岡本全勝 のすべての投稿

今日は西へ東へ

「しそうし」って、ご存じですか。宍粟市は、兵庫県西部、姫路市の北、姫路駅から車で1時間くらいのところにある、山間部の街です。今日は、6時50分東京駅発の新幹線で姫路まで行き、車で宍粟市まで行きました。旧知の岡田初雄・元市議会議長の叙勲祝賀会でした。岡田さんとは、10年ほどのお付き合いで、9年前には、呼ばれて講演にも行きました(2006年3月4日)。岡田さんは、青年団活動以来、地域の活性化のために活動してこられました。その熱意に、私も共鳴したのです。
出席者の多くの方が「何で兵庫県の市議会議長の祝賀会に、復興次官が出てきて挨拶するの?」と、不思議がっておられました。珍しい男が遠くから出席したので、喜んでいただけました。
祝賀会を中座して、大阪まで車で移動。伊丹空港15時発の飛行機で、16時には福島空港へ。そこから車で移動して、福島県庁へ。18時からの「12市町村の将来像検討会」へ出席。提言がほぼまとまりました(NHKニュース)。23時半に、東京駅着。
伊丹から福島への飛行機が、ちょうどよい時間にあったので、この強行日程を組むことができました。この時期の出張には、ウエットティッシュが役に立ちます。職場には大きな箱でおいてあるのですが、出張にはポケットサイズを鞄に入れていきます。
明日は、岩手県遠野市です。カッパに会えるかな?

被災地への帰還、コミュニティ再建

被災地では移転先の街で、コミュニティをつくる必要があります。街並みが復旧しただけでは、「まち」はできません。原発事故で避難を余儀なくされた地域でも、帰還する場合には、コミュニティを再建する必要があります。7月24日の河北新報が、その試みを伝えています。「南相馬再生へ自治模索 帰還前に住民が独自策」。
生活道路の草刈り、墓地の管理など、これまで住民が一緒になって行ってきた「地域の管理」です。共同作業が、住民の団結を生みます。

現代のフランス、3

ドイツとフランスは、両国首脳が相手国の国内政治に直接介入することがあります。
2012年2月に、メルケル首相が、フランスのテレビに出演して、サルコジ大統領の再選支持を呼びかけました。現職大統領でありながら、サルコジ氏が劣勢で、有力対立候補のオランド(現大統領)が、EU各国で合意された協定の見直しを主張していたからだそうです。
遡ると、1992年9月にフランスで、マーストリヒト条約を批准するための国民投票が実施される直前に、コール・ドイツ首相がフランスのテレビに出演しました。2002年末、シラク・フランス大統領とシュレーダー・ドイツ首相が一緒にテレビ出演して、イラク戦争反対の意志を確認しました。2009年5月には、サルコジ大統領がドイツを訪問し、欧州議会選挙でドイツのCDU(キリスト教民主同盟)の候補者リストを支持しました。p194。
ここまで交流、融合がすすでいるのかと、驚きます。これまでの常識なら、「内政干渉だ」と批判されることでしょう。日中韓に置き換えてみると、首相や大統領、国家主席が相手国の選挙の際に、出かけていって特定候補を応援するのですから。

現代のフランス、2

渡邊啓貴著『現代フランス』の続きです。
経済成長によって、かつての保守対革新=資本主義対社会主義という、社会的・政治的対立構図が成り立たなくなりました。では、社会の亀裂と対立は、どのような構図になるのか。そしてそれは代表制民主主義において、どのように現れるのか。決して対立がなくなるのではなく、政党は新たな争点を立てて争います。一種、商品を売る会社の競争に似ています。
フランスにおいては、保守系も革新系も、様々な政党が合従連衡を繰り返し、盛衰を重ねます。地方選挙、国政選挙、そしてEU選挙と、そのたびごとにめまぐるしいほどに勝ち負けが変わります。すると、大統領が革新系で、国会及び首相が保守系というねじれ(コアビタシオン)、あるいはその逆も経験します。政権維持のために、しきりに内閣改造をします。大統領制のフランスと議院内閣制の日本という違いはありますが、日本だけがしきりに内閣を替えるのではないようです。
そして、しばしば街頭デモに、多くの大衆が参加します。そして内閣が掲げる政策を頓挫させます。市民による革命で政権を倒した経験は、国民にすり込まれているのでしょうか。このあたりは、フランス社会と日本社会の違いを感じさせます。
このように国民においても、政治家においても、政策を巡る競争は激しいのですが、昨日書いたように、国内の社会経済状況と国際的環境に規定され、保守と革新がそれぞれに独自性を発揮しようとしても、大きな流れは変わらないようです。その制約の中で、どれだけ独自性を発揮できるか、景気を上昇させることができるか、フランスの栄光を取り戻すことができるか、またよりよく統治できることを国民に訴えることができるか。そこに、政治家の力量が試されます。

現代のフランス

渡邊啓貴著『現代フランス 栄光の時代の終焉、欧州への活路』(2015年、岩波現代全書)が、勉強になりました。日本を代表するフランス研究者による、ミッテラン大統領以来30年の、フランス政治、社会の分析です。一つの国の30年を270ページに盛り込むのは、大変な労力と技が必要です。先生が、ずっとフランスと併走してこられ、その都度に論文を書いてこられたからこそできることです。
日本で同様に、この30年間を300ページの本に凝縮しようとしたら、どうなるでしょうか。誰ができるのでしょうか。細部にわたる事実と理解、そして大胆な割り切りがないと書けません。そして論文の善し悪しは、その切り口が切れ味がよいかどうかで決まります。年表の記述をいくら詳しくしても、よい論文・分析にはなりません。
先生の分析では、フランスのこの30年は、副題にあるように、栄光の時代の終わりであり、EUへの統合です。しかし、単線的に進んだのではありません。国内の社会経済状況に規定され、国際的環境がフランスをそこに追いやります。他方で、リーダーも意図しつつあるいは抵抗しつつ、その流れに乗っていきます。乗らざるを得ないのです。この項、続く。