岡本全勝 のすべての投稿

子どもの放射線被ばくの影響、科学界の結論

9月21日の毎日新聞に、坂村健・東洋大学学部長が、日本学術会議の報告書「子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題」について書いておられます。「被ばく影響 科学界の結論」。本文を読んでいただくとして、ここでは一部を紹介します。

・・・報告書が対象としている東京電力福島第1原発事故については、既に多くの論文や調査結果などが蓄積されている。国連科学委員会の報告でも、放射能由来の公衆の健康リスクについて「今後もがんが自然発生率と識別可能なレベルで増加することは考えられない」と結論が出ている。
学術会議の報告でも、被ばく量はチェルノブイリ原発事故よりはるかに小さいという評価が改めて示されているが、特に不安の多い子どもへの影響に焦点を絞っている点が重要だ。「福島第1原発事故による胎児への影響はない」としており「上記のような実証的結果を得て、科学的には決着がついたと認識されている」とまで書いている。
報告書を読むと、不安論者のよりどころとなる内部被ばくから、福島での甲状腺がん検査の評価まで、考えられそうなポイントはすべて丁寧に押さえている・・・

・・・その意味で、この報告書はいわば、事故後6年たっての科学界からの「結論」。これを覆すつもりなら、同量のデータと検討の努力を積み重ねた反論が必要だ。一部の専門家といわれる人に、いまだに「フクシマ」などという差別的な表記とともに、単に感覚にすぎない「理論」で不安をあおる人がいるが、そういう説はもはや単なる「デマ」として切って捨てるべき段階に来ている。
マスコミにも課題がある。不安をあおる言説を、両論併記の片方に置くような論評がいまだにあるが、データの足りなかった初期段階ならいざ知らず、今それをするのは、健康問題を語るときに「呪術」と「医術」を両論併記するようなもの、と思ったほうがいい・・・

愛知県みよし市管理職研修

今日は、愛知県みよし市役所に呼ばれて、講演に行ってきました。市の管理職研修です。「明るい公務員講座+働き方改革について話せ」とのことだったので、焦点が絞りやすかったです。
働き方改革は、いま連載で書いているところですが、管理職の意識改革なしには進みません。そして、彼らは従来の仕事の仕方で育ってきています。どこがおかしいか、気がついていないのです。あるいは、気がついていても、これまで通りが楽なので、なかなか変えることができません。その代表が、会議でしょう。無駄と分かっていながら、続けていませんか。
今日は、人事課長さんの依頼に沿って、管理職になるには脱皮が必要なこと(鬼軍曹は良い課長になれないこと)や、仕事を進める際の部下指導の仕方などを中心にお話ししてきました。もちろん、私の経験談をたくさん交えてです。忙しい総理大臣が出席する会議を、どのように管理するかなども。

みよし市は、東日本大震災の被災自治体に、職員を派遣し続けてくださっています。そのお礼も申し上げました。

 

よい季節になりました。

9月も下旬になりました。30度を越えていた気温も下がり、朝晩は20度前後と寒くなりました。「暑さ寒さも彼岸まで」とは、よく言ったものです。仕事も勉強も、はかどる季節ですね。
私は先週は(月曜日は休日)、火曜日は福島勤務、水曜日は大阪で講演。木曜・金曜に霞が関に出勤すると、報告や面会が続き、国会議員からのお呼びも。金曜から、大学での授業も始まりました。いささか疲れました。時間が経つのが早くて困ります。いつも同じことを言っています(苦笑)。

その間に、9月末締めきりの原稿を、ほぼ完成させました。後輩がほとんど書いてくれて、私は導入部だけなのですが。
連載はもうしばらくで、中級編を完結させる予定です。しかし、なかなか時間がとれません。土曜・日曜と、孫のお相手と、原稿書きにいそしんでいます。なんとか、第39号分を書き上げました。これから、右筆に手を入れてもらいます。
肝冷斎は、せっせとプロ野球観戦に出かけているようです。

メルケル首相、大きなビジョンでなく危機管理

朝日新聞オピニオン欄9月20日の「ドイツ安定の理由」、ラルフ・ボルマンさん(ドイツのジャーナリスト)の発言から。
・・・20世紀前半に大きなカオスを経験したドイツ人にとって、「安定」こそが何よりも重要な価値観です。歴代の首相をみても、戦後初代のアデナウアーが14年、東西ドイツの統一を成し遂げたコールが16年。メルケル首相もすでに就任以来12年になります。
中でもメルケルは「安定」を擬人化したような人物です。金融危機のような混乱にあってもいつも冷静で、国民を安心させる。欧米諸国や旧西独出身の政治家たちは「世界の経済システムが崩壊する」とパニックになりましたが、メルケルは「世界の終わりではない」と言わんばかり。あわてて財政拡大に解決策を見いださず、長期的に何が良いのか、答えが出るまでじっくりと待ちました・・・

・・・彼女は、理想主義者なのか現実主義者なのか、という問いを受けますが、彼女にとってそれは同じことなのです。答えは彼女が愛読する英国の哲学者カール・ポパーの考え方にあります。自由と民主主義をとても大切に考えていますが、その社会では、すべての価値観は相対化されうる。すべての理念は、トライ&エラーのシステムによって検証され続けなければならないという考え方です。脱原発や同性婚の合法化をめぐる態度の変化も、彼女なりの検証の結果なのでしょう。
確かに彼女には、コールに見られたような壮大な「ビジョン」はありませんが、今の時代にビジョンは必要なのでしょうか? むしろ、危機をマネジメントすることによって存在感を増していったという意味で、1970年代の首相シュミットに似ているのかもしれません。
近年、世界をポピュリズムが席巻し、民主主義の危機が叫ばれています。世界が破滅的な状況になるのを防ぐ危機管理能力こそが求められている気がします・・・

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第1回目

今日から、慶應大学秋学期の授業が始まりました。秋学期は、地方自治論Ⅱです。
今日も朝9時から、学生たちが熱心に聞いてくれました。資料を70部持ち込んだら、数枚余りました。
今日はまずは、今学期の講義計画と進め方を話しました。
「自治体の経営」といった際に、二つのものがあります。市役所の経営と、地域の経営です。
民間会社だと組織の効率化が利益を生みます。しかし、自治体の場合は、市役所組織を効率化するだけが、経営ではありません。地域の暮らしがよくなければ、よい市長とは言えません。市役所のコストカットだけでは、ダメなのです。企業なら、不採算部門を切り捨て、選択と集中ができますが、自治体では教育や福祉サービスをやめることはできません。「行政改革」だけでは、よい市長ではありません。

で、早速本論に入り、地方自治体の住民サービスを具体的に説明しました。抽象論より、身近な実例の方が分かりますよね。
また、相模原市役所からいただいた住民サービス冊子「ナイスガイドさがみはら」を配って、説明を始めました。これも、学生たちには好評でした。大量に提供いただいた市役所に感謝します。
ふだん受けている行政サービスは、空気のようなもので、意識しませんよね。しかし、私たちは、保育、教育、清掃、介護、道路など、朝から晩まで、生まれてから死ぬまで、かなりの部分を市町村役場の世話になっています。
この冊子は今日の授業では終わらずに、来週も使います。