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内閣支持の理由

報道機関が、毎月、内閣支持率などの世論調査をします。例えばNHK。その際に継続的に調べられるのが、内閣支持率と各党の支持率です。

支持率の上下は気になるのですが、それとともに気になるのが、支持する理由と支持しない理由です。
NHKの3月の調査結果では、岸田内閣を「支持する」と答えた人は25%、「支持しない」と答えた人は57%です。そして支持する理由は、「他の内閣より良さそうだから」が47%、「支持する政党の内閣だから」が25%、「人柄が信頼できるから」が13%です。「実行力があるから」は6%、「政策に期待が持てるから」は5%しかありません。

政党や内閣は、政策を競い国民の支持を獲得するものと、政治学では習いましたが。この数字は、政策が置き去りになっているようです。

「優秀だけど、短期集中突破で持続性がない」

2月29日の朝日新聞「けいざい+」「TSMC誘致の真相:下 前例のない補助額、財務省が条件」は、一企業に多額の補助金を出す事案の解説ですが、記事に次のような話が出てきます。

・・・財務省主計局は、近年の経産省の手法を苦々しく思っていた。「彼らは国土交通省や農林水産省と違って、私たちとまじめに予算の議論をしないんです。官邸など上にあげて、『もう決まったから予算を出せ』とおろしてくる。まるでATMの扱いですよ」。財務省を疎んじ経産省を重用した第2次安倍政権以降、そうした傾向が強まった。

経産相を務めた萩生田光一は「着任当初は素人だったが、のめりこむように半導体を勉強した」と振り返る。TSMCの予算確保に財務省ににらみをきかせる半面、経産省の体質にも問題があると気づいた。この30年余、経産省の半導体政策は前のめりになったかと思えば後ずさりし、振幅が著しい。萩生田は国会で「世界の潮流を見極めきれず、適切な政策を講じられなかった」と同省の失敗をわびた。
「経産官僚は優秀だけど、短期集中突破で持続性がないんです」。まるで高校の文化祭の実行委員のようだと感じた。「短時間でワーッとやるけど文化祭が終わったら、あとは関係ナシなんです」。経産官僚は「弾を込める」「仕掛ける」という言葉をよく使う。前任者の仕事を引き継ぐよりも、新しい政策を打ち出したがる。

萩生田は「異動後も自分が手がけた仕事がどうなったか定年までウォッチしてほしい」と苦言を呈する。TSMC誘致は珍しく4代の局長、3代の課長がバトンを受け継ぎ、彼らの言葉を使うと「仕留めた」案件だった・・・

私が若いとき、ある人が、通産省(当時)の官僚たちの仕事ぶりを「は虫類行政」と呼んでいました。「卵(新規施策)を産むが、育てない」という意味です。
新しい施策を考える気風は、評価されるべきです。しかし、1~2年で異動することが多いと、その施策を実施するのは後任者になります。そして、新規施策を考えることが評価の基準になると、前任者の施策を実施するより、自分で新しい施策を考えることになります。

稲継裕昭先生「地方自治体の担い手不足の現状と打開策」

稲継裕昭・早稲田大学政治経済学術院教授が、2月26日に日本記者クラブで「地方自治体の担い手不足の現状と打開策」を話されました。ユーチューブで見ることができます。関係者は必見です。

公務員志望者の減少、若手退職者の増加、心の病の職員の増加・・・。自治体現場の変化を、数値と経験とで説明してくださいます。

この20年間の変化が急速なようです。若者が自治体を選ばなくなっています。若者の意識の変化と労働市場の拡大が、変化をもたらしています。国家公務員法と地方公務員法の縛り、給与体系、年功序列の昇進慣行が、時代に合わなくなっています。

