シンポジウム「東日本大震災から10年」、3

1月31日の朝日新聞に、先日行った「21世紀文明シンポジウム 東日本大震災から10年~復興の教訓と未来への展望」での講演の概要が載りました。
私の話を、要点を押さえて、簡潔にまとめてくださっています。まだいくつかお話ししたことがあるのですが、それらを載せることは紙面の関係で無理ですわね。教訓の補足については、「復興事業の教訓」全4回をお読みください。

・・・「生活の再建」へ、政策哲学の大転換 基調講演・岡本氏
まもなく大震災から10年がたつ。津波被災地では復旧・復興工事がほぼ完成して、先が見えてきた。
高台移転、かさ上げ、集団移転でまちを造り、災害公営住宅3万戸と宅地1万8千戸の造成を終えた。鉄道はBRT(バス高速輸送システム)を含め、全て復旧。復興道路を造る工事も進む。産業・なりわいの再生も発災5年で7~8割戻り、その後ほぼ復旧した。

復興庁は前身の被災者生活支援特別対策本部からスタートした。復興ではなく、被災者の生活支援が最初の私どもの使命。避難所にマットや畳を敷いたり、段ボールの仕切りを置いたりすることから始めたが、今や標準装備になった。野菜を含めた温かい食事を提供するのもこの時からだ。

インフラと公共施設、住宅が復旧したら復興すると思っていたが、そうではないことも徐々に見えてきた。企業やNPOから人やノウハウの支援を受け、仮設住宅での孤立を防ぐ見守りやコミュニティー再建、産業の再生などを進めた。
まちににぎわいを取り戻すためには、商店や働く場も必要だ。仮設の商店や工場の無料提供、施設・設備への公費投入という大転換に踏み切り、「国土の復旧」から「生活の再建」へと、復旧政策の哲学を変更できた。

防潮堤やまちづくりの計画では、地元負担がゼロで100%国費だったから見直しが少ない、という面もあったかもしれない。今後は計画見直しをどうしていくかが一つの課題だ・・・