日本の暗黙の秩序、成長を阻害

3月6日の朝日新聞オピニオン欄「考・わきまえる」、宋文洲さんの発言「暗黙の秩序、成長の足かせ」から。
・・・「わきまえる」という日本語の定義を、私たち外国人に説明するのは難しい。「それぞれの立場(プレース)に従って」という訳し方では真意が伝わりません。「秩序(オーダー)に従って」が正確だと思います。「階級」とも言える。つまり、会社内の役職のように男女にも上下の階級があるとの前提で、「おまえの階級に合わせて物を言え」というのが、今回のわきまえる問題の本質なのでしょう。
この秩序や階級は、性別の問題に限らず明確に日本の社会に存在しているのに、外からは隠れていて見えません。なぜそのような暗黙の秩序があるのか。それは日本では、自ら社会の上下をひっくり返すような「革命」を経験したことがないためです・・・

・・・日本の戦後の高度成長は、GHQによって旧体制が一掃されたためにもたらされました。ソニー創業者の盛田昭夫氏やパナソニックの松下幸之助氏も旧体制では下っ端に過ぎなかった。でも、従来の秩序がひっくり返ったから、クリエーティブな人材が輩出し、経済も活性化したのです。しかし、秩序の根っこを自らの手で切らなかったため、効果は30年しか持たず、新たなわきまえが形成された。だからその後、経済は低成長に陥っているのです。
そのような今の日本でビジネスを成功させたいのならば、上手にわきまえたふりをすることが必要です。ベンチャーで成功したソフトバンク創業者の孫正義氏や楽天の三木谷浩史氏もそうでしょう。見た目からわきまえていない人は、周囲の支持を得られないから結果も出せません。
今こそ暗黙の秩序を壊す志の高い人が求められています。若い人は表面ではふりをしても、心では決してわきまえないで。力をつけて成功し、わきまえる必要を一切なくしてほしい。日本はもう変わらないとあきらめていましたが、今の若い人の間に、変革のマグマがたまってきている兆しも感じています・・・