岡本全勝 のすべての投稿

EU、難民の受け入れ

中東と北アフリカ諸国での内戦や混乱で、ヨーロッパを目指す難民が増えています。2013年に、EUに国際的保護を求めた難民申請件数は、35万人だそうです。地中海で船が遭難する事件もあります。『フォーリン・アフェアーズ・リポート』2014年7月号が、簡潔な報告を載せていました(すみません、遅くなって)。「欧州における反移民感情の台頭」。
ところで、スウェーデンが移民の国になっていることを、ご存じでしたか。人口に占める移民の割合は、2000年には11%でしたが、いまや17%にもなり、アメリカの13%より多いのです「移民と社会同化―追い込まれたスェーデンの壮大な実験」。人口950万人のスウェーデンは、2013年には5万4千件の難民申請を受理したとこのとです。急速に移民(難民)を受け入れているのです。経済が豊かで、社会が平等や連帯を目指していたスウェーデンは、このように寛容な政策をとっています。移民統合・平等大臣もおかれています。もっとも、リポートでは、経済の悪化、移民の増加、失業率の上昇、社会の分裂によって、大きな問題になっているようです。
ところで、高福祉・高負担のイメージが強いスウェーデンですが、この20年間に減税と歳出削減が進んでいます。GDPに占める税収の割合は、2000年の51.4%から2012年には44.3%に低下しました。公的支出がGDPに占める割合も、1993年の67%から現在は52%に減少しています。社会保障サービスの多くが、民間企業に委ねられるようになっているのだそうです。なお、先進各国の財政状況比較は、財務省のパンフレット「日本の財政関係資料」p44,45がわかりやすいです。

職、町、人による復興

グロービスの堀義人さんの政策提言「100の行動」で、復興が取り上げられました。「「職」「町」「人」の面で新たな東北復興ビジョンを描け」(10月10日)です。藤沢烈さんに教えてもらいました(10月13日の記事)。
・・復興庁によるがれき処理、除染作業、社会インフラの再建などは徐々に成果を上げ、東北地方では数値上では雇用環境が改善されているとはいえ、依然として厳しい状況が続いているのが実態だ。
深刻なのは、被災地からの人口流出が止まらないという事実だ・・なぜ人口流出が止まらないのか。それは、被災地に高付加価値産業が少なく、求人者が望む職業が少ないからだ・・優秀な人材やUIターンで地元に戻りたいと考える人々も、東北に戻ることができず、そのために雇用が集まらず、地域の疲弊が止まらない。震災以前から直面していたこの課題が、震災後、一層深刻さを増しているといえよう。
復興は、単に「震災前の町を元通りに作り直す」というようなインフラの再整備にとどまってはならない。被災地において、将来にわたって、持続可能な地域社会が構築されることこそが、真の復興である。その鍵は「職」「町」「人」だ・・
として、職=仕事づくり、町=持続可能なまちづくり、人=人材育成について、具体的な提言をしておられます。
また「官・民・NPOの役割分担を明確化し、着実な連携を」として、次のように書いておられます。
・・東北の復興に向けては、国などの官が主導するのではなく、企業やNPOなどの民間が主導していくことが重要だ。
政府は、官民連携の基盤づくりのため、昨年12 月 に「新しい東北」官民連携推進協議会を設立 (会員数は約700 団体)し、各種の情報共有や連携基盤の構築につとめている。それ以外にも、2014年7月に「東の食の実行会議」が仙台で開催されるなど、東北の復興を進めるNPOなどを応援、支援する場は多く立ち上がっている。
さらに、今年度NPO等が活用可能な政府の財政支援は、復興庁のまとめによると、25事業、数え方にもよるが予算合計は1000億円以上の財政支援措置メニューがそろえられている。
これらの場とメニューによって、企業、NPO、行政の連携を強化することが課題だが、現状では必ずしも足並みが揃っていない。「場」は確かに立ち上がっているものの、実際の連携プロジェクトは生まれてこない。課題は、行政、企業、NPOの役割分担の明確化と、全体状況を把握し、NPOの力を適材適所に配置・調整する機能の強化だ。
このため、社会におけるNPOの役割・在り方を社会的に明確に認識することとともに、セクターや地域を越えて連携を強化するコーディネーターが必要だ・・
ぜひ、原文をお読みください。
私は、インフラ復旧だけでは、町の復興や暮らしの再建はできないと主張してきました。『被災地から見える「町とは何か」』(共同通信社のサイト「47ニュース、ふるさと発信2012年8月31日)。世間の共通認識になってきました。次の課題は、堀さんも主張しておられるように、コーディネートです。これは、藤沢さんも、「お金でも制度でもない、被災地には人材が足りない」(毎日新聞のサイト「キーパーソンインタビュー」9月8日)と主張しておられます。

