連載「公共を創る」第71回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第71回「社会の課題の変化―暮らしやすい社会を作るために」が、発行されました。今回から、第4章「政府の役割再考」に入ります。

第1章「大震災の復興で考えたこと」では、町を復旧する過程で見えた、私たちの暮らしを支えている要素を説明しました。公共施設や公共サービスを復旧しただけでは、暮らしは成り立ちませんでした。
第2章「暮らしを支える社会の要素」では、暮らしを支えている要素を広く検討し、社会は公私二元論より官共業三元論で考える方が適切であること、施設や設備といったインフラだけでなく、社会関係資本や文化資本など、人のつながりや気風といった要素が重要であることを指摘しました。
第3章「転換期にある社会」では、日本は昭和後期に驚異的な経済成長を遂げたのに対し平成時代は停滞したこと、豊かで自由な社会を達成したけれど新たな不安が生まれていることを説明しました。豊かさと自由は、個人には、自己責任や孤立化といった問題を連れて来ました。社会では、格差拡大や社会参加の低下といった問題が生まれました。満足したことが停滞を生んでいることと、成熟社会に適合した生き方を模索していることを指摘しました。

第4章ではこれまでの議論を踏まえて、成熟社会で生まれている課題を、どのように解決するのかを議論します。暮らしやすい社会をつくるためには、何が必要か。この連載の結論部分です。
今回はまず、社会のリスクの変化を説明します。
かつて、月刊「地方財務」に「社会のリスクの変化と行政の役割」を連載しました(2010年10月号から2021年4月号)。それを基に、再度考えました。