくいです。政策の販売戦略としては、「○○に予算をつけますよ」と唱え、その負担については言及しない戦法をとるのでしょう。それを見抜いた有権者は、「その政策は良いですが、どこから財源を持ってくるのですか」と質問しなければなりません。
政策の販売合戦が実は負担の押しつけ合いだと、国民に見抜かれると、民主主義は難しくなります。民主主義は経済成長のある時代にしか成り立ち得ないのではないかという説を、『新地方自治入門』p301で紹介しました。

総理、宮城視察

今日は、総理大臣のお供をして、宮城県に行ってきました。復旧なった水産加工場や農業法人を見ました。七ヶ浜町の水産振興センターは、クロネコヤマトの寄付で復旧できました。ありがとうございます。東松島市の農業法人(アグリードなるせ)は、海水に浸かった農地を除塩し、かつ経営規模を拡大しています。地区の9割を超える農地を受託して耕作しています。東松島市では、災害後に農業法人の設立が増え、経営面積も拡大しています。個人の農家では復旧する意欲が少ないのですが、法人化することで攻めの農業を行っています。
午後は、新しくできた災害公営住宅で、自治会の方や支援員の方と意見交換をしました。仮設住宅での健康や心の支援とともに、新しく移った公営住宅でコミュニティをつくることが重要です。各地で、生活相談員(600人)や復興支援員(180人)が活躍しています。被災者の健康や生活支援には、対人関係、人によるサービスが必要なのです。今回の復興では、インフラ・住宅の復旧、産業・生業の復興と並んで、健康・生活支援を3つめの柱としています。「被災者に対する健康・生活支援の手引き」(平成26年6月)が、具体事例を載せていて、わかりやすいです(特にp2~、p20~)。
今日も、宮城復興局や本庁の関係者、さらには地元関係者の事前準備が良く、円滑に、重要な課題と具体例を見ることができました。ありがとうございます。

W杯ドイツの活躍、移民政策

サッカーのワールドカップを見ていて、ヨーロッパ各国もアフリカ系の選手が多いなと思っていました。優勝したドイツはどうなんだろうと思っていたら、7月15日の読売新聞国際面「独、移民融合のV」に解説がありました。
登録23選手中、移民系選手は6人です。得点記録を作ったクローゼ選手は、ポーランド出身だそうです。他に、トルコ系、ガーナ系の選手もいます。前回2010年の大会では、11人だったそうです。
2012年にドイツに来た永住型の移民は約40万人で、今やアメリカに次ぐ多さだそうです。総人口に占める移民系住民の割合は、20%に達しています。政府の政策として、少子高齢化による労働力不足に備えて、移民を受け入れ教育の機会を与えているのです。