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大久保利通の構想力。司馬遼太郎さん

司馬遼太郎著『明治国家のこと』(2015年、ちくま文庫)、「近代化の推進者 明治天皇」p291。
・・山崎正和 ところで西郷が西南戦争で死ぬと、大久保もすぐ暗殺されますね。維新後わずか10数年ですが、もし大久保がもう少し生きていたらというのは、つまらん空想ですかね。
司馬遼太郎 大久保が生きていたら、山形のような小粒が、精神のいじけた天皇制国家をつくるようなことはなかったと思います。大久保は物事については、つねに普遍性を考える傾向があった人物ですから、こんな特殊な国はつくらなかったと思いますよ。同じ天皇という問題をとりあげても、統帥権による軍部の独走ということは許さなかったと、思いますね。
山崎 実は私はそれをいいたかったんです・・・

あっという間の1週間

今週も、あっという間に、1週間が終わりました。なぜこんなに、時間が経つのが早いのでしょう。早朝出勤して時間を確保しているのですが。メールへの返事と届けられている資料に目を通すことすら、十分にできていません。「相談に乗ってくださいよ~」という部下に十分に対応できず、来てくださったお客さんにも立ち話しかできず、もちろんお礼の手紙も書けず。申し訳ありません。
私のイメージでは、事務次官は、静かにゆったりと、広い部屋に座っているものなのですが。どうもいけません。復興庁という組織の特殊性なのか、時代の変化なのか、私が特殊なのか(苦笑)。夜布団に入ると、やり残した仕事を思い出し、朝目が覚めると、次の仕事のアイデアが頭に浮かんできます。これまでにない仕事、次々と課題が変化する仕事ゆえの特殊性もあります。
大臣は、11日土曜日に釜石に、12日日曜日に仙台に、被災自治体の意見を聞く会に出張されます。このようなことも、関係自治体の協力で、早急に準備ができ、実施できることになりました。職員も、大わらわでした。大臣ご出張のときは、次官は原則、東京で留守番なので、私は同行できません。

国会議員への挨拶

今日は、ようやく国会議員会館への挨拶回りが、できました。早く回りたかったのですが、被災地への出張や仕事の関係で、今頃になりました。午前中3時間、午後2時間をかけて、参議院議員会館を12階から3階まで、衆議院第2議員会館を12階から2階まで、衆議院第1議員会館を12階から3階まで、回りました。当然、上の階から下の階へと降りていき、各階では一筆書きで書けるように歩きます。各階に24室あります(一部は会議室になっています)。議員会館も、数年前に建て替えられて大きくなり、歩く距離が長くなりました。
すべての議員の部屋に顔を出すのではありませんが、名刺を4箱使いました。復興庁の職員が、仕事で関係する議員に印を付けてくれたのですが、それ以上に私が個人としてこれまでお世話になった議員さんが多く、こんな数になりました。議員本人にお会いできたのは少なかったのですが、「がんばれ」「苦労かけるね」と励ましの言葉をいただきました。お会いできたのは、秘書さんが多かったのですが、旧知の方も多く。「座っていけ」「話を聞かせろ」と捕まってしまいます。もっとも、途中で「水分補給」するにはちょうど良く、休憩をかねて、お茶やお水をいただきました(苦笑)。
他方で、課長補佐や総務課長のときにお世話になった議員さんたちの多くが、引退されています。その方々を思い出し、「あの先生も、おられなくなったなあ」と、別の感慨にもふけっていました。

4月なのに、冬に逆戻り

今日の東京は、寒かったです。朝は3度程度で、昼間は5度くらいでした。さらに、雨も降って。冬の服装で出かけました。昨日、盛岡に行ったときに、地元の人が、「明日は氷点下の予想です」と言っておられましたが、その通りだったようです。
ついこの間まで、最高気温が20度を越えていたのですが。でも、今年の東京は、雪かきをすることがなかったです。

長い歴史と広い世界から、日本の発展を位置づける。2

岩波書店のPR誌『図書』2015年4月号川北稔先生の「近代世界システムと幻の耕地」の続きです。近代の成長をイギリスとアメリカが摘み取ったと同様に、東アジア台頭の成果を中国が摘み取るという見方に続いて、次のように書いておられます。
・・・近代システムの本質などということを気にせず、近代と、近代のあとにくるかもしれない世界―それどころか、近代以前の世界も―が、ほとんど同じような性格のものだと無意識に仮定しがちな歴史観からすれば、そのようにもいえるかもしれない・・・
まさにこの点です。日本は、19世紀後半から20世紀にかけて、めざましい成長を遂げました。しかしそれは、西欧が切り開いた近代工業システムという枠組み(パラダイム)においてです。「追いつけ追い越せ」というスローガンは、その限界を示しています。日本が、イギリスやアメリカがつくった経済・社会・政治の構造に代わるものを、提示したのではありません。
では、現時点で成長著しく、東アジア台頭の成果を摘み取るとして、中国さらには東アジアは、西欧がつくった近代工業システムに代わるもの、あるいはそれを越えるものを提示しているでしょうか。17世紀までの中国・中華文明は、西欧文明に対峙するだけのものを持っていました。しかし、21世紀の中国、日本、そして東アジアは、西欧近代文明に代わる「新しい文明」を、提示していないようです。
先生の主張は、原文をお読みください。川北稔先生は、ウォーラーステインの近代世界システムを日本に紹介したことで有名です。その視点からの分析です。ところで、先生は、私の高校の大先輩です。