私は、労働慣行が日本の「この国のかたち」をつくっている、労働慣行に「この国のかたち」が集約されていると説明しています。日本社会の変化が、ここに押し寄せています。

公共工事、着工後の増額

2月21日の日経新聞が「公共工事の費用対効果、5割で悪化 着工後も増額頻発」を解説していました。
・・・国の公共工事の費用対効果が、着工後に悪化する事例が相次いでいる。道路やダムなど約1200事業(2010〜23年度)の5割で費用対効果指数が低下し、46事業(4%)で費用が効果を上回っていたことが分かった。費用を過少に設定したり、需要を過大に評価したりしていたケースがある。見積もりの精度を高めなければ、政策判断を誤る恐れがある・・・

「公共工事調べろ」端緒は官僚の一言 調査報道の舞台裏」(2月23日)には、この調査報道の過程が明かされています。
・・・公共工事ではまず発注者の国が工事費を見積もり「予定価格」を決める。その額を上限として競争入札を実施し、参加業者の「入札価格」などを考慮して、受注業者を決めるのがルールだ。
工事は受注業者の「落札価格」の範囲内で進む。だが近年、着工後に多額の増額が発生する公共工事が頻発していると官僚は明かした。

まず取り組んだのが全体像の把握だ。道路やダム、トンネル、河川――。国が発注する大型工事の計画当初と直近の事業費を比較できる資料があれば、増額の実態が分かるはずだ。
国土交通省の道路、水管理・国土保全、港湾の各局を訪ね、ホームページ(HP)で公表されていない資料の提供を求めた。粘り強く交渉した結果、提供されたデータの分析で判明したのは、物価高を上回る増額の多さだった・・・
・・・各地の地整局から届く開示文書を調べるうち、思わぬ発見があった。東日本大震災の復興工事で、競争入札や随意契約(随契)を経ず、既存の別工事に費用を上乗せする形で施工した工事が岩手県と福島県で計5件見つかった。
会計法は政府調達の競争性を確保するため、受注を希望する業者が広く参加できる競争入札を原則としている。なぜこのような契約が認められるのか。
発注者の東北地整局は取材に対し、復興支援道路の開通時期に間に合わせるため、やむを得ない措置だったと釈明した。だが、複数の専門家が「会計法令に抵触する可能性がある」と問題視した。緊急性のある場合など特定の業者と随契を結ぶ場合もあるが、別工事の受注業者に直接工事を依頼し、費用を別工事に上乗せする手法は異例だ・・・

・・・増額の頻発は公共工事の「費用対効果」も悪化させている。国の公共工事は、経済・安全効果を総費用で割った費用対効果指数が「1」をどれくらい上回るかが採択の判断材料となる。指数が高いほど価値のある事業とみなされる。
国交省の公表データをもとに、検証可能な約1200事業を調べると、5割の事業で指数が低下し、「1」を下回る事業も46件あった。指数が悪化した工事には、費用を過少に見積もったり、効果を過大に評価したりしていたものもある。本来、事業の要否を判断するための指標が「機能不全」に陥っていた・・・

市町村アカデミー研修動画出演

先日、市町村アカデミーの研修動画を録画しましたが、話している私の横に説明画像(図や絵)を入れた動画ができあがりました。「令和時代に求められる自治体職員像」という主題で、3つ(前編、中編、後編)に分けて話しました。それぞれ20分程度です。職員から「確認せよ」との指示が来たので、見ました。

改善点がたくさんありました。
・前編は緊張していて、数字を間違えたり、主語と述語が合っていないおかしな日本語がしばしば出てきます。反省。
・説明画像を使うために、パソコンを操作するのですが、その位置が低くて、そのたびに目線が外れます。カメラの横に映し出せば(NHKならプロンプターがあるのでしょう)、もう少しうまくいったのでしょうが。
・当日は職員に座ってもらって、彼らに話しかけるようにしたのですが、目線がカメラから外れ、視聴者を見ていないことになります。
NHKニュース番組の和久田さんのようには、いきませんねえ。

動画は、私のほかにあと2本載せます。4月1日から、全国の市町村から見ることができるようになります。必要となるパスワードは、別途、全市町村あてに送ります。