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日本の社会

29日の朝日新聞連載「幸せ大国をめざして-未来を選ぶ」第9回は、「似たような景色ばかり、街から個性が消えた」を取り上げていました。拙著「新地方自治入門」では、「第6章地方行政がなすべきこと」の中で、地域の悩みとして取り上げました(p167~)

2005年度

28、29日と、地方財政学会2005に、大阪まで行ってきました。会員は600人となり、出席者は350人を超えたそうです。学者の先生方と旧交を温めるとともに、多くの地方団体職員からあいさつを受けました。「ファンです」とか、「HP見てますよ」とか(ぐふふ・・)。
このようにたくさんの公務員が参加しするのは、良いことですね。大きな市や近くの団体からだけでなく、小さな村や遠くは佐賀、長崎、沖縄からも。勉強しようという意欲に、敬意を表します。また、研究の方も空論にならず、より実態に即したものとなるでしょう。
来年は、東洋大学(東京)でです。会員でなくても、参加できます。その頃になったら、このHPでも案内しましょう。多くの方の参加を歓迎します。もちろん、会員になっていただくことも大歓迎です。
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私の出番は、「第10分科会-交付税・補助金改革Ⅱ」での討論でした。発表のうち、矢吹初先生「地方財政の外れ値の分析」と星野菜穂子さん「地方交付税の財源保障―高齢者保健福祉費を対象に」は、出色の報告でした。
前者は、交付税の算定結果から、平均像から外れた市町村を「機械的に」選び出し、その原因を探るものです。後者は、交付税の財源保障機能について批判があるが、それは主に投資的経費であり、それに対し福祉の経費ついて財源保障の重要性を主張します。また算定方法・結果と実際の支出との関係を分析したものです。
いずれも、これまでにないアプローチで、新たな研究の地平を拓いています。論文が完成したら、ぜひ広く読んでいただきたいです。
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持田信樹東京大学教授と一緒にコメントするのは光栄でしたが、鋭い持田先生の後に意見を述べるのはつらいものがありました。また、交付税制度の改正やその影響を分析していただくのはありがたいですが、1990年に交付税課補佐となって担当した者としては、「被告人の弁明の場」でもありました。それでも、交付税に関心を持っていただき、正しく理解していただくことは、ありがたいです。逃げ隠れせず、説明しますよ。(5月29日)
【訂正】
今年度の地方財政学会の参加者を350人と書きましたが、1日目約400人、2日目約250人だったそうです。(6月12日)

一方で金余り、一方は破綻?

道路特定財源の見直しが、議論になっています。道路整備のための税金が、来年度にも「使い切れず余る」見込みということです。余るのなら、①それほど税金を取らない、または、②別のことに使うのが、解決方法でしょう。この税金は、道路整備のためにということで、ガソリンなどに重くかけています。①説は、「その重課を引き下げるべし」となります。②にはいくつか案があって、道路関係の支出に広げる案とか、環境対策に振り向ける案のほか、これだけ赤字国債を出しているのだから財政再建に使うという案まであります。
ところで、これらの議論は国の財政で議論していますが、地方財政を含めると次のようになります。27日の朝日新聞朝刊には、道路特定財源の流れが出ていましたが、この図は全体像ではありません(以下、平成17年度の予算と計画額)。
まず、この図には出ていない、地方の道路特定財源があります。地方道路譲与税(国の揮発油税と同等のもの)3,072億円、軽油引取税10,556億円、自動車取得税4,655億円。よって、国の特定財源は36,234億円、地方の特定財源は22,197億円です。さらに、国は3.6兆円のうち、自分で使っているのが21,772億円、地方へ補助しているのが14,463億円です。すると地方の財源は、この補助分を入れて合計36,660億円となります。ここでも、収入は国が多く、使うのは地方が多いという構図になっています。
地方は、道路関係に65,938億円使います。すなわち、国では道路特定財源が余っているのに対し、地方ではまだそれ以外の財源も投入しています。ということは、税源移譲論者ならずとも、国の道路特定財源(税)を地方財源(税)に移譲すれば、この問題のかなりの部分が解決されます。
もっとも、私は、赤字国債縮減に使うのが一番だと思います。年金が破綻しそうだとか、後世に大きな赤字を残していながら、一方でお金が余っているとか、道路を作り続けるというのは、変ですよね。

