連載「公共を創る」第73回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第73回「社会の課題の変化―新たに生まれてくるリスクと不安」が、発行されました。

前回に続き、近年の社会におけるリスクの特徴を説明しました。被害の形態からリスクを分類すると、
・武力攻撃や自然災害、事故は「身体や財産への被害」
・ライフラインの途絶などは「経済社会活動への被害」
・格差や人間関係の問題は「人間らしい生き方への被害」に、分けることができます。

コンピュータに例えると、身体や財産への被害は、機械の故障です。机の上のパソコンが、金かなづち槌で叩たたかれて壊れた状態です。
経済社会システムの混乱は、ネットワークの故障です。インターネット網が故障して、多くのパソコンがつながらなくなった状態です。
格差の問題は、パソコンとインターネットの接続において送受信の能力が低く、他の人と同じような仕事ができない状態です。社会生活の問題は、パソコンにもネットワークにも支障がないのですが、それでも他者とのつながりがうまくつくれない状態です。本人の能力なのか変換のプログラムがおかしいのか、書いたり受信したりしたものの内容が不十分で、相手に意味が通じない文章になっています。他人との通信がうまくできないのです。

新しい不安は、次のような要因で生まれます。
・技術と経済の発展によるもの。サリン、フロン、原発事故
・これまでもあったリスクが再認識されたもの。武力攻撃や自然災害
・成熟社会が生むもの。豊かな暮らしが失われる、生きにくい社会、格差と孤立