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発掘された日本列島展2015

今日は、用事を早めに切り上げて、江戸東京博物館へ。今年も恒例の「発掘された日本列島展」が開かれています。そして、土曜日曜には、文化庁の専門家による解説があるのです。今年も、ポスターに使われているハニワを始め、「こんなモノが残っていたのだ」と感心する遺物が展示されています。ハニワの顔は、皆同じような眼です(リンク先の4体をご覧ください)。どうしてこんなに単純化して、ほほえましい表情になるのでしょうか。
文化庁のMさんの説明は、予定時間を超過して大サービス。いつもわかりやすく、ありがたいです。よく通る声で、観客を引きずり込む話術は、プロですね。
ところで、Mさんに教えてもらったのですが、日本では1年間に約8千件の発掘調査が行われているのだそうです。他国では2千件がせいぜいだとのこと。法律があること以上に、国民の意識が高く理解があるからでしょうね。いくら法律で義務づけても、工事を進めてしまえば(ブルドーザーで壊してしまえば)、わかりませんから。それにしても、日本だけが、他国よりたくさん遺物が残っているのですかねえ・・
今年も、東日本大震災の復興事業に際して行われた、発掘調査の結果が紹介されています。わかりやすいパンフレットも、作られています。高台移転して住宅を造る場所から、しばしば遺跡が見つかるのです。縄文人も、津波の来ない場所を知っていたと思われます。さて、急がなければならない工事と文化財調査をどう両立させるか。関係者の方が、知恵を出してくださいました。重要な遺跡がある場所は事業を避ける、発掘調査と工事を並行して行う、最新機器を用いて調査を効率化する。そして、全国から専門調査員を派遣するなどです。
平成26年度は、83人が応援に行きました。なにせ野外での調査です。夏は暑い炎天下で、晩秋からは寒空の下で。発掘が順調に進み、住宅工事が順調に進められるのも、皆さんの協力のおかげです。ありがとうございます。副次的効果として、派遣された調査員は、他県の事情を勉強でき、最新の技術と情報を持ち帰ることができたのではないでしょうか。内に閉じこもらず、外に研修に行く効果です。今回の成果・特徴は、何かの形でまとめられるのでしょうか。高台移転工事は今年と来年がピークですが、発掘調査は26年度がピークだったようです。パンフレットには、次のような記述があります。
・・・当初は「復興の壁」と言われた遺跡の発掘調査も、今では「郷土の誇り」として、認識されつつあります・・・
発掘現場を見学した小学生のうれしそうな顔、岩手県野田村の宝物になった蕨手刀。大昔の遺跡は、今そこに住む人たちにとっても、誇りです。
宮城県岩沼市の地層が展示されています。今回の東日本大震災による津波堆積物(20センチほどの砂の層)の下に、慶長16年(1611年)の津波と貞観11年(869年)の津波と思われる砂の層が、積み重なっています。このようなことも、発掘調査の対象となり成果になっています。
お薦めです。そして行くなら、解説のある時間帯でどうぞ。東京では7月20日まで。その後、日本各地を巡回します。

山田町の低価格住宅

岩手県山田町が、価格を低く抑えたモデル住宅(の設計図)を造ります。6月12日の毎日新聞が伝えています。「山田型復興モデル住宅」です。小さい型では、2LDKで52平米です。770万円ですみます。戸建てを望む被災者に、モデル住宅のプランを作り、業者に安く作ってもらおうという趣旨です。
視察に行った際に、佐藤町長からこのアイデアを聞きました。私は「そんな小さな家でよいのですか」と聞くと、「戸建てを作ろうか公営住宅に入ろうかと悩んでいる、高齢の単身または夫婦の世帯なら、そんな大きな家は要らない。公営住宅並みでよいのです」との答え。なるほど。そもそも、大きな住宅を建てようとしている人は、公営住宅に入るかどうかは悩んでいませんわね。
現場では、悩みに応じて、様々な工夫が試みられています。

産業振興の新しい形、企業お見合いの成果

被災地では、インフラ復旧が進みつつあります。しかし、それだけでは町の賑わいは、復旧しません。地場産業、中小企業に、事業を再開してもらう必要があります。でも、これは、国が補助金を交付したらできるものではありません。漁船も、漁港も、魚市場も、水産加工施設も、補助金によって復旧したのに、水産加工物(干物、すり身など)の売り上げが回復していないのです。そこで、復興庁は、被災地企業が抱える課題(どうしたら売れるか)を解決するため、大手企業が持っている技術、情報、販路などを被災企業に提供する場を作っています。支援企業と支援を受けたい企業の「お見合いの場」、地域復興マッチング「結の場」です。このような試みは、初めてだと思います。もちろん、参加してくださる企業があるから、できることです。
また、「開催しました」だけに終わらないように、成果も評価しています。平成26年度に実施した「結いの場」の成果を公表しました。概要は資料1(p2)、主なものは資料2(p5)をご覧ください。何をもって、成果の指標とするか。これが難しいのです。「数字による評価」と識者はおっしゃいますが、そんな簡単なものではありません。少なくとも、当日の参加企業や参加者の数は当日の成果であっても、産業振興の物差しではないでしょう。この資料を見ると、職員が工夫をしてくれたことがわかります。

歴史認識と政治

東京財団、細谷雄一さん(慶應大学教授)の「歴史認識問題を考える書籍紹介」から。
・・・近年は、歴史学の領域のみならず、政治学や国際関係論においてもまた、歴史認識や歴史的記憶が持つ重要性が指摘されるようになっている・・・われわれは、依然として、歴史認識問題や歴史記憶問題を純粋な、誠実さの問題として位置づけることが多いが、ここで指摘されているように、よりいっそう政治学的な問題として、「記憶」がどのように用いられているかを、十分に認識しなければならない・・・
・・・日本が現在抱える最も困難な歴史認識問題は、日中間と日韓間で見られる。とりわけ、慰安婦問題は、日韓間で首脳会談さえも開くことができないほど、両国の関係を緊張させている。韓国国内では、この問題を学問的研究対象として、冷静に論じることは困難であろう・・・
・・・E・H・カーは、「現在の眼を通してでなければ、私たちは過去を眺めることも出来ず、過去の理解に成功することも出来ない」と論じている。言い換えれば、日韓間や日中間の歴史認識問題を理解するためには、韓国政治や中国政治、そして日本政治を理解することもまた、不可欠なのだ。なぜそのような歴史認識問題が浮上したのか。なぜそれが解決できないのか。それは、歴史的事実を理解するだけでも、歴史史料を探すだけでも、不十分なのであろう。相手を批判するだけではなく、過去を理解すると同時に、現在を理解することで、複雑に絡み合った歴史認識問題に適切に対応できる前提条件が得られるのではないか・・
詳しくは、原文をお読みください。

朝日新聞世論調査、再軍備賛成が7割。1951年

新聞を読んでいて、時々「おやっ」と思うときがあります。知らないことが書かれている場合や、「この新聞もこのようなことを書くのだ」といった場合です。
朝日新聞は、夕刊で「新聞と9条」という企画を連載しています。6月9日に次のような記述があります。
・・・1951年9月16日、毎日新聞が次の世論調査結果を発表した。
日米安保条約について、賛成79.9%、反対6.8%
日本の再軍備について、速やかに再軍備した方がよい24.9%、経済が立ち直ってから51.4%、再軍備すべきでない12.1%
20日、朝日新聞も調査結果を発表した。
自衛軍をつくるという意見に、賛成71%、反対16%。
10人に7人が再軍備を支持した・・・
私は、この世論調査結果は知りませんでした。