そこに至るまで、どれだけ努力したか

1月22日の読売新聞夕刊「言葉のアルバム」、細谷雄一・慶應大学教授の「相手国 歴史含めて理解」から。

・・・気鋭の国際政治学者は、恩師である北岡伸一・国際協力機構(JICA)理事長のこの言葉を大切にしている。
「その時にどのような位置にあるかではなく、その時にどれだけの努力をするかによって評価することが大事」
北岡氏との出会いは1990年、立教大1年生の時に受講したゼミだ・・・
・・・ある日のゼミで、「米国が理想主義を掲げながら、国内に人種差別の問題を抱えるのは偽善的ではないか」と議論になった。北岡氏は、米国の偽善を批判する前に、「米国という国家が人種問題を乗りこえるために、どれだけの努力を払ってきたかにも目を向けるべきだ」と説いた。そして「それは人間を評価する時も同じだ」と付け加えた・・・

・・・恩師の言葉は国際政治の分析にもあてはまる。歴史を含めて相手国を理解する努力が外交の基本であり、国際関係を維持する重要な要素だ。戦争はその不足から生まれる。世界は今、そのことを忘れかけているのではないかと危惧している・・・問題が起きると、どうしても相手国の欠点や問題点を探してしまう。でも、どうしてその国がそういう行動をとるのか、偏見を持たず、もう少し粘り強く理解する。混迷する世界をそうした眼で見つめていきたいと考えている・・・