ハイテク企業のトップは、子どもにスマホを使わせない

朝日新聞電子版、「ニューヨーク・タイムズ世界の話題」10月11日に「スティーブ・ジョブズ、家ではローテク父親だった」が載っています。
記者が、あのアップル社の創業者であるジョブズ氏に「じゃあ、あなたの子供さんたちはiPadが好きなんでしょうね」と聞いた時の答です。
「いいや。まだ、使ってないよ。家庭では、子供たちのハイテク使用を制限しているんだ」
これを聞いた記者は驚き、他のハイテク企業のトップにも取材します。その結果は。
・・多くのハイテク企業やベンチャー企業のトップが、家庭では同じようなことをしていた。ハイテク機器の画面を見る時間を厳しく制限し、翌日に学校がある晩はまったく使わせなかったり、週末でもアクセスできる時間を禁欲的といってよいほどに限ったりしていた・・
3Dロボティクスの最高経営責任者で雑誌ワイアードの前編集長クリス・アンダーソンは、どの電子機器についても家庭では親として管理し、使用時間を制限している。
6歳から17歳まで5人の子持ち。「私の子供たちも妻も、自分のことを『ハイテク心配過多のファシスト』と非難し、こんな規則がある友だちなんていないと抗議する」とアンダーソン。「でも、こんなことをするのも、ハイテクのこわさを直接知っているからだ。自分自身にも、とりこになるかもしれないこわさを感じるし、子供たちにそうなってほしくはない」と強調する。
その危険性とは、有害なコンテンツなどにさらされることだ。ポルノや他の子供たちからのいじめ。なんといってもこわいのは、両親も経験したように、こうした機器やネットの世界に依存する中毒症状に陥ってしまうことだ。
ハイテク専門のマーケティング・コミュニケーション企業OutCast Agencyの最高経営責任者アレックス・コンスタンチノープルは、5歳になる一番下の息子には、平日は電子機器をさわらせないようにしている。10歳から13歳までの上の子供たちの場合は、翌日に学校がある晩は30分しか使わせないでいる・・

子どもさんを持った多くの家庭で、悩んでおられるのではないでしょうか。スマートフォンは便利ですし、楽しいです。通勤電車の中でも、たくさんの大人がスマホをみています。私だってパソコンが横にあると、ついついニュースを見たりサーフィンをしてしまいます。すると集中できなくなります。便利さは、危険と中毒とを併せ持っています。「免疫のない」子どもには、もっと魅力的で、かつ危険でしょう。
子どもに、「××ちゃんも持っている」「友達は皆持っているよ」「持っていないと、遊んでもらえない」といわれると、親はついつい買い与えてしまいます(これは、子どもがおもちゃなどを買ってもらう時の、常套句です。あなたも覚えがあるでしょ)。しかし、スマホ、ケータイ電話はまだ世に出てから新しく、子どもに与える影響は十分に検証されていません。他方で、勉強に集中できない、犯罪被害に遭っているという負の影響は、たくさん報告されています。
子どもに、どのようにスマホを使わせるか。この記事では、年齢による制限など実例が報告されています。本文をお読みください。

アカデミズムとジャーナリズムの関係

昨日紹介した月刊『ジャーナリズム』2014年9月号「特集 時代を読み解く珠玉の200冊」のp25、田所昌幸・慶應大学教授の文章から。
・・そのアカデミズムとジャーナリズムは、お互いにあまり好意を持っているとはいえないのが実情ではないか。しばしば気づくのは、ジャーナリズムの世界では「学者」というのは褒め言葉というわけでななく、「観念的」とか「非現実的」とかいうことの代名詞として通用しているように見えることだ。また、大学で教えているというだけで、なぜか妙に敵対的な態度をとるジャーナリストに遭遇することもある。それにしては退職して大学の教員になっているジャーナリストが多いのは不思議なことだが。
確かにアカデミズムでは、何らかの主張をするための知的な手続きが厳格で、結論を出すまでの手順に慎重を期さねばならないのは事実である。それで歯切れが悪いとか、ハッキリしないとかいう反応が多くなる。
逆に、アカデミズムの側の人間には、ジャーナリストはいつも結論を性急に出そうとするとか、ありきたりの枠組みでいつも同じような言説を発しているという思いがある・・もっとも、見下している割には、テレビや新聞に登場できると、うれしくなるアカデミックが多いのも、お互いさまというべきだろう・・

経団連による復興政策の評価

10月10日に、日本経団連が、与党の政策(実績と課題)の評価をしました(主要政党の政策評価)。その項目の第1番目が「震災復興の加速」で、実績は次のように評価されています。
「復興関連予算の迅速かつ柔軟な執行により、被災地の早期復興に向けて着実に取り組んでいる」
ありがとうごうざいます。このように高い評価をいただいて。私たちの仕事ぶりが、理解されているということです。
課題には、次の2つがあげられています。
・ 復興に向けた一層の取り組み
・ 人口減少・高齢化が進む中での新たな地域社会のモデルとしての「新しい東北」の展望の提示
ご指摘の通りです。さらに努力して参ります。