三位一体改革47

18日の読売新聞は、青山彰久記者が「三位一体、税源移譲・交付税改革、見えぬ決着点。最終年度に問われる小泉政権の力」を解説しておられました。
「改革のヤマ場は越えたかのような空気が漂う。だが、補助金を削って税源を移し、地方の自由を広げて歳出構造を変え、交付税をスリムにするのがゴールとすれば、現状は遠い」。
ご指摘の通りです。(5月18日)
18日の経済財政諮問会議で「三位一体改革の議論」が再開されました。麻生大臣は、「地方税財政改革の推進」を説明されました。
19日の日本経済新聞は「三位一体改革攻防再び」「義務教育争点に」を書いていました。「『6000億円の税源移譲に結びつく補助金改革を確実に実施すべきだ』会議では麻生太郎総務相がこう述べ、公共投資関連の施設設備の補助金などを削り税源移譲するよう主張した」。朝日新聞は「財務・総務省対立再び」「地方交付税改革、抑制・維持、深い溝』と書いていました。
財務省は、地方の歳出削減ばかり要求していますが、平成13年度(小泉内閣発足時)を基準に取ると、平成17年度では、国の一般歳出は1.4兆円削減なのに対し、地方の一般歳出は6.6兆円もの削減です。しかも、国の予算は、この間の国庫補助金の一般財源化での減も含めてです。これを考慮すると、横ばいです。交付税総額も3.4兆円削減しました。この点は、拙稿「続・進む三位一体改革」をご覧ください。(5月19日)
18日の経済財政諮問会議での麻生大臣が説明した「地方税財政改革の推進」のうち注目すべきは、情報公開です。今までも各団体の財政状況や職員給与の状況は公表されていましたが、住民によりわかりやすくするため、全団体について同じ様式で公開することを進めます。インターネットで見ることができます。これによって、他団体との比較が簡単にできます。「地方税財政改革の推進」のp10です。(5月21日)
月刊「地方財政」5月号(地方財務協会)に、坪井ゆづる朝日新聞論説委員が「3年目の三位一体改革、民意の追い風が要る」を書いておられます。
「だれのための何の改革なのか、がはっきりしない。改革がうまくいけば、主権者である国民、住民が恩恵を受けるはずだが、その具体的な中身がなかなか見えてこない。だから、論議が3年目を迎え、いよいよ決着が図られるというのに、住民の生の声はほとんど聞こえない」
「国民、県民、市民といった、さまざまな立場を併せ持つ住民が主役である以上、個々の自治体が担う役割は大きい。住民がそれぞれの場面で主権者として発言し続けなければ、この改革は進まない。今こそ民意をまとめ、それを追い風にする工夫が自治体に求められている。」
また、矢野浩一郎元自治省財政局長の講演録「高度経済成長から安定成長へ~地方交付税の成長と質的転換」が載っています。交付税の歴史に関心のある方は、是非お読みください。昭和30年代から50年代の間の、交付税改革の歴史、交付税が果たした役割などが、コンパクトにまとまって、またポイントが的確に解説されています。長い論文より、わかりやすいです。
矢野さんは、交付税創設期、充実期、投資的経費算定改革期に担当された方です。また、その後も財政局幹部として、交付税に携わってこられました。私もご指導を受け、矢野さんを「交付税の生き字引」と尊敬しています。(5月23日)
25日の毎日新聞社説は、「三位一体改革-地方分権推進が出発点だ」でした。「既得権益や省益をからませてはいけない。地方財政改革といいながら、自らの権限を維持しようという思惑が見え隠れするのでは、住民自治に反する。」
「その観点からすれば、今秋までに中央教育審議会で結論を得ることになっている義務教育費8500億円の扱いは、補助金削減、税源移譲が当然である。文科省や自民党文教族の主張は、義務教育には国が責任をもつべきだという論理のもと、地方への関与を継続しようという意図が明白である。」(5月25日)
25日に中央教育審議会義務教育特別部会で、国庫負担制度の本格的な議論が始まりました。今朝の各紙は、大きくその様子を伝えていました。「制度堅持派と廃止を主張する地方側との間で、激しい応酬となった」と。(5月26日)

官僚制

19日の日本経済新聞が「再編5年目・診断霞が関」で農水省を取り上げていました。「農水省消費・安全局消費・安全政策課長に着任した山田友紀子は、ちょっとしたカルチャーショックを受けた。山田は、国連食糧農業機関の専門官などを務めた食品安全の研究者。国際的には食品安全行政は専門家が担うのが当然なのに、日本にはほとんどいないことが分かったのだ」
「専門性」も、現在の官僚制の問題点です。専門家というと技官(技術系公務員)を思い浮かべますが、それだけではありません。福祉の専門家、教育の専門家、金融の専門家が必要でしょう。しかし現在ではそれらの多くは、法学部か経済学部を卒業した人が、職場で鍛えられて「専門家」になります。もちろん、最先端・高度な技術は外部の専門家を活用することで、官僚はそれを理解できる知識があればいいとも言えます。
しかし、多くの分野で法学官僚が中心を占めていることは、疑